UbuntuでもVRを楽しみたい!〜ローカルAI用サーバにしているPCでもVRを楽しめるのかを調べた
ローカルAIを動かすために、デスクトップPCへ Ubuntu を入れて使っています。RTX 3090 を積んだこのPCで言語モデルも画像生成も回しています。Windows も起動できるようにしているのですが、Windowsを立ち上げると、当然ローカルAI用サーバとしての機能は止まってしまいます。
サーバ機能を止めずにVRを楽しむ、Ubuntu のままVRが起動すれば解決します。
そこで、Ubuntu で VR を動かす方法について調べました。
本記事では、Ubuntu で VR を動かすために何が用意されているかと、何が足りないかを調べた内容を記録します。
2026年9月時点の内容です。
何を調べたか〜範囲と情報源
調べたのは、2026年9月時点で Linux から VR ヘッドセットへ映像を送るためのツールと、その公式な位置づけです。Valve の製品ページ、Valve と各プロジェクトの公開リポジトリ、Meta のサポートページ、Linux で VR を動かしている人たちがまとめている資料を参照しました。参照先は記事の末尾に置いています。
以下はすべて、公開されている資料に書かれていることと、他の利用者から報告されている内容をまとめたものです。
出発点になっているパソコンの構成は、別の記事に書いてあります。
ローカルAI環境を丸ごと公開〜Ubuntu+RTX 3090+Ollama+ComfyUIの構築実例
Meta 純正の接続は、Linux でも使えるのか?
MetaのQuest系のHMD をパソコンに繋ぐ方法として、Meta 自身が用意しているものが2つあります。ケーブルで繋ぐ方法と、無線で繋ぐ Air Link です。どちらも Meta のソフトをパソコン側へ入れて使います。
Meta のサポートページには、必要な環境として対応OSの欄があります。そこに書かれているのは Windows 10 と Windows 11 の2つだけです。Linux の記載はありません。開発者向けの文書にも「Link は Windows 10 以降とのみ互換」と書かれています。対応の予定についても、公式からの案内は見当たりませんでした。
7年前に書いた記事では、まだ Oculus Quest だった頃に、Wi-Fi でパソコンへ繋いで据え置き型の代わりにする方法を扱っていました。この記事では Windowsの内容ですが、もしかすると同じことを Ubuntu でやっている人がいれば、使えるかもしれません。
Oculus Quest レビュー: WifiでPCに接続して、Oculus Rift Sの代わりにしてしまう方法
Linux 側に残されている2つの道
Meta の公式の対応がない代わりに、Linux 側からヘッドセットへ映像を送るツールが2つあります。どちらも、パソコンで描いた映像を圧縮して無線で飛ばし、ヘッドセット側で受け取って表示する仕組みです。
RTX 3090
NVIDIA ドライバ
Steam Link〜Valve 自身が配っている道
1つめは Steam Link です。Quest 側に無料のアプリを入れ、パソコン側の SteamVR と繋ぎます。Windows 向けには2023年11月から提供されていました。
Linux については、Valve から正式な案内が出ていません。それでも SteamVR のベータ 2.13.2 以降で Linux のパソコンに繋がったという報告が、Valve の不具合報告の場に複数寄せられているとされています。Meta のストアに載っている Steam Link アプリの対応OS欄は、いまも Windows 10 以降のままです。
放置されているわけではないようです。2026年4月13日に公開された SteamVR ベータ 2.16.3 の変更点には、Linux 向けの修正が3件並んでいます。内訳は次の3つです。1つめは、映像を送るグラフィックボードの選び方。最初に見つかった機器ではなく、最も適したものを選ぶよう変わりました。2つめは、NVIDIA のカードで 240Mbit/秒 の配信を通すための回避策。3つめは、遅延の跳ね上がりを抑えるための送信間隔の調整です。動く報告が積み上がり、Valve 側も手を入れ続けている、という段階だと考えられます。
実際に動いたという報告も、日付入りで出ています。「Steam Link を Linux でまともに扱えるようになった SteamVR の更新以降、公式の Steam Link アプリを使った SteamVR は問題なく動いている」というものです。条件は Quest 3・AMD・2025年11月30日でした。当方は試していません。
注意点として、Flatpak 形式で入れた Steam は対象外だとされています。ディストリビューション純正のパッケージが要ります。
WiVRn〜Linux の側で作られている道
2つめは WiVRn です。Linux のパソコンから Android 系のヘッドセットへ配信するためのソフトで、Monado という土台の上に作られています。Linux で VR を動かしている人たちの資料では、こちらが推奨として挙げられています。
公式の対応表には Quest 1 から Quest Pro まで並んでおり、Quest にも印が付いています。Pico や HTC の機種も入っています。Android で動かない VR 機は対象外です。
最新の版は v26.6.2 で、2026年7月14日に公開されています。2026年6月の v26.6 では、NVIDIA のグラフィックボードで映像を圧縮する際の不具合が直りました。2026年2月の v26.2 では、SolarXR という通信の仕様への対応が入っています。SolarXR は、体に付けるトラッカーがやりとりに使う仕組みです。
導入に要るものとして、公式は Avahi という機器探索の仕組みが動いていること、UDP の 5353 番と、UDP・TCP の 9757 番を通しておくことを挙げています。Steam のゲームを VR で遊ぶ場合は、後述する変換の道具が別に要ります。
SteamVR の Linux 版は、いま どうなっている?
Steam Link を使う場合、パソコン側では SteamVR が動きます。その SteamVR の Linux 版について、Valve は自分の公開リポジトリでこう書いています。「これは開発版である。Linux 向けの SteamVR コンテンツを開発者が作り始められるようにするためのものである。対応するハードウェアは限られる」。
遊ぶ人向けの完成品として置かれているわけではない、という位置づけです。動作環境としては、比較的新しいディストリビューションと最新のグラフィックドライバが挙げられ、例として Ubuntu の20以降と Arch が示されています。
Linux で VR を動かしている人たちの資料でも、SteamVR は Linux でそのまま動くものの、不具合と未実装と性能の問題を抱えていると評されています。それでも先ほどの 2.16.3 のように修正は続いており、止まっているわけではないようです。
設定を1つ足すと変わった、という報告もあります。設定ファイル steamvr.vrsettings の中で enableLinuxVulkanAsync を true にする。そのあとはおおむね遊べる状態になった、というものです。条件は Valve Index・NVIDIA・2025年12月21日でした。コマ落ちを補う仕組みに関わる設定だとされています。当方は試していません。
ALVR が薦められなくなった理由
Quest を Linux に繋ぐ道具として長く名前が挙がっていたのが ALVR です。2026年9月時点では、状況が変わっています。
資料には「ALVR は推奨しない。Linux 対応への注力が続かず、事実上 開発が止まった状態にある」と書かれています。加えて「Linux 版の ALVR は SteamVR 2.16.7 以降では動作しない」とも明記されています。代わりに WiVRn か Steam Link を使うよう案内されています。
SteamVR の不具合報告の場にも、同じ症状が寄せられています。2.16 系へ上げたあとエラー 303 が出る、ヘッドセットが真っ暗になる、といったものです。Arch・Ubuntu・Fedora などから報告が並び、2.15 までは動いていたという記述も添えられています。過去の手順書を頼りに ALVR から入ると、ここで足を取られると考えられます。
古い作法を、新しい作法へ載せ替える道具
もう1つ、Linux で VR を動かすときに名前が出てくるものがあります。ゲームがヘッドセットに話しかけるときの作法が、新旧2種類あるという事情です。古いほうが OpenVR、新しいほうが OpenXR と呼ばれます。SteamVR を使わない構成では、古い作法で書かれたゲームを新しい作法へ載せ替える部品が要ります。
| 名前 | 状態 |
|---|---|
| xrizer | 現行の推奨。ただし作者自身が「まだ未成熟で、多くが壊れている可能性がある」と説明している |
| OpenComposite | 2024年から更新が止まっており、xrizer に置き換わったとされる |
| VapoR | xrizer が苦手なものを、より低い層で扱う第3の選択肢 |
WiVRn の公式説明でも、Steam のゲームを動かすには xrizer か OpenComposite が要ると書かれています。1つ足せば済む話ではあるものの、ここで1段 増えることは知っておいたほうがよさそうです。
機器は見えているのに、話しかける側が無い
ここまでを並べると、Quest 系 と Ubuntu の関係には、ある形が見えてきます。ケーブルで繋げば、パソコンは機器として認識します。壊れているわけでも、接続が悪いわけでもありません。足りないのは、その機器に話しかけるソフトのほうです。
この形は、当ブログで外付けグラフィックボードの失敗を並べたときの分類でいう段階②と同じです。外付けのカードが一覧には出ているのに、ドライバが読み込まれずそこで止まる、というものでした。機器そのものは目に見えていて、噛み合う相手だけがいない状態です。
この形が厄介なのは、原因を機器の側に探してしまう点だと考えられます。ケーブルを替え、端子を替え、再起動を繰り返しても何も変わりません。変えるべきなのは、話しかける側です。Quest 系 の場合、その答えが Steam Link と WiVRn の2つです。
VRChat は Ubuntu で動くのか?
当ブログに VR で来られる方の多くは、VRChat を目当てにされています。この点も調べました。
VRChat は Linux 版が配られておらず、Windows 版を Proton という仕組みの上で動かす形をとります。不正対策のソフトが入っている都合で、以前は起動できたりできなかったりしたと報告されています。この点について資料には「2024年の10月か11月のどこかで、これらの不正対策のエラーはひとりでに解消した」と書かれています。「起動のたびに運任せになっていた競合状態は、もう悩みの種ではない」とも続きます。あわせて「不正対策の失敗で終了を促されたら、通るまで起動し直せばよい」という記述も残っています。
引っかかりやすい点として、次の3つが挙げられています。
- ワールド内の動画プレイヤー。Proton-GE-RTSP という版を使うと、生配信の再生を含めて安定すると案内されています
- 音。PipeWire を使っている環境で、負荷がかかると音が数秒 途切れることがあると報告されています
- 仮想マシンやクラウドPC。不正対策の都合で塞がっており、Windows を仮想マシンで動かして回避する道は使えないとされています
人が多いワールドでは、どれだけのコマ数が出る?
Linux で VR を動かしている人たちは、機種とグラフィックボードとディストリビューションを添えた動作報告を、ゲームごとのデータベースに集めています。VRChat の欄にも日付入りの報告が並んでいました。そこから、条件の近いものを引きます。当方は、いずれも試していません。
| 報告の中身 | 条件 |
|---|---|
| 「WiVRn を使うと 90fps が安定して出て、人が埋まったワールドでも非常に良く動く。ALVR は遅延か再投影のどちらかに問題がある」 | Quest 2 / AMD / 2025-12-25 |
| 「Steam Link を Linux でまともに扱えるようになった SteamVR の更新以降、公式の Steam Link アプリを使った SteamVR は問題なく動いている。WiVRn でも VRChat は問題なく動く」 | Quest 3 / AMD / 2025-11-30 |
「SteamVR では enableLinuxVulkanAsync を true にする必要があり、そのあとはおおむね遊べる状態になった」 | Valve Index / NVIDIA / 2025-12-21 |
| 「Monado と OpenComposite を通した体験は堅実で、Windows と同等か、場面によっては上回る」 | Valve Index / NVIDIA / 2025年2月 |
| 「WiVRn だとゲームが頻繁に落ちたり、システムごと固まったりする。ただし全体としては、はるかに滑らかで鮮明」 | 報告者により評価が割れている例 |
| 「Quest の側で、配信アプリの中でもメニューのボタンが反応するまで非常に長くかかり、ゲーム中も同じで遊べない。そのため WiVRn を試せていない」 | Quest 2 / NVIDIA / 2025-10-09 |
90fps という数字が出ている報告は、Quest 2 でした。ただしグラフィックボードは AMD です。手元は NVIDIA なので、そのまま当てはめられません。同じ Quest 2 と NVIDIA の組み合わせでは、うまくいかなかったという報告のほうが挙がっています。どちらも当方は試していません。
報告を通して繰り返し出てくるのが、コマ落ちを補う仕組みの話です。VRChat はヘッドセットの上限まで描き切れない場面が多く、その差を再投影という仕組みで埋めます。この機能が Linux の SteamVR で長く不調だった、と複数の報告が述べています。「上限に近い値を出せないと、ちらつきや残像が出る」「だから高いコマ数を保つことが非常に重要になる」という書き方です。当方は試していません。
Windows と並べて同じ条件で測った数字は、見つけられませんでした。上に挙げたものは、いずれも利用者が自分の環境について書いた報告です。
NVIDIA のグラフィックボードで気をつけること
ローカルAIのために組んだパソコンは、NVIDIA のカードを積んでいることが多いはずです。手元も RTX 3090 です。この点について、WiVRn の公式説明には正直な但し書きがあります。
「WiVRn は NVIDIA のGPU向けに十分な最適化がされていない。NVIDIA のハードウェアを持つ開発者が少ないためである。既定より高い描画解像度では、動きに対する遅れが著しく悪化する可能性がある」。
推奨されている側の道具に、こう書かれている形です。改善は進んでおり、2026年6月の版では NVIDIA での映像圧縮の不具合が直っています。それでも、解像度を上げるほど不利になる可能性は残っていると読めます。
ドライバの版については、SteamVR 側は「最新のグラフィックドライバ」とだけ書いており、具体的な数字を示していません。第三者の資料には数字を挙げているものがありますが、原文に当たれなかったため、ここでは書かないでおきます。
なお、ローカルAIのほうで2枚のグラフィックボードを同時に使った記録は、別の記事にまとめてあります。
GPU 2枚挿しでローカルAIを使い倒す〜RTX 3090+RTX 3060の同時運用実例
Steam Frame は、この状況をどう変える?
ここまでは、Windows 向けに作られた仕組みを Linux 側から追いかける話でした。2025年11月、Valve が別の方向から答えを出しています。Steam Frame という VR ヘッドセットです。
Valve の製品ページによれば、これは無線のヘッドセットとコントローラの組み合わせで、Steam のライブラリ全体を扱うことを狙ったものです。ヘッドセット単体でも動きます。公式には「Steam Frame はパソコンであり、Snapdragon 8 シリーズのプロセッサで SteamOS が動く」と書かれています。
Ubuntu の話に関わるのは、どこ?
仕様は細かく公表されていますが、この記事に関わるのは4点だけです。
- OS が SteamOS 3 で、これは Arch Linux を土台にしたものです。ヘッドセットの中身が Linux で動きます
- プロセッサは Snapdragon 8 Gen 3 で、命令の形は ARM です。パソコン向けの x86 とは別の形をしています
- パソコンに繋がなくても、ヘッドセット単体で遊べる作りです
- 配信元として、公式が Steam Deck と Steam Machine を挙げています。この2つも SteamOS で動きます
画面や重さといった細かい仕様と、他のヘッドセットとの比べ方は、別の記事で扱っています。
特徴として挙げられているのが、視線を追って配信の精度を割り振る仕組みです。日本語の公式ページでは「中心窩ストリーミング」と呼ばれています。「視線が向けられている部分の詳細を最適化する新しい機能で、通常、画質と実効帯域幅が10倍以上向上します」と説明されています。仕組みについては「低遅延のアイトラッキングデータを使用して、最高品質のピクセルをユーザーが見ている場所だけに提供する」と書かれています。そして「これらの処理はすべてユーザーに気付かれることなく行われ、Steamライブラリの全コンテンツで機能します」とも書かれています。VR向けに作られた作品だけの話ではない、ということです。
無線についても、日本語ページに踏み込んだ記述がありました。「無線の1つはオーディオとビジュアルのストリーミング専用で、もう1つはWi-Fiに接続します。2つの専用リンクがあり、帯域幅の競合はありません」。配信のための道と、ふだんの通信の道を、最初から分けてある形です。
Quest 系 を家の Wi-Fi で繋ぐ場合、映像の配信も、ふだんの通信も、同じ電波を通ります。WiVRn の公式の案内でも、映像が乱れたり遅れたりするときの対処として「USB で繋ぐなら Wi-Fi を切ること」「USB で繋ぐか、もっと良い Wi-Fi ルータを使うこと」が挙げられています。Steam Frame は、その分け方を最初から機械の側で持っている、ということです。
Windows のゲームは x86 という命令の形で作られており、Steam Frame のプロセッサは ARM という別の形です。この差を埋める仕組みについて、報道では FEX という名前が伝えられています。公式の製品ページには、その記載が見当たりませんでした。
発売日と価格は?
ここが、いちばん知りたいところだと思います。2026年9月7日に公式の製品ページを確認した範囲では、次のとおりでした。
- 発売日の記載はありません。時期に触れているのは「Steam のハードウェア一族は2026年前半に正式に広がる」という1文だけで、発表時の文面が残っているものと見られます
- 価格の記載もありません
- 購入のボタンもありません。置かれているのはウィッシュリストへの登録だけで、まだ買えない状態だと読めます
- 日本については「日本・韓国・台湾・香港では KOMODO を通じて提供される」と明記されています。日本での価格と発売日は公表されていません
発売日と価格は【未確認】としておきます。報道では想定価格の見込みが出ていますが、Valve が数字を出したものではありません。
Linux のパソコンから配信できるのか?
Ubuntu を使っている側から見ると、ここが本題です。公式の製品ページには、配信元としてこう書かれています。「あなたのパソコン、ラップトップ、Steam Deck、Steam Machine から配信する」。
ここに挙がっている Steam Deck と Steam Machine は、どちらも SteamOS で動きます。SteamOS は Arch Linux を土台にしたものです。Linux のパソコンから VR を配信することは、Valve が想定している範囲に入っていると考えられます【推測】。
ただし、これは「手元の Ubuntu で動く」という保証ではありません。公式が挙げているのは Valve 自身の SteamOS 機です。一般のディストリビューションでどう振る舞うかは、発売後に確かめるほかありません。
Quest 系 だけでは届かないこと
当ブログでよく読まれている VR の記事は、全身の動きを取り込むフルトラッキングと、表情を取り込むフェイストラッキングを扱ったものです。手元に Quest 系 がある状態で、この2つに手が届くのかも調べました。
結果としては、どちらも Quest 系 単体では成立しません。理由が別々にあります。
| やりたいこと | Quest 系 単体で | 足りないもの |
|---|---|---|
| フルトラッキング | できない | 体に付けるトラッカーが要ります。Linux 側では、WiVRn が2026年2月の版で SolarXR に対応しています |
| フェイストラッキング | Proのみ可 | 顔や目を追う機構が Quest 系 では、 Quest Pro のみ載っています |
手元にはヘッドセットしか残っておらず、トラッカーの類は手放してあります。Ubuntu で VR を動かす道が見つかったとしても、その先にあるフルトラッキングとフェイストラッキングは、機材を買い直すところからやり直しです。ここは正直に書いておきます。
では、買い直したとして Linux で動くのでしょうか。そこも調べました。
トラッカー側は、Linux でどう扱われている?
全身のトラッカーとして