フルトラの機器はLinuxでも動く?〜LinuxベースのValve Steam Frameに対して、SlimeVR・HaritoraX・Tundra動作の可能性を調べた

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Valve製の新VR ヘッドセット、Steam Frame がもうすぐ発売になります。このSteam FrameはOSがLinux系ということですが、既存の機器は使えるのでしょうか?

フルトラ(フルボディトラッキング)系の機器、SlimeVR・HaritoraX・Vive Tracker・Tundra Tracker・PICO Motion Tracker・カメラ式の機器について、Linux(SteamOS)で動く見込みがあるか、機器ごとに調べてみました。

Steam Frameについては、別記事でまとめています。

Steam Frame は 2026年9月7日の時点で発売されておらず、当方も実機を持っていません。したがって本記事も全編が調査で、実際に動いたかどうかの確認は含みません。

フルトラの機器は、Linux で動くのか

ここが、調べていていちばん収穫のあったところです。

Steam Frame は SteamOS で動く機械です。そこにフルトラを足そうとすると、トラッカー本体の出来とは別に、その機器のPC側ソフトが Linux で動くかという壁が立ちます。機器ごとに公式サイトと公式リポジトリを当たりました。

機器ごとの対応

機器ベースステーションPC側ソフトの対応OSLinux で公式か有志か
SlimeVR要らない公式が Linux 版を配布(deb / rpm / AppImage / Flathub / AUR)。最新の v21.0.0(2026年9月1日)には ARM64 向けも含まれる動く公式
HaritoraX 2 / 2 Pro要らない公式の動作環境は「Windows10(64bit版のみ) / 11 / SteamVR 2.8.8以降」。Linux の記載なし純正の案内には Linux が無い。SlimeTora 経由なら動くとされる純正は公式/SlimeTora は有志
HaritoraX ワイヤレス(旧型)要らない純正の Haritora Configurator を、Shiftall 自身が「Windows ソフト」と告知同上同上
Vive Tracker 3.0要るSteamVR。その Linux 版を Valve 自身が「development release」と書いている動く報告がある。ペアリング画面が出ない場合は lighthouse_console で代替SteamVR は公式/手順は有志の記録
VIVE Ultimate Tracker要らないVIVE Hub という Windows アプリが要る。HTC 公式が「Windows PC が必要」と明記【推測】Linux では使えないと読める(公式に Linux の記載なし)公式(Windows のみ)
Tundra Tracker要るSteamVR【未確認】公式ドキュメント・SteamVR側のいずれにも、対応バージョン番号やLinuxでの構成例を裏付ける記載を見つけられなかったSteamVR は公式
PICO Motion Tracker要らないPICO Connect。公式の動作環境は Windows 10 22H2 以降。macOS はデスクトップ表示のみで、PCVR は Windows のみ【推測】Linux では使えないと読める公式(Windows のみ)
カメラ式(Mediapipe-VR-Fullbody-Tracking)要らない作者が「Linux 向けの変更は自分で試せていない」と明記。SteamVR ドライバの導入は Windows 用の実行ファイル【未確認】。VRChat の OSC へ出す経路なら SteamVR を介さずに済む有志
VRChat の OSC トラッカー要らないゲーム側の受け口なので、OS に依らない依らない公式(VRChat)

表の右端を「公式か有志か」にしたのには理由があります。SlimeVR のように作っている側が Linux 版を配っているものと、HaritoraX のように有志が別の道を作っているものでは、続くかどうかの見通しが違うためです。後者については、本家の更新に追いつけない場合があると作者自身が注記しています。

VRChat の OSC トラッカーについては、公式ドキュメントに腰・胸・両足・両膝・両肘の最大8個まで、と書かれています。こちらも視線と同じで「NOT plug-and-play」と明記されており、送る側のプログラムが要ります。

SlimeVR を Linux で使う場合、繋ぎ方が3通り案内されています。1つめは SteamVR のドライバとして登録する方法で、Linux でのVRをまとめている資料には「Using SteamVR isn’t recommended due to general unreliability.」という但し書きが添えられていました。2つめは Monado や WiVRn へ直接繋ぐ方法で、こちらは SteamVR のドライバと同等の結果が得られる、と書かれています。3つめが OSC トラッカーで、「This method is only available in VRChat」と VRChat 限定であることが明記され、手数は少ない代わりに「less accurate due to OSC limitations」と精度が落ちる旨も書かれています。単体で使うときの現実的な選択肢は3つめです。

「ARM だから動かない」と言い切れる?

