フルトラのトラッカーはなぜカメラを積み始めたのか〜2026年のハイブリッド化を調べてみた
VRで全身を動かすフルトラ(フルボディトラッキング=腰や足の動きをアバターに反映させる仕組み)のトラッカーは、長らく2つの方式に分かれていました。体に付けたセンサーで姿勢を推定するIMU式と、カメラで体を撮って位置を割り出すカメラ式です。ところが2026年に入ってから、両方を混ぜた製品が続けて登場しています。この分野で何が起きているのでしょうか。
本記事では、2026年に入ってからのトラッカーの動きを調べ、なぜ各社が両方式を混ぜ始めたのかを整理します。
2026年7月時点で調べた内容です。
IMU式とカメラ式は何が違う? 得意なことと苦手なこと
まず、2つの方式がそれぞれ何を得意としているのかを整理します。
| IMU式 | カメラ式 | |
|---|---|---|
| やり方 | 体に付けたセンサーで動きを検知する | カメラで体を撮り、姿勢を割り出す |
| 代表例 | HaritoraX 2、SlimeVR | Webカメラを使うソフト、VIVE Ultimate Tracker |
| 得意 | 体の陰に隠れても影響を受けない。応答が速い | 絶対的な位置が分かる。ずれが蓄積しない |
| 苦手 | 時間とともに向きがずれていく(ドリフト) | カメラに映らない部分は分からない。遅延が大きい |
IMU式の弱点は、使っているうちに少しずつ向きがずれていく点です。センサーは「どれだけ回ったか」を積み重ねて姿勢を出すため、小さな誤差が溜まっていきます。フルトラをしていると、しばらく遊んだところで腰の向きが実際とずれてくる、というのがこの現象にあたります。
一方のカメラ式は、体がカメラに映っている限りは正しい位置が分かるため、ずれが溜まりません。ただしカメラに映らない部分は推定できず、体の後ろ側に手足を回すと崩れます。
両者の弱点が、ちょうど逆を向いています。ここが今回の話の出発点です。
HaritoraX 2 に何が起きた? カメラを足す拡張キット
2026年5月、Shiftall から HaritoraX 2 向けの拡張キット「Add-on R」が発表され、2026年7月に出荷が始まりました。IMU式の代表格である HaritoraX 2 に、赤外線カメラを足してドリフトを補正するという製品です。
| 価格 | 19,900円(税込) |
| 同梱 | 赤外線カメラ1台、反射プレート6枚、USBケーブル |
| 対応 | HaritoraX 2 / 2 Pro / HaritoraX Wireless(Wireless用は別型番) |
| 必要な環境 | Windows 11、USB 2.0 |
| 設置スペース | 縦置きで 1.5m × 1.5m から |
仕組みが面白いところです。各センサーに反射プレートを貼り、そのプレートがカメラに0.1秒映るだけで、センサーごとのずれ量を算出して補正するとされています。カメラの範囲から外れている間は、従来どおりIMUだけで動きます。
常にカメラに映り続ける必要がない、という設計になっています。カメラ式の弱点である「映らないと分からない」を避けつつ、IMU式の弱点である「ずれが溜まる」だけを解消しよう、という考え方のようです。
ただし制約もあります。反射プレートを付けると、HaritoraX 2 の足首検知機能が使えなくなると案内されています。プレートが距離センサーと干渉するためです。プレート6枚ぶんの重量増も加わります。
本体と合わせると、HaritoraX 2(39,999円)+ Add-on R(19,900円)で 59,899円という計算です。既存ユーザーが後から買い足せる点も、この製品の特徴にあたります。
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他社はどうしている? 混ぜる動きは1社だけではない
両方式を混ぜる流れは、Shiftall だけの動きではありませんでした。
Opsens+(Uni-motion)— 最初からハイブリッド
2025年11月に発売された国産のトラッカーで、ARマーカーをカメラで読み取る光学補正と、9軸IMUを組み合わせた構成です。6センサーの Opsens+ は 54,780円。2026年6月にハイブリッドモードが追加され、7月には管理ソフトが更新されています。
単三電池で約400時間動くとされており、電池持ちが際立っています。ただしこの数値はメーカー側の公表値で、第三者による検証は確認できませんでした。
