Ollamaだけで日本語を読み上げられる?〜LFM3-AudioとPhononを調べ、『走れメロス』で測った
Ollama(自分のPCでAIモデルを動かすソフト)が、2026年10月に読み上げ(音声合成。TTS=Text To Speech)に対応しました。11月2日のVOICEVOXとQwen3-TTSを測った記事では、VOICEVOXとQwen3-TTSを、それぞれ別のソフトとして入れて動かしました。Ollamaをすでに使っている人なら、Ollamaだけで日本語の読み上げまで済ませられるのでしょうか?
先に結論を書きます。Ollamaで使える読み上げモデルは、2026年10月31日時点で2系統あります。日本語に対応すると書かれているのは、Liquid AIのLFM3-Audioだけです。もう1つのPhonon(フォノン)は、英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ポルトガル語の5言語で、日本語は対象外です。PhononのOllama版は、Apple Silicon(M1以降のMac)が前提と書かれています。
この記事では、Ollamaの公式ドキュメント、公式のモデル一覧、リリースノートを読み、対応OS・必要な版・言語・ライセンスを整理しました。そのうえで、11月2日の記事と同じ文章(走れメロス冒頭40文・856字)を使い、LFM3-AudioをRTX 3070とMac miniで、PhononをMac miniで動かして、速さとメモリを測りました。測定は2026年11月1日の夜から2日の未明にかけて行いました。
2026年10月31日時点の内容です。Ollamaの読み上げ機能は、10月下旬の1週間で版が4回上がり、対応OSも変わっています。
Ollamaの読み上げ機能とは
Ollamaの読み上げは、文章を渡すと、声の音声データを作って返す機能です。音声は、作りながら少しずつ流れてくる(ストリーミング)ため、全文を作り終える前に再生が始まります。
使い方は2通りあります。1つ目は、コマンドの ollama run phonon "読ませたい文" です。PCのスピーカーから、そのまま声が出ます。出力をファイルに向けると、WAVファイル(音声ファイルの形式)として保存されます。2つ目は、ほかのアプリから呼ぶ方法です。OpenAI互換(OpenAIの仕様に合わせた呼び方)の /v1/audio/speech という窓口に、文と声の名前を送ると、音声が返ってきます。
公式ドキュメントに書かれている主な条件は、次のとおりです。
- 音声は、16bit・モノラル・24kHzのWAV(既定)か、ヘッダーなしの生データ(PCM)。
- 1回に送れる文は、4,096文字まで。コマンドから使う場合は、長い文を自動で分けて送ります。
- 読み上げ専用のモデルに、会話や文章生成を頼むと、エラー(400)が返ります。
- 話す速さの指定など、対応していない設定を送ると、エラーが返ります。
11月2日の記事で使った「走れメロス」冒頭856字は、1回で送れる長さに収まります。
LFM3-AudioとPhononは何が違うのか
2つのモデルは、作りも対応範囲も大きく違います。公式のモデル一覧とリリースノートから、違いを表にまとめました。
| 項目 | LFM3-Audio(Liquid AI) | Phonon(Gradium) |
|---|---|---|
| 大きさ | 2B(20億パラメータ)。ダウンロード約1.7〜2.1GB | 31M(英語)・40M(ほかの言語)。ダウンロード約104〜148MB |
| できること | 読み上げのほか、音声の書き起こし・翻訳・音声での会話 | 読み上げだけ |
| 言語 | 18言語(モデルカードでは、英語を英米で分けて19。日本語を含む) | 英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ポルトガル語。日本語なし |
| 対応OS(Ollama) | Apple Silicon・Linux・Windows(v0.40.13から) | モデル一覧には「Apple Silicon が必要」と記載 |
| 必要なOllamaの版 | v0.40.12以降(Liquid AIのモデルカード)。Linux・Windowsはv0.40.13以降 | v0.40.9以降(公式ドキュメントとモデル一覧) |
| ライセンス | LFM Open License v1.0 | 英語31MはApache 2.0。40Mの各言語と多言語版はCC BY-NC 4.0(非商用のみ) |
リリースノートでは、読み上げの登場はv0.40.11(10月24日)で、「macOSで音声を作れるようになった」と書かれています。一方、公式ドキュメントとPhononのモデル一覧は、必要な版をv0.40.9以降としています。どちらが正しいかは確かめていません【未確認】。最新版(10月31日時点ではv0.40.13)を入れておけば、どちらの条件も満たします。
LFM3-Audioは、v0.40.12(10月27日)の時点では、Apple製品だけで動く扱いでした。翌日のv0.40.13で、「lfm3-audio と lfm3-omni の読み上げを含め、LinuxとWindowsでも動く」と書かれました。
