自分のパソコンで文章を読み上げさせるなら、VOICEVOXとQwen3-TTSのどちら?〜VRAM 8GBのRTX 3070で速さを測った

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自分のPCで、文章を声に出して読み上げさせたいと考えました。ローカルで動く読み上げ(音声合成。TTS=Text To Speech)の代表として、VOICEVOXと、Qwen3-TTSがあります。どちらも手元のPCで動かせます。ただ、VRAM(GPUが持つ専用メモリ)が8GBのGPUで、どのくらいの速さで読み上げられるのか、VRAMはどれだけ使うのかは、調べても分かりませんでした。この記事では、VRAM 8GBのRTX 3070で、VOICEVOXとQwen3-TTSの2種類(モデルの大きさ違いで計3通り)を動かし、速さとVRAMを測っています。

2026年10月28日時点の内容です。

何を測ったのか

同じ文章(青空文庫の「走れメロス」冒頭40文・856字)を、VOICEVOXとQwen3-TTSで音声にし、かかった時間を測りました。速さは、RTF(Real Time Factor)という値で表します。RTFは、音声にするのにかかった時間を、できた音声の長さで割った値です。小さいほど速く、1.0より小さければ、音声の長さよりも短い時間で作れた(実時間より速い)ことを表します。あわせて、Qwen3-TTSでは、測定中のVRAM使用量の最大値 [MiB] を記録しました。

音質(声の良し悪し・聞き取りやすさ)は、評価していません。

目的

次の3つを確かめます。1つ目は、VRAM 8GBのRTX 3070で、VOICEVOXとQwen3-TTSの読み上げが、何倍の速さ(RTF)で動くか。2つ目は、Qwen3-TTSが、VRAMをどれだけ使うか。3つ目は、Qwen3-TTSの大きいモデル(1.7B)と小さいモデル(0.6B)で、速さとVRAMがどう違うか。

方法

使ったもの

項目 内容
GPU NVIDIA GeForce RTX 3070(VRAM 8GB)。Qwen3-TTSでは、このGPU1枚だけが見える設定で測定
メインメモリ 7GB
VOICEVOX VOICEVOX ENGINE 0.26.0(CPU版)。声は「玄野武宏」。CPUで、8スレッド指定で実行(GPUは使わない)
Qwen3-TTS Qwen3-TTS-12Hz-1.7B-CustomVoice と Qwen3-TTS-12Hz-0.6B-CustomVoice。声は組み込みの「Ono_Anna」・言語は日本語
Qwen3-TTSの実行環境 Python 3.14.4・PyTorch(CUDA 13版)・qwen-tts 0.1.1・精度 bfloat16・注意機構は標準の sdpa。tritonは無効化

VOICEVOXは、文を1つずつエンジンに送る形で40回呼び出し、合計の時間を測りました。Qwen3-TTSは、モデルを読み込んだあとに、全文を生成する時間を測りました。モデルの読み込み時間は、RTFには含めていません。

測り方

項目 設定
文章 走れメロス冒頭40文・856字(青空文庫。著作権の保護期間が終わった作品)。全方式で同じ文章
回数 各6回。1回目は起動直後の状態で測るため別扱い(モデルの読み込み時間そのものはRTFに含めていません)。残り5回のうち、いちばん速い1回といちばん遅い1回を除いた3回の中央値(ばらつきの影響を減らすため)
RTF 合成時間 [s] ÷ 音声の長さ [s]。小さいほど速い
VRAM 1秒ごとに記録したnvidia-smiの使用量の最大値 [MiB]。何も動かしていない状態の79MiBを含む
VOICEVOXのVRAM CPUで動かすため、GPUは使わず、VRAM使用量は0として扱う

結果

方式 RTF 中央3点(小さいほど速い) 1回目のRTF VRAM最大 [MiB] 音声の長さ(6回の範囲) [s]
VOICEVOX 0.26.0(CPU・玄野武宏) 0.2918 0.2995 0(CPU実行) 126.5(6回とも同じ)
Qwen3-TTS 1.7B CustomVoice(Ono_Anna) 1.5445 1.6021 5,920 173.0〜211.1
Qwen3-TTS 0.6B CustomVoice(Ono_Anna) 1.525 1.549 3,276 202.4〜214.5