注意点として、純正の管理ソフトが発売から半年以上ベータのままで、実用上は旧版のソフトが推奨されている状況が続いているという報告があります。
SlimeVR — カメラ型ベースステーションを試作中
IMU式の代表格である SlimeVR も、カメラ型のベースステーションとIMUを組み合わせる方式を試作していると公表しています。
なお SlimeVR の新型トラッカー「Butterfly」は、クラウドファンディングで目標額の7倍を超える資金を集めた製品ですが、出荷が2026年8月末から10月末へ延期されています。理由はケースの金型製造の遅れと説明されています。現時点で出ているレビューはいずれも試作機によるもので、製品版の第三者レビューはまだありません。
VIVE Ultimate Tracker — もともとカメラ式
こちらはトラッカー自身にカメラが付いており、周囲の景色を見て自分の位置を割り出す方式です。外部にベースステーションを置かずに済む構成で、発売時点からカメラを使っています。
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なぜ混ぜると良いのか? 弱点が互いに逆を向いている
各社が同じ方向へ動いている理由は、2つの方式の性質を並べると見えてきます。
| IMU式 | カメラ式 | 混ぜると | |
|---|---|---|---|
| 絶対的な位置 | 分からない(ずれが溜まる) | 分かる | カメラ側が担当 |
| 速い動きへの追従 | 速い | 遅れる | IMU側が担当 |
| 体の陰 | 影響なし | 分からなくなる | IMU側が担当 |
IMU式は「動きの変化」を捉えるのが速い一方、絶対的な向きを知る手段を持ちません。カメラ式は絶対的な位置を知れる一方、遅延があり、映らない部分は分かりません。片方が苦手なことを、もう片方が得意としています。
Add-on R の「0.1秒映るだけでよい」という設計は、この関係をよく表しているように見えます。カメラには常時の追従を求めず、ずれを直す役目だけを与えているわけです。普段の動きはIMUが担当し、時々カメラが答え合わせをする、という分担になっています。
これから買うなら? 2026年7月時点の選択肢
| 選択肢 | 価格 | 状況 |
|---|---|---|
| HaritoraX 2 | 39,999円 | 販売中。後から Add-on R を足せる |
| HaritoraX 2 + Add-on R | 59,899円 | 2026年7月出荷開始 |
| HaritoraX 2 Pro | 53,899円 | 販売中 |
| Opsens+ | 54,780円 | 販売中。管理ソフトに注意点あり |
| PICO Motion Tracker | 11,800円 | PICO製ヘッドセット専用 |
| SlimeVR Butterfly | 約4.2万円〜 | 2026年10月末出荷予定(延期済み) |
いま手に入って、かつ後から拡張できるという点では、HaritoraX 2 に Add-on R を足す構成が扱いやすそうです。まず本体だけを買い、ドリフトが気になったら足す、という順序も取れます。
PICO のヘッドセットを既に持っている場合は、Motion Tracker が11,800円と安く済みます。ただし本体側の PICO 4 Ultra は2026年5月に89,800円から104,900円へ改定されており、これから一式を揃える場合の総額は上がっています。
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まとめ
2026年に入ってからのトラッカーを調べてみると、IMU式とカメラ式を分けて考える前提そのものが薄れてきているようです。IMU専用機だった HaritoraX 2 がカメラを足し、Opsens+ は最初から両方を積み、SlimeVR もカメラ型のベースステーションを試作しています。
理由は単純で、2つの方式の弱点が互いに逆を向いているためだと考えられます。どちらか一方を選ぶより、混ぜたほうが素直に良くなる、という段階に来たのだろうと見ています。
本記事は公開情報を調べてまとめたもので、実機での検証は行っていません。数値はいずれもメーカー公表値です。実際の使い勝手は環境によって変わる点にご注意ください。
カメラだけでフルトラをする方法については、別記事でも扱っています。
参考にしたサイト
記事で紹介した機材
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