写真から3Dモデルを作る無料ソフト Spirula Studio とは?〜できること・動くPC・ほかのソフトとの違い

本ページは広告(アフィリエイトプログラム)を含みます。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。

Spirula Studio(スピルラ スタジオ)は、写真や動画から3Dの場面や3Dモデルを作る無料のソフトです。Windows、Linux、Mac 向けに配られていて、X(旧Twitter)で紹介されているのを見かけました。

ふだん、ローカルでの生成AIの話をメインに記事にしていますが、今回は写真から3Dを作るソフトを取り上げます。このソフトで何ができて、自分のPCで動かせるのか、同じようなソフトと比べて何が違うのでしょうか?

本記事では、公式の説明文(GitHub の README)と配布ページ、紹介投稿を読みました。Spirula Studio で何ができるのか、どのGPUで動くとされているのかを整理し、写真から3Dを作るほかのソフト4本と、動くGPU、必要なVRAM、価格を数字で比べます。

2026年9月28日時点の内容です。

この記事で調べたこと〜範囲と情報源

調べたのは次の4つです。

  • Spirula Studio は何をするソフトなのか
  • どのGPUとOSで動くとされているのか
  • 写真から3Dを作るほかのソフトと比べて、動くGPUや必要なVRAM、価格はどう違うのか
  • 使う前に気を付けたい点は何か

情報源は次の通りです。Spirula Studio は当ブログのPCではまだ動かしていないため、動作や性能の話はすべて公式に書かれた内容です。

情報源 中身 扱い
GitHub の README 作者による説明文(機能・動くGPU・ライセンス・組み立て方) 公式
GitHub のリリースページ 配布ファイルの種類と大きさ(2026年9月24日に確認) 公式
X の紹介投稿 DuckbillStudio さんによる使用感と注意点 投稿者の評価
比べたソフトの公式ページと論文 動くGPU、必要なVRAM、価格(2026年9月28日に確認) 公式(Postshot の価格のみ報道サイト)

Spirula Studio は何をするソフト?

README によれば、写真や動画を読み込んで 3D Gaussian Splatting の立体を作るソフトです。最後は、表面の模様(テクスチャ)付きの3Dモデルまで仕上げます。この一連の作業を、ひとつのアプリの中で行えるとされています。

3D Gaussian Splatting とは

3D Gaussian Splatting(略して 3DGS)は、いろいろな角度から撮った写真をもとに、どの向きから見てもそれらしく見える3Dの場面を作る技術です。場面を、ぼんやりした色付きの粒(ガウシアン)の集まりとして表します。

Spirula Studio は、この粒の集まりに加えて、面でできた3Dモデル(メッシュ)まで作れる、という点を打ち出しています。

写真から3Dモデルまでの流れ

README と紹介投稿に書かれている機能を、作業の順に並べると次のような流れです。

Spirula Studio の中で進む作業(README と紹介投稿の記載から並べたもの)
① 素材
写真・動画
動画はコマを切り出す
→
② 位置合わせ
撮った位置と向きを割り出す
SfM
→
③ 切り抜き
要らない部分を外す
AIマスク・任意
→
④ 学習
粒の集まりを作る
3DGS
→
⑤ 仕上げ
テクスチャ付きの3Dモデル
メッシュ
②〜⑤の計算は、PCのGPUで Vulkan を通して行う

②の SfM(Structure from Motion)は、写真どうしで同じ場所を見つけて、それぞれの写真をどこから撮ったのかを逆算する処理です。3DGS の学習は、この位置合わせが済んでいることが前提です。

Python や PyTorch、COLMAP を入れなくてよい?

README は冒頭で、Python も PyTorch も要らず、COLMAP を別に入れる必要もない、と書いています。配布されているのは、それだけで完結した1本のアプリです。

Python はプログラミング言語、PyTorch は AI の計算に使う Python 向けの部品です。COLMAP は、上の②の位置合わせでよく使われる、別に入れて使うソフトです。README が冒頭でこれらを要らないと書いているのは、この種の道具を試すときに、別々に揃える手順が付いて回ることが多いからだと考えられます。

使い方について、README には「自分のOS用のファイルを落として展開し、ダブルクリックで開く」とあります。画面で操作するアプリのほかに、コマンドで動かす版(CLI)も用意されています。クラウドや別のPCのGPUで学習させる場合は CLI を使い、学習の途中経過をブラウザで確認できるとされています。

NVIDIA 以外のGPUでも動く?