VOICEVOXは、126.5秒の音声を、約37秒で作りました(RTF 0.2918)。実時間より速く、1回目との差も小さい結果でした。

Qwen3-TTSは、1.7Bも0.6Bも、RTFが約1.5でした。実時間より遅い、という結果です。1.7Bでは、中央3点にあたる1回(6回目)が、音声173.0秒に対して合成267.1秒でした。0.6Bでは、同じく中央3点の1回(4回目)が、音声204.8秒に対して合成312.3秒でした。

Qwen3-TTSのVRAMは、次のとおりでした。nvidia-smiの値は、PyTorchが確保した量より、どちらも290MiB大きい値です。

モデル nvidia-smi 最大 [MiB] PyTorchが確保した量 最大 [MiB] 実際に使われた量 最大 [MiB] モデル読込時間 [s]
Qwen3-TTS 1.7B 5,920 5,630 4,702 15.4
Qwen3-TTS 0.6B 3,276 2,986 2,556 10.8

Qwen3-TTSは、同じ文章でも、生成のたびに音声の長さが変わりました(1.7Bで約173〜211秒、0.6Bで約202〜214秒)。VOICEVOXは、6回とも126.485秒で同じでした。

考察

速さは、VOICEVOX(CPU)のほうが、今回の測定では、Qwen3-TTS(RTX 3070)より小さいRTFでした。RTFから、音声1分あたりの合成時間を計算すると、VOICEVOXが約17.5秒、Qwen3-TTSが約93秒(1.7B)・約91.5秒(0.6B)です。長い文章をまとめて音声にする使い方では、この差が、待ち時間として表れます。

VRAMは、Qwen3-TTSの1.7Bが最大5,920MiB、0.6Bが3,276MiBで、どちらもVRAM 8GBのRTX 3070に収まりました。1.7Bは0.6Bの約1.8倍のVRAMを使いますが、RTFは約1.54と約1.53で、ほとんど変わりませんでした。今回の測定では、モデルを小さくするとVRAMは減りましたが、速さは変わりませんでした。モデルを小さくしても速さが変わらなかった理由は、今回は切り分けていません。

VOICEVOXをCPUで動かした今回の構成では、GPUのVRAMを使いませんでした。同じPCで、VRAMを画像生成やLLMなど、ほかの用途に使いながら、読み上げだけをCPUに任せられる可能性があります。ただし、VOICEVOXとほかのソフトを同時に動かした測定はしていないため、あくまで可能性です。

Qwen3-TTSでは、同じ文章でも、実行ごとに音声の長さが変わりました。その原因は確かめていません。

今回の測定で確かめていないこと

次のことは、今回確かめていません。

音質は、評価していません。声の良し悪し、聞き取りやすさ、読み間違いの数は、測定の対象ではありません。主観の評価もしていません。

VRAM 8GBでの、ほかの読み上げモデルの結果は、ありません。Qwen3-TTSは、CustomVoice版の2種類だけを測りました。声を複製する方式や、声を文章で設計する方式(VoiceDesign)は、RTX 3070では測っていません。VOICEVOXは、玄野武宏の声だけを測りました。声によって、話す速さが違う可能性があります。

文章は1種類(856字)だけです。数万字の長い文章や、長時間の連続運転での安定性は、確かめていません。VOICEVOXをNVIDIA版(GPU実行)で動かした場合の速さも、測っていません。

VOICEVOXを動かしたCPUの型番は、記録していません。CPUの性能が違えば、RTFも変わると考えられます。Qwen3-TTSがRTF 1.5になった原因(PyTorchの設定、tritonを無効にしたこと、メインメモリが7GBであることなど)は、切り分けていません。ソフトの版や設定を変えれば、速さが変わる可能性があります。

