グラフィックボードを増設する際に気をつけること〜確認する5つと、どこで確かめるか
グラフィックボード(GPUを載せた拡張カード)を増設して2枚にしても、VRAM(GPUが持つ専用メモリ)が自動で足し合わされるわけではありません。使うソフトが、複数のGPUにモデルを分けて載せる機能に対応しているかを、先に確認する必要があります。そのうえで、ローカルAI(自分のPCで動かす生成AI)のVRAM不足を、2枚目の増設で補う方法があります。
ただ、2枚目は、買ってから「ケースに入らない」「電源のケーブルが足りない」と気づくことがあります。どのグラボを足すかによって、確認する値は変わります。そこで本記事は、特定のグラボの仕様を並べるのではなく、2枚目を足すときに、どの項目を、どこで確認すればよいかをまとめました。公開されている仕様書やマニュアルを調べてまとめたもので、今回新しく実機で測定したデータはありません。
2026年10月26日時点の内容です。足すグラボを選ぶときは、GPU価格一覧で価格を確認できます。2枚挿しで実際に速くなるかは、GPU2枚挿しの記事にまとめています。
何を調べたのか
2枚目を足す前に確認する項目と、それぞれの確認先を調べました。項目は、PCIeスロットの接続レーン数、カードの厚さと長さ、補助電源のケーブル、電源ユニットの容量、冷却(隣のカードとの間隔と空気の流れ)の5つです。
公式のマニュアルや仕様書で確認できた項目は出典を書き、確認できなかった項目は「未確認」と書いています。
確認1 スロットの接続レーン数
グラフィックボードを挿す場所を、PCIeスロットと呼びます。2枚目を挿すには、スロットが2本以上あるだけでは足りません。2本目のスロットの接続レーン数(通信の通り道の数)を確認します。一般的なグラフィックボード用はx16で、x4は通り道の数がその4分の1です(実際の通信の速さは、PCIeの世代などでも変わります)。
マザーボードによっては、2本目のx16形状のスロットが、チップセット経由の「x4接続」になっています。ASUSのPRIME B650-PLUSでは、2本目のx16形状のスロットが「x4 mode」と記載されています。ROG STRIX Z790-E GAMING WIFIも、チップセット側のx16形状のスロットはx4 modeで、M.2(小型のSSD)を使うと1本目がx8に落ちるという注記があります。
形状がx16でも、中身がx4とは限りません。接続の速さは、レーン数だけでなく、PCIeの世代(規格の新しさ)や、CPUに直結しているか、チップセット経由かにも左右されます。確認先は、お使いのマザーボードのマニュアルです。2本目のスロットの接続レーン数・世代・CPU直結かどうかと、M.2との併用条件を探してください。
確認2 カードの厚さと長さ
カードの厚さは、PCケースの背面で何本分のスロットを塞ぐかで数えます。同じGPUでも、メーカーや製品の設計によって、厚さも長さも違います。たとえば、2スロット厚の製品もあれば、3スロット以上の製品もあります。
確認することは3つです。1つ目は、足したいカードの厚さ・長さ・高さを、その製品の仕様表で確認すること。2つ目は、PCケースの対応するカードの長さと、前面のラジエーターやケーブルの張り出しを含めた、実際の内寸を測ること。3つ目は、1枚目と2枚目の間隔を確認することです。マザーボードの2本のスロットの間隔が狭いと、厚いカードを2枚並べられない場合があります。
確認3 補助電源のケーブル
カードによっては、PCIeスロットから受け取れる電力だけでは足りず、電源ユニットから補助電源のケーブルを引きます。必要な本数と、コネクターの形状は、製品によって違います。別の形状のコネクターを使う製品や、変換ケーブルが付く製品もあります。
確認先は、足したいカードの仕様表と、お使いの電源ユニットです。1枚目で使っているケーブルを除いて、電源ユニットに未使用のPCIe補助電源コネクターが何本あるかを数えてください。電源ユニットの出力の定格が、2枚分に足りるかも、電源ユニットの仕様で確認します。