ここで、もうひとつ壁の話をしておきます。Linux で動くかどうかとは別に、命令の形が合うかという問題があります。

Steam Frame の中身は、公式仕様に Architecture: ARM64 と書かれています。手元のデスクトップPCやノートPCの多くは x86-64 という別の形です。Linux 向けに作られたソフトでも、x86-64 用のものは ARM64 の機械でそのままは動きません。Linux 対応と書いてあっても、それだけでは足りない、という段がもう1つあるわけです。

ところが、配布物を見ていて気づいたことがあります。SlimeVR のサーバは、最新が v21.0.0(2026年9月1日)でした。置かれているファイルの一覧に、次のものが並んでいます。

  • SlimeVR-aarch64.AppImage
  • SlimeVR-aarch64.deb
  • SlimeVR-aarch64.rpm

aarch64 は ARM64 の別の呼び方です。SlimeVR には、ARM64 の Linux 向けの配布物が用意されています。顔追跡の Baballonia にも、同じく Baballonia.arm64 という tarball がありました。

ここは、言い方を分けておく必要があります。

言えること【推測】理屈の上では、Steam Frame 単体でも SlimeVR のサーバが動く見込みがあります。ARM64 という壁は、この2つについては すでに越えられています
言えないこと【未確認】Steam Frame で実際に動いたという報告は、ひとつも見つかりませんでした。未発売なので当然です

「見込みがある」と「動いた報告がある」は別の話です。当方が確かめたのは前者だけで、後者は誰も確かめられない段階にあります。SlimeVR のリリースノートの本文にも ARM64 の説明は無く、ファイル名から読んだ話である点も書き添えておきます。

そのうえで言うと、「ARM だから動かない」と一律に言い切ることはできません。配布物にその形が用意されているかどうかで、機器ごとに答えが変わります。ここも表の右端と同じで、作っている側が用意しているか、有志が別に作っているか、という差が効いてきます。

ベースステーション方式を Linux で使うときの条件

Vive Tracker や Tundra Tracker を Linux で使う場合、固有の条件がいくつか付きます。Linux でのVRをまとめている資料から拾いました。

  • WiVRn を使う構成では、設定で「Enable SteamVR tracked devices support」を有効にする。SteamVR のインストールが要る(起動はしなくてよい)
  • Flatpak 版の WiVRn では、SteamVR の lighthouse ドライバを組み合わせられないと明記されている
  • 機器の発見は最初につないだときにしか行われないので、先に全部の電源を入れ、ベースステーションから見える位置に置いておく
  • ペアリングの画面が描画されない場合は、SteamVR に同梱されている lighthouse_console を端末から使う
  • 2つの座標系を重ねる作業には、OpenVR Space Calibrator または Motoc を使う

この一覧を眺めて思ったのは、Windows 専用のソフトが要る機器は、Steam Frame 単体では使えない見込みが高いということです【推測】。VIVE Ultimate Tracker と PICO Motion Tracker は、この形に当てはまります。逆に SlimeVR は、作っている側が Linux 版を配っているぶん、この壁が低くなっています。

予算別にどのトラッカーを選ぶかという話は、VRChatでフルトラしたい〜予算別に、何を買えばいいのか調べたにまとめてあります。

記事で紹介した機材

本文で触れた機材のうち、いま国内で買えるものを並べておきます。

[kimono_kw name="VIVE Ultimate Tracker" kw="VIVE Ultimate Tracker"]

本文で触れた SlimeVR と HaritoraX 2 は、通販サイトの検索では別の商品ばかりが並んでしまうため、ここには並べていません。実際に検索してみると、SlimeVR では紛失防止タグが、HaritoraX では別社のトラッカーや無関係の商品が上位に出てきます。どちらも公式の販売ページから買う形になります(SlimeVR 公式HaritoraX 2 公式)。

参考にしたサイト