PhononがLinuxやWindowsで動くかは、はっきりしません。公式ドキュメントには、LinuxとWindowsで音声を再生する方法が書かれています。ただ、これは再生の仕組みの説明で、Phononが動くとは書かれていません【未確認】。今回は、Phononを RTX 3070 の Linux 機(Ollama v0.40.13)でも試しました。ollama pull phonon は、「this model requires MLX support, but the MLX runtime is not available」(このモデルには MLX が必要だが、使えない)というエラーで止まりました。Linuxでは、今のところPhononは動きませんでした。
日本語は読めるのか
LFM3-Audioのモデルカード(Hugging Face)は、音声の言語の一覧に日本語を挙げています。読み上げは「一覧の言語から選ぶ」と書かれています。ただし、読み上げの品質の数値(UTMOSv2という自動評価で3.83)は、英語だけのものです。日本語の読み上げの品質を示す数値は、モデルカードにはありませんでした。音声の書き起こしの評価には、日本語が含まれています。
声の選び方にも、確かめていない点があります。モデルカードでは、声は女性か男性かを指示文(システムプロンプト)で選ぶ、とされています。Ollamaの /v1/audio/speech から、どの名前で声を選ぶのかは、公式の文書では見つかりませんでした【未確認】。モデル一覧の使い方の例は、文字で会話する例だけでした。
Phononは、日本語に対応していません。日本語の文(走れメロスの冒頭の1文)を、Mac miniで phonon と phonon:multilingual に渡すと、どちらもエラーにならず、約5.5秒と約5.4秒の音声が返ってきました。その音が日本語として聞き取れるかは、聴いて確かめていません【未確認】。公式が日本語を対象外としているので、日本語の読み上げには使わないほうがよい、というのが、Phononについての結論です。
LFM3-Audioで作った日本語の音声は、読み飛ばしや誤読の数を数えていません【未確認】。同じ856字を読ませても、できた音声の長さは、RTX 3070で約125〜155秒(2回の測定を通じて)、Mac miniで114〜141秒と、回ごとにばらつきました。声の良し悪しも、11月2日の記事と同じく評価していません。
速さとVRAMを測った
測り方は、11月2日の記事にそろえました。文章は、青空文庫の「走れメロス」冒頭40文・856字です。速さは、RTF(Real Time Factor)で表します。RTFは、音声を作るのにかかった時間を、できた音声の長さで割った値です。1.0より小さければ、音声の長さより短い時間で作れた(実時間より速い)ことを表します。各6回測り、1回目は別扱いにし、残り5回から最速と最遅を除いた3回の中央値を出しました。
今回は、作り始めてから最初の音が届くまでの時間も測りました。ストリーミングで再生する使い方では、全体の速さより、この待ち時間のほうが体感に響くためです。
| 方式 | 機材 | RTF 中央3点 | 最初の音までの時間 | メモリ最大 |
|---|---|---|---|---|
| LFM3-Audio(Ollama)・日本語 | h570・RTX 3070(VRAM 8GB) | 0.125 | 0.08秒 | 2,419MiB(GPU全体の最大) |
| LFM3-Audio(Ollama)・日本語 | Mac mini(Apple Silicon) | 0.477(※1) | 0.15〜0.33秒 | モデル約2.1GB(ollama ps)/プロセスの最大約1.9GB |
| Phonon 31M(Ollama)・英語 | Mac mini(Apple Silicon) | 0.021(※2) | 0.02秒 | モデルの大きさは約112MB(ollama list)。実行中のメモリは測っていません【未確認】 |
| 参考: VOICEVOX(CPU) | 11月2日の記事の値 | 0.2918 | 測っていない | VRAM 0 |
| 参考: Qwen3-TTS 0.6B | 11月2日の記事の値(RTX 3070) | 1.525 | 測っていない | VRAM 3,276MiB |
(※1)Mac miniのRTFは、2回目から6回目まで0.262、0.422、0.477、0.484、0.492と、回を追うごとに遅くなりました(1回目は0.252)。表の値は、2〜6回目から最速と最遅を除いた3回の中央値です。遅くなった原因は、熱か、同時に動いていた別の処理かを切り分けていません。最初の2回だけなら0.25前後でした。LFM3-Audioは、LinuxのOllamaでは約1.7GBの量子化(Q4_K_M)版、Mac miniでは約2.1GBのMLX版(nvfp4)が使われ、モデルの形式が違います。
(※2)Phononは日本語に対応しないため、英語で測りました。走れメロスの英訳ではなく、パブリックドメインの英文『Pride and Prejudice』の冒頭800字を使っています。文章が違うので、RTFは目安です。できた音声は46〜47.5秒で、6回のRTFは0.021〜0.024でした。