ローカルでAIの道具を動かそうとすると、NVIDIA の CUDA を前提にしたものによく出会います。当ブログでも Radeon RX 9060 XT や Intel Arc B580 を扱ってきましたが、道具によっては NVIDIA 以外のGPUが対象に入っていないことがあります。

3DGS を作るソフトも同じです。3DGS は2023年にフランスの研究所 Inria が発表した技術で、そのとき公開された元のプログラムは、NVIDIA の GPU でしか動かない CUDA という仕組みで書かれていました。後から出たソフトもそれを土台にしたものが多く、下で比べる5本のうち3本(Inria の元の実装・LichtFeld Studio・Postshot)は NVIDIA の GPU が必要です。つまり「3DGS を自分で作るなら NVIDIA の GPU」というのが、これまでの前提でした。

Spirula Studio は、README で NVIDIA、AMD、Intel、Apple の4社のGPUで動くと明記しています。そのための仕組みが Vulkan です。

Vulkan とは

Vulkan は、GPUメーカーを問わずにGPUへ計算を頼むための、共通の窓口(API)です。CUDA が NVIDIA 専用なのに対して、Vulkan は各社のGPUドライバが対応しています。Mac では、Vulkan の命令を Mac の仕組みに置き換える MoltenVK を通して動きます。README によれば、Mac 版には MoltenVK が組み込まれているため、別に何かを入れる必要はないとのことです。

README では、ソースから組み立てる場合の選択肢として Vulkan 版と CUDA 版の2つを挙げています。違いは次の通りです。

項目 Vulkan 版 CUDA 版
動くGPU NVIDIA・AMD・Intel・Apple Silicon 多くの NVIDIA のGPU
動くOS Windows・Linux・macOS Windows・Linux
位置合わせ・動画のコマ切り出し・AIマスク アプリの中で行える README の比較表には記載なし
README での位置づけ 推奨。いちばん試験されている 以前からある選択肢(legacy)

学習とメッシュ作りの機能は、どちらの版でも同じとされています。速さについては、GPUドライバ次第で CUDA 版が速いことも遅いこともあり、差はおおむね数%以内と書かれています。Vulkan 版のほうが、場合によってはVRAMを少し節約できるそうです。

配布されているファイル

2026年9月24日に GitHub のリリースページを確認したところ、最新版は同じ日に公開された v2026.9.24 で、配布ファイルは3つでした。前の版は v2026.9.20、その前は v2026.9.13 で、4〜7日おきに更新が続いています。

OS ファイル名 大きさ
macOS spirula-2026.9.24-macos-vulkan-arm64.dmg 約58MB
Linux(Ubuntu) spirula-2026.9.24-ubuntu-vulkan-x86_64.zip 約51MB
Windows spirula-2026.9.24-windows-vulkan-x86_64.zip 約37MB

配布されているのは、3つとも Vulkan 版でした。CUDA 版を使いたい場合は、ソースから自分で組み立てる形です。

macOS 版のファイル名は arm64 で、Apple Silicon(M1 以降のチップ)向けと読めます。Intel の CPU を積んだ Mac 向けのファイルは、リリースページにはありませんでした。Mac での学習は、2026年8月14日に動作が確かめられたと README のお知らせ欄にあります。

VRAM 8GB でどこまで扱える?

README には、VRAM 8GB で最大1,000万個の粒を学習できるとあります。VRAM は、GPUに載っている作業用のメモリーのことです。

この1,000万個は、見る角度によって色が変わる表現(球面調和関数、SH)を最も細かい段階(SH3)にした粒の数です。数値を小さく丸めて計算する学習(量子化)で、メモリーを節約しているとされています。どれくらいの広さの場面が1,000万個に収まるのかは、README には書かれていません。

比べる目安として、3DGS を最初に発表した研究チーム(フランスの Inria)の実装は、論文と同じ品質まで学習するには VRAM 24GB を推奨しています。論文では、研究でよく使われる屋外を含む撮影データ(Mip-NeRF360)を30,000回学習しています。NVIDIA RTX A6000 で平均41分33秒かかり、できたファイルは平均734MBでした。粒の数も場面もそろっていないので、Spirula Studio の8GBと単純には比べられません。

写真から3Dを作るほかのソフトと比べると?