利用条件の確認

Qwen3-TTSは、Hugging Faceのモデルカードに、ライセンスがApache-2.0と記載されていることを確認しました。

VOICEVOXは、声(キャラクター)ごとに、利用規約が決められています。クレジットの表記や、商用利用の可否などが、声によって違う場合があるため、使う声の公式の個別規約を、利用前に必ず確認してください。この記事では、玄野武宏の規約の原文は確認しておらず、利用の可否は判断していません。

まとめ

見たこと 結果(RTX 3070・走れメロス冒頭856字)
VOICEVOX(CPU・玄野武宏) RTF 0.2918(実時間より速い)・VRAM 0 MiB・音声1分あたり約17.5秒
Qwen3-TTS 1.7B RTF 1.5445(実時間より遅い)・VRAM最大 5,920 MiB・音声1分あたり約93秒
Qwen3-TTS 0.6B RTF 1.525(実時間より遅い)・VRAM最大 3,276 MiB・音声1分あたり約91.5秒

VRAM 8GBのRTX 3070では、Qwen3-TTSは1.7B・0.6Bとも動きましたが、実時間より遅い結果でした。VOICEVOXはCPUだけで、実時間より速く動き、VRAMを使いませんでした。音質は評価していないため、声の好みで選ぶ場合は、自分で聞いて決める必要があります。

どちらを試すか、どう決めるか

今回の数字から言えるのは、速さとVRAMについてだけです。足すと何が上がり、何の制約が付くかを、次の表に並べます。

自分の使い方 VOICEVOX(CPU) Qwen3-TTS(RTX 3070)
長い文章を、待たずにまとめて音声にしたい RTF 0.29。音声1分あたり約17.5秒 RTF 約1.5。音声1分あたり約91〜92秒
VRAMを、ほかの用途に残したい VRAMは使わない(CPU実行) 1.7Bで最大5,920MiB・0.6Bで最大3,276MiB
モデルの大きさを選びたい 今回は声(玄野武宏)1つだけを測定 1.7Bと0.6Bで速さはほぼ同じ。VRAMは0.6Bのほうが少ない
声の質で選びたい 未評価 未評価
利用条件 声ごとの公式規約を確認 HFカードにApache-2.0と記載

最初の一歩は、自分の使う文章の一部を、VOICEVOXで音声にして、聞いてみることです。CPUだけで動くため、GPUの空きを気にせず試せます。Qwen3-TTSを試す場合は、VRAMが少ない0.6Bから始めると、8GBのGPUでも余裕を持って動かせました(最大3,276MiB)。ただし、待ち時間は音声の約1.5倍かかる点に注意してください。導入方法は、VOICEVOXは公式サイト(voicevox.hiroshiba.jp)、Qwen3-TTSは配布元のモデルカード(Hugging Face の Qwen/Qwen3-TTS-12Hz-0.6B-CustomVoice)を参照してください。この記事では導入手順は扱っていません。

参考: 別の機体で記録された値(本編の表とは別条件)

同じ2つのソフトを、別の機体(EVO-X2。VOICEVOXはCPU、Qwen3-TTSはVRAM 16GBのRTX 5060 Ti)でも動かした記録があります。条件が本編と違うため、上の表の値とは、比べないでください。違いは次のとおりです。

項目 別の機体の記録 本編(RTX 3070)との違い
VOICEVOX RTF 0.061(走れメロス冒頭40文・807字で、音声約130秒を約8秒) 文字数が違う(807字と856字)。CPUも違う。回数・中央値の取り方は同じではない
Qwen3-TTS RTF 0.53〜0.56(1.7Bの VoiceDesign と Base を組み合わせ、参照音声から声を複製する方式) モデルの種類が違う(CustomVoiceではない)。GPUもVRAM 16GB

この記録は、私が本編の条件で測り直したものではありません。別の機体では、長時間回したときに、CUDAのエラー(unspecified launch failure)で1回止まった、という記録もあります。

次の一歩

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