Phononは日本語を読めないため、英語の文で測りました。言語が違うので、LFM3-Audioの行と直接は比べられません。Ollamaに読み上げを任せた場合に、Macでどのくらいの速さが出るかの目安として載せています。
LFM3-AudioのRTFは、RTX 3070で0.125でした。1.0を大きく下回っていて、856字(約2分の音声)を約17秒で作れました。11月2日の記事のQwen3-TTS(RTX 3070・RTF約1.5)と比べると、約12分の1の時間です。CPUで動かしたVOICEVOX(RTF約0.29)よりも速い値でした。ただし、機械の数字を並べただけで、声の自然さの比較ではありません。
VRAMは、最大2,419MiBで、RTX 3070の8GBに余裕で収まりました。音声データは作りながら送られてくるため、最初の音声データが届くまでは0.08秒でした(聴いて体感を確かめたものではありません)。Mac miniでも、RTFは0.25〜0.49で、実時間より速く作れました。
Ollamaでは、ほかのモデルと同じく、読み上げモデルも使ったあとしばらくメモリに残ります。会話用のモデル(qwen3:8b)を載せた状態で、RTX 3070にLFM3-Audioを呼ぶと、ollama ps では qwen3:8b が全部VRAMに載り、LFM3-Audioは約1.6GBのうち約0.57GBだけがVRAMに載りました(残りはCPU側)。nvidia-smiの合計は7,130MiBです。8GBのVRAMだと、2つ同時はぎりぎりで、読み上げが一部CPUに回ります。1文(約3秒の音声)の応答には約9.6秒かかりました。
使う前に確かめておきたいこと
ライセンスは、モデルごとに違います。Phononは、既定の英語31MだけがApache 2.0で、40Mの各言語版と多言語版は、非商用に限られるCC BY-NC 4.0です。同じ「phonon」という名前でも、タグ(版の名前)によって条件が変わります。LFM3-AudioのLFM Open License v1.0は、商用利用の条件を原文で確認していません【未確認】。動画やアプリで声を使う場合は、使う前に原文を読んでください。
Ollamaの読み上げは、Markdown(見出しや太字の記号)を、そのまま読み上げることがあるとモデル一覧に書かれています。会話用モデルの返事を読み上げにつなぐ場合は、記号を取り除く処理を挟むと、聞きやすくなる可能性があります。
LFM3-Audioの声で、話す速さや抑揚を変えられるかは、確かめていません【未確認】。公式ドキュメントでは、話す速さの指定はエラーになると書かれています。
まとめ
分かったことは、次のとおりです。
- Ollamaの読み上げは、10月24日のv0.40.11で登場し、10月28日のv0.40.13でLFM3-AudioがLinux・Windowsでも動くようになりました。
- 日本語に対応すると書かれているのは、LFM3-Audio(2B・約2GB)だけです。Phononは英語など5言語で、Ollama版はApple Siliconが前提です。
- LFM3-Audioの日本語の読み上げ品質を示す公式の数値はありません。RTX 3070でのRTFは0.125、VRAM最大は2,419MiBでした。
- 11月2日の記事の値(Qwen3-TTS のRTF約1.5、VOICEVOX のRTF約0.29)と比べると、LFM3-Audio(RTX 3070・RTF 0.125)のほうが、この2方式より速い値でした。
- Phononの多言語版はCC BY-NC 4.0(非商用)です。タグによってライセンスが変わります。
日本語の読み上げをローカルで試したい人は、まず LFM3-Audio(2B・約2GB)を Ollama 0.40.13 以降で動かし、手持ちの文章で聞いて確かめるのが最初の一歩です。品質の数値は公式にないので、使えるかどうかは自分の耳で判断してください。仕事で使う予定なら、Phonon のようにタグでライセンスが変わるので、使うタグの条件を先に確認してください。
出典
- Ollama 公式ドキュメント「Speech」 https://docs.ollama.com/capabilities/speech (2026年10月31日確認)
- Ollama 公式モデル一覧「lfm3-audio」 https://ollama.com/library/lfm3-audio (2026年10月31日確認)
- Ollama 公式モデル一覧「phonon」 https://ollama.com/library/phonon (2026年10月31日確認)
- Ollama リリースノート(v0.40.8〜v0.40.13) https://github.com/ollama/ollama/releases (2026年10月31日確認)
- Liquid AI「LFM3-Audio-2B」モデルカード https://huggingface.co/LiquidAI/LFM3-Audio-2B (2026年10月31日確認)
- 青空文庫「走れメロス」(太宰治・著作権の保護期間が終わった作品)