同じように、写真から 3DGS を作れるパソコン用のソフトを4本選び、公式に書かれた条件を並べました。GitHub のスター数(ブックマークの数)と価格は2026年9月28日に確認した値です。

ソフト 動くGPU VRAM(公式の記載) OS・動く環境 価格(ライセンス) GitHub のスター数
Spirula Studio NVIDIA・AMD・Intel・Apple(Vulkan) 8GB で最大1,000万個の粒 Windows・Linux・macOS(Apple Silicon) 無料(GPLv3) 1,134
Brush NVIDIA・AMD・Intel・Apple(WebGPU) 記載なし Windows・Linux・macOS・Android・ブラウザ(Chrome 134以降) 無料(Apache-2.0) 5,115
LichtFeld Studio NVIDIA のみ(計算能力7.5以上) 8GB 以上 Windows・Linux ソースから組み立てれば無料。Windows 用の配布版は30ドル以上の寄付(GPLv3) 3,781
Postshot(Jawset) NVIDIA のみ(計算能力7.5以上=GeForce RTX 2060 以上) 記載なし Windows 10 以降 無料版は商用不可・書き出しに透かし。Indie 月17ユーロ(年204ユーロ)、Studio 月39ユーロ(年468ユーロ) 非公開(GitHub に置いていない)
Inria の元の実装 NVIDIA のみ(計算能力7.0以上) 24GB(論文の品質まで学習する場合) Windows 10・Ubuntu 22.04 で試験 無料。研究と評価の用途に限る(商用は別途契約) 24,003
各ソフトの公式ページ、README、論文から。Postshot の価格は報道サイト Radiance Fields による2026年7月時点の値

計算能力(Compute Capability)は、NVIDIA が GPU の世代ごとに付けている番号です。7.5 は GeForce GTX 16シリーズと RTX 20シリーズの世代にあたり、それより古い GTX 10シリーズでは動きません。

5本のうち、NVIDIA 以外のGPUでも学習まで動くとしているのは Spirula Studio と Brush の2本でした。Brush は README で、COLMAP や Nerfstudio の形式で位置合わせ済みのデータを読み込むと説明しています。Spirula Studio は位置合わせまでアプリの中で行えるとしており、ここが2本の違いです。

処理時間の公称値は、Inria の論文を除いて、どのソフトの公式ページにも見当たりませんでした。場面の広さや写真の枚数で大きく変わるため、比べるには同じ素材で測る必要があります。

Spirula Studio は360°カメラの素材も使える?〜そのほかの機能

README の機能一覧と、お知らせ欄に書かれている主な機能を並べます。

機能 README の説明
360°カメラ・魚眼レンズ 360°カメラの画像(正距円筒図法)や魚眼の素材を、歪みを直す前処理なしでそのまま学習に使える
学習の方法 既存の複数の手法(MCMC・IGS+・MRNF)の長所を組み合わせ、よりくっきりして、宙に浮いたゴミ(floaters)が少ない
明るさ・色の補正 写真ごとの露出やホワイトバランスのばらつきを補正し、色ずれや暗くなるのを避ける
実際の大きさと向き 動画や画像に記録された撮影時の情報から、実際の大きさと傾きを復元する(2026年9月10日のお知らせ)
難しい素材の位置合わせ LoMa という方法で、特徴点の検出と照合ができる(2026年9月3日のお知らせ)
編集と書き出し 3DGS・位置合わせの結果・メッシュ・マスクの編集と、画像や動画の書き出し(2026年9月23日のお知らせ)
表示する言語 日本語を含む13の言語に対応(2026年8月8日のお知らせ)
そのほか 奥行きと面の向き(法線)の推定、空の背景(skybox)、リニアな色での処理など

README には Web Viewer へのリンクもあります。Spirula Studio で作られた作品は、3DGS を表示・公開できるサイト SuperSplat にまとめられています。

X の紹介投稿ではどう評価されている?

Spirula Studio を知るきっかけになった X の投稿は、DuckbillStudio さんによるものです。以下は投稿者の評価で、公式の説明ではありません。

  • 無料で、ポータブルな作り。日本語にも対応している
  • カメラの位置合わせ、マスク、法線の推定、3DGS の学習までを一気に進められる
  • 軽くて速い
  • マスクには SAM 3 を使うが、操作はボタン一つで済む

同じ投稿で、気になる点も2つ挙げられていました。DJI のカメラで撮る D-Log M の素材を、見た目の色へ戻すための変換表(LUT)を当てる手段が無いこと。そして、10bit で撮った素材も 8bit で処理されることです。どちらも README には記載がありませんでした。

Spirula Studio を使う前に気を付けたい点は?

