外付けGPUを足すとミニPCは強くなるのか〜16GBを超えた瞬間に立場が入れ替わった

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2026年8月17日

前回、Thunderboltで繋いだ Radeon RX 9060 XT の速度を測りました。予想に反して、内蔵GPUより1.3〜1.8倍速いという結果でした。

ただ、あの測定には抜けがありました。使ったモデルが全部、GPUのメモリに収まる大きさだったのです。いちばん大きいものでも8.6GBで、9060 XT のメモリは16GB。まだ半分しか使っていません。

収まりきらない大きさになったら、どうなるのでしょうか。

この機体は統合メモリを128GB積んでいて、内蔵GPUは120GBまで使えます。大きいモデルなら内蔵のほうが有利なはずですが、そのぶん遅い。速いが狭い外付けと、遅いが広い内蔵。どちらが勝つのかを確かめました。

この記事は手元で実際に測った記録です。測定は2026年8月17日に行いました。

前回の記事はこちらです。

測定環境

16GBをまたぐように、6つの大きさのモデルを並べました。

モデル大きさ9060 XT(16GB)では
qwen3:14b8.6GB収まる
qwen3.6:27b16.2GBぎりぎり超える
qwen3-coder:30b17.2GB超える
gemma4:31b18.5GB超える
qwen3.6:35b-a3b22.2GB超える
llama3.3:70b39.6GB大幅に超える

小さい順に回します。途中で動かなくなっても、どこまで通ったかが残るようにするためです。

測定結果

16GBを超えたとき、外付けはどうなったか

モデル大きさ9060 XT
(Thunderbolt)
5060 Ti
(OCuLink)
内蔵GPU
qwen3:14b8.6GB9811,698748
qwen3-coder:30b17.2GB動かず動かず1,226
llama3.3:70b39.6GB動かず動かず116

16GBを超えた時点で、外付けGPUは2枚とも動きませんでした。

この結果は予想と違いました。私は「収まらない分をパソコン側のメモリに置いて、遅くなりながらも動く」と思っていたのです。実際、以前 Intel Arc B580 で画像生成を試したときは、12GBのカードで2048×2048の画像が通りました。足りない分を逃がしながら、1.3倍の時間で処理できています。

今回は遅くなるのではなく、起動しません。

画像生成と、文章生成の違い
画像生成では、モデルの一部を出し入れしながら処理できました。1枚の絵を何十回も計算し直すので、途中で入れ替える余裕があるのだと思われます。

文章生成は違います。1語ごとにモデル全体を通る必要があるので、入れ替えながらでは追いつきません。だから最初から「載らない」で止まるのだと考えました。

この説明は、あとで半分だけ外れます。

つなぎ方を変えたら、17.3GBが動きました

前回の記事で書いたとおり、このあと9060 XT をThunderboltからOCuLinkへ移しました。接続が変わったので、同じ測定をやり直しています。

そうしたら、16GBを超える17.3GBのモデルが動きました。

qwen3-coder:30b(17.3GB)読ませる速さ書く速さ
9060 XT(Thunderboltのとき)動かず動かず
9060 XT(OCuLinkに変更後)13430.2
内蔵GPU1,20792.7

動きはしました。ただ、読ませる速さは内蔵GPUの9分の1です。16GBに収まっていたときは内蔵の1.3〜1.7倍だったのが、はみ出した瞬間にこうなります。

先ほどの「文章生成では入れ替えが追いつかない」という見立ては、半分あたりで半分外れでした。追いつかないほど遅くなるのは合っていて、だから起動しない、の部分が違いました。実際には起動して、そのぶん遅く動きます。Thunderboltのときに起動しなかったのは、容量の問題とは別の話だったようです。

いちばん大きい39.6GBのモデルは、OCuLinkにしても9060 XT では動きませんでした。16GBのカードに39.6GBは、さすがに逃がしきれないということだと思います。

同じOCuLinkでも、5060 Ti は動きませんでした
ここが面白いところで、5060 Ti は最初から最後までOCuLinkのままです。この設定を変えても、17.3GBのモデルでは起動しませんでした。