確認4 電源ユニットの容量
2枚挿すと、GPUの消費電力は、最大でおおむね2枚分を見込む必要があります(実際は、負荷や電力制限の設定で変わります)。電源容量は、CPUやストレージ、ファンも含めた、システム全体で見積もります。公式の仕様書には、カード全体の消費電力として、TGPまたはTBPが載っています。名前は違いますが、どちらもカード全体の消費電力の目安です。製品ごとに指標が違うため、実測値の比較ではありません。
2枚の公称値を足した数字は、必要な電源容量の推奨値ではありません。メーカーが示す推奨電源は、そのカードを1枚で使う場合の、システム全体向けの値です。たとえば、NVIDIA公式の仕様では、RTX 3090の消費電力は350W、推奨電源は750Wです。2枚挿しの電源容量は、使うCPUなども含めて、各メーカーの案内で確認してください。
確認5 冷却
厚いカードが隣り合うと、片方の吸気を妨げるおそれがあります。2スロット厚のカードでも、間隔が詰まると同じことが起きる可能性があります。今回は、間隔と温度の関係を測っていません。確認することは、2枚のカードの間に空きがあるか、2枚目の吸気口が、1枚目の排気やケースの底面に近すぎないか、ケースの吸気と排気の向きが、2枚目のカードの吸気をふさがないかです。装着後は、温度とファンの回転数を確かめてください。
認識しないときと、メーカーが違うとき
2枚目を挿しても認識されないときは、マザーボードのマニュアルで、BIOS(起動時の設定)の更新と、PCIeスロットの設定、Above 4G Decodingという項目を確認します。すべての環境で必要な設定ではありません。1枚目と2枚目でメーカーが違うときは、ドライバ(GPUを動かすソフト)が両方に対応しているか、使うソフトが両方のメーカーのGPUに対応しているかも、購入前に確認します。
2枚にしても速くなるとは限らない
llama.cppの公式ドキュメント(multi-gpu.md)によると、複数のGPUを使うときの性能は、GPU同士をつなぐ接続の速さに左右される、とされています。GPUの性能、モデルの分け方、設定にも左右されます。既定のlayerモードは、モデルを層ごとに分けるため、低速な接続でも使えます。tensorモードは実験的で、高速な接続が前提です。
2本目のスロットがx4接続の場合、この接続の速さに影響する可能性があります。どの組み合わせで、どれだけ速さが変わるかは、本記事では測っていません。
出典と、今回確かめていないこと
出典は、ASUSのマザーボード2機種(PRIME B650-PLUS、ROG STRIX Z790-E GAMING WIFI)のマニュアルの記載、NVIDIA公式のRTX 3090の仕様、llama.cppの公式ドキュメント(multi-gpu.md)です。
次のことは、今回確かめていません。実機に2枚を挿して、起動と認識を確かめていません。ケースの内寸と、カードの全長は、製品ごとに異なるため扱っていません。ASUS以外のマザーボードは、確認していません。1本目と2本目のカードのメーカーが違うときの、ドライバの組み合わせも確かめていません。
まとめ
2枚目を買う前の確認は、次の5点です。
| 順 | 確認すること | 見る場所 |
|---|---|---|
| 1 | 2本目のPCIeスロットの接続レーン数と、M.2との併用条件 | マザーボードのマニュアル |
| 2 | カードの厚さ・長さと、ケースの空き・スロットの間隔 | カードの仕様表・PCケースの仕様 |
| 3 | 補助電源の本数・コネクターの形状と、電源ユニットの未使用ケーブル | カードの仕様表・電源ユニット |
| 4 | GPUの公称値を起点に、CPUなども含めた全体の電源容量 | 各メーカーの案内 |
| 5 | 2枚の間隔と、ケース内の空気の流れ | PCケースの仕様・組み付けの状態 |
厚さと補助電源の値は、メーカーと製品によって違います。足すカードを決めたら、その製品の仕様表で、5つの項目を順に確かめてください。