ライセンスは GPLv3

Spirula Studio のライセンスは GPLv3 です。無料で使えるオープンソースのソフトで、改変したものを配る場合には、ソースコードも同じ条件で公開することが求められる種類のライセンスです。作った3Dデータの扱いについては、README には書かれていませんでした。

切り抜き(マスク)機能は、初回に追加のダウンロード

写真から要らない部分を切り抜くマスク機能には、Meta の切り抜き用AIモデル SAM が必要です。SAM はアプリに同梱されておらず、画面で操作する版では初めて使うときにダウンロードして保存する作りです。

README によれば、SAM のライセンスは版によって違います。SAM 2.1 は Apache-2.0 ですが、SAM 3 は Meta 独自の、一般的な形ではないライセンスです。ダウンロードの前に、アプリが利用条件を表示するとされています。仕事で使う場合は、その条件を読んでから進めるのがよさそうです。

ソースから組み立てる場合の、動画の読み込みと特許

ソースから自分で組み立てる場合、動画をGPUで読み込むためのオプションがあります。README では、有効にするとコマの切り出しが約15倍速くなり、ffmpeg(動画を扱う定番のソフト)も要らなくなると説明しています。

ただし、このオプションに含まれる、動画の圧縮形式 AVC(H.264)と HEVC(H.265)の読み込み部分には、第三者の特許が関わります。有効にした場合、それぞれの国や地域の特許法に沿っているかは、利用者が責任を持つとされています。

ログ撮影の素材の色

前の節で触れた、D-Log M の変換表を当てられない点と、10bit の素材が 8bit で処理される点です。色の幅を広く残せるログ撮影で素材を撮っている人は、その利点が学習の段階で生かされない可能性があります。投稿者の指摘で、公式からの説明は見当たりませんでした。

開発はほぼ1人

README の末尾には、Spirula Studio はほぼ1人で開発・保守していると書かれています。不具合の報告や改善の提案は歓迎していて、返事が遅れることはあるが、すべて目を通す、とのことです。更新は頻繁ですが、大きな会社の製品のような手厚い対応を期待するものではなさそうです。

Spirula Studio を試すかどうか、どう決めるか

ここまで調べた範囲から、向いている人と、注意が要る人を分けてみます。どれも公式の記載と投稿者の評価をもとにした目安で、当ブログのPCで動作を確かめた結果ではありません。

こういう人は 目安
Radeon・Intel Arc・Apple Silicon の Mac で 3DGS を試したい 候補になる。README では、これらのGPUで Vulkan により動くとされている
Python の環境づくりでつまずきたくない 候補になる。1本のアプリで、位置合わせまで中で行える
360°カメラや魚眼レンズで撮った素材がある 候補になる。歪みを直す前処理なしで使えるとされている
Intel の CPU を積んだ Mac を使っている 配布ファイルが無い。ソースからの組み立ても含めて確認が要る
D-Log M などのログ撮影で、10bit の色を生かしたい 投稿者の指摘では、LUT を当てられず 8bit で処理される
仕事で切り抜き機能を使いたい SAM 3 の利用条件を先に読む
RTX 20シリーズ以降の NVIDIA のGPUを持っていて、商用で使いたい Postshot の有料版(月17ユーロから)や LichtFeld Studio も候補に入る

最初の一歩としては、何も入れずに済むところから始められます。README から辿れる SuperSplat の作品ページで、Spirula Studio で作られた3DGS を開いてみる方法です。仕上がりの程度を、ブラウザだけで確かめられます。そのうえで、自分のOS用のファイルをリリースページから落とし、短い素材で試す、という順が手堅そうです。

まとめ〜NVIDIA 以外のGPUでも写真から3Dへ

Spirula Studio は、写真や動画から 3DGS とテクスチャ付きの3Dモデルまでを、1本のアプリで作るソフトです。README によれば、Python や COLMAP を別に入れる必要がなく、Vulkan を通して NVIDIA、AMD、Intel、Apple のGPUで動きます。VRAM 8GB で最大1,000万個の粒を扱えるとされています。

ほかの4本と比べると、NVIDIA 以外のGPUで学習まで動くとしているのは Spirula Studio と Brush の2本だけでした。Brush と比べると、位置合わせまでアプリの中で済ませられる点が違います。LichtFeld Studio と Postshot は NVIDIA の RTX 20シリーズ相当以上が条件です。

使う前には、GPLv3 のライセンス、切り抜き機能で追加される SAM の利用条件、ログ撮影で撮った素材の色の扱いを確認しておく必要があります。

写真から3Dを作る道具にも、NVIDIA を前提にしない選択肢が出てきました。Radeon や Intel Arc を積んだPCでAIを動かす幅も、少しずつ広がっていくのではないでしょうか。

なお、写真1枚から3Dを作る方法と、写真から3Dを作る技術の全体を調べた記事はこちらです。

参考にしたサイト