つまり「OCuLinkにすれば16GBを超えられる」という単純な話ではないということです。

エラーの中身を見ると、はっきりしていました。

ggml_vulkan: Device memory allocation of size 920438784 failed.
ggml_vulkan: vk::Device::allocateMemory: ErrorOutOfDeviceMemory

GPUのメモリが足りない、とそのまま書いてあります。9060 XT(AMD)は足りない分をパソコン側のメモリへ逃がせて、5060 Ti(NVIDIA)は逃がせない。カードを動かす仕組みの側の違いに見えますが、2枚を比べただけなので断定はしません。

ちなみに、ここでも一度回り道をしています。動かない5060 Ti だけ省電力の設定が違っていたことに気づき、これが原因ではないかと考えました。前回、動かない側だけ条件が違うのを見落として失敗しているので、今度は先に潰しておこうと思ったのです。

設定を揃えて測り直したところ、結果は変わりませんでした。同じエラーで止まります。省電力は関係ありませんでした。思いついた原因が外れることのほうが多いのだと思います。

内蔵GPUだけが、39.6GBのモデルを動かしました

いちばん大きい llama3.3:70b(39.6GB)を動かせたのは、内蔵GPUだけでした。

読ませる速さ書く速さ
llama3.3:70b(39.6GB)1165.3
qwen3-coder:30b(17.2GB)1,22691.7

70Bのほうは書く速さが5.3。1秒に5文字ほどなので、待っていると遅く感じます。ただ動くこと自体に意味があります。16GBのカードでは、どれだけ待っても答えが返ってきません。

17.2GBのほうは91.7と十分な速さです。外付けの9060 XT は同じモデルを30.2で動かしました。16GBをわずかに超えるだけで、1.3〜1.7倍だった優位が3分の1へ落ちる——この差がいちばん実用で響くところだと思いました。

境目は「動く・動かない」ほどきれいではなく、越えた瞬間に立場が入れ替わるという形でした。

3つのモデルは、容量とは別の理由で動きませんでした

ここで、そのまま結論に飛ばずに済んだ話をひとつ。

6つのうち3つ(qwen3.6:27b・gemma4:31b・qwen3.6:35b-a3b)は、内蔵GPUでも動きませんでした。120GB使えるのに落ちています。

最初は「16GBを超えると全滅」と読みかけましたが、内蔵まで落ちているのは筋が通りません。実際に1本だけ手で動かして、エラーを確かめました。

llama_bench: error: failed to load model

メモリ不足ではなく、使っているソフトがそのモデルの形式に対応していないというエラーでした。3つとも比較的新しい設計のモデルで、容量とは関係ありません。

結論を分けて書きます
qwen3.6:27b / gemma4:31b / 35b-a3bソフトが形式に非対応。容量とは無関係
qwen3-coder:30b外付けのみ失敗・内蔵は成功=本物の容量の壁
llama3.3:70b同上
容量の壁を示す証拠はこの2本です。3本は別の理由なので、混ぜて数えると結論を誤ります。

失敗の理由を確かめずに数えていたら、「6つ中5つで外付けが全滅」という誤った結論を書くところでした。

結局、外付けGPUを足すと得なのか

3回にわたって測ってきた結果を、ひとつの表にまとめます。

モデルの大きさ速いのは
1.2GB外付け内蔵の1.47倍(Thunderboltのときだけ25分の1・前回の記事)
2.3〜8.6GB外付け内蔵の1.6〜1.7倍
17.3GB内蔵GPU外付けは動くが内蔵の9分の1
39.6GB内蔵GPUだけ外付けは動かない

役割が分かれる、というのが答えでした。

外付けGPUを足せば全体が強くなる、という単純な話ではありません。16GBに収まる範囲では確かに速くなりますが、そこを超えると立場が入れ替わります。そして大きいモデルを動かせるという点こそ、統合メモリを積んだ機体のいちばんの取り柄です。

言い換えると、外付けGPUは内蔵の弱点を埋めるのではなく、得意な範囲を伸ばすものでした。速度が欲しい中型のモデルで生きます。容量が要る大型のモデルは、統合メモリのほうに任せる形です。

数字にできなかったこと〜測定中に取れなかった点

この記事の大規模モデルの測定は、時間の都合で各条件1回ずつです。前回までの記事は3回の平均を使っており、条件が異なります。同じ qwen3:14b を両方の設定で測ったところ、書く速さが16.98と15.07で約1割ずれました。この記事の数字は、前回までの数字と直接は比べられません。

また、動かなかったモデルについて「なぜ動かないか」をすべて確かめたわけではありません。1本を手で動かしてエラーの種類を確認し、そこから同じ理由だろうと判断しています。

ただし、そのうち1本(22.8GBのモデル)は接続を変えたあとで測り直しました。結果は同じで、しかも120GB使える内蔵GPUでも読み込めません。容量が足りているのに落ちるので、容量でも接続でもなく、ソフト側が対応していないという見立てで合っていました。

OCuLinkに変えたあとの測定でも、16GBを超えるモデルは各1回ずつです。ばらつきは見ていません。

そして接続を変えたとき、変わったのは接続だけではありませんでした。OSとモデルの保存先も内蔵から外付けSSD(USB4・実測1.8GB/s)へ移し、再起動も挟んでいます。17.3GBが動くようになった原因を、接続の変更だけに帰することはできません。この記事では「移設の前後でこう変わった」という事実だけを書いています。

測定データの整形にあたっては、別途データの正規化にご協力いただきました。同じ条件を2度測っていた重複も、その過程で見つかったものです。

まとめ:足すと動く範囲は広がるが、速くはならない

  • Thunderboltで繋いでいたときは、16GBを超えた時点で外付けが2枚とも起動しませんでした
  • OCuLinkに変えたら17.3GBが動きました。ただし読ませる速さは内蔵の9分の1で、優位は消えます
  • 39.6GBのモデルを動かせたのは内蔵GPUだけでした(書く速さ5.3)。ここはOCuLinkでも変わりません
  • 同じOCuLinkでも5060 Ti は17.3GBで動きませんでした。接続だけで決まる話ではなさそうです
  • 境目は「動く・動かない」ではなく、越えた瞬間に立場が入れ替わる形でした
  • 6つのうち3つは容量ではなくソフトの非対応で落ちていました。混ぜて数えると結論を誤ります
  • 外付けGPUは、内蔵の弱点を埋めるものではありませんでした。得意な範囲を伸ばすものです

3回にわたって外付けGPUを追いかけてきました。動かないと書いた構成が動くようになり、速さを測ったら予想が外れ、容量の壁でまた別の顔が見えました。

統合メモリのミニPCに外付けGPUを足そうか迷っている方には、「何を動かしたいか」で決まるとお伝えしたいです。16GBに収まるモデルを速く回したいなら足す価値があります。大きいモデルを動かしたいなら、統合メモリのままのほうが確実です。

この記事で使った機材

AOOSTAR AG03(9060XTを載せたドック)

[kimono_product id="16563″]

AG03に載せたグラフィックボード(★実測に使ったもの)

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※測定環境:GMKtec EVO-X2(Ryzen AI Max+ 395/統合メモリ128GB)/Ubuntu 24.04/カーネル 7.0.0-29/内蔵 Radeon 8060S/llama.cpp(Vulkan・ビルド dbadb68)。

※この記事には、接続方式の違う2回の測定が入っています。
Thunderbolt接続での測定(2026年8月17日):RX 9060 XT を Thunderbolt、RTX 5060 Ti を OCuLink で接続。16GBを超えるモデルは各条件1回。
OCuLink接続での測定(2026年8月17日):RX 9060 XT を OCuLink(32.0 GT/s x16)へ変更後。各条件1回。このときOSとモデルの保存先も内蔵M.2から外付けSSD(USB4)へ移しており、変わったのは接続だけではありません

※表には、どちらで測ったかを必ず書いています。混ぜて比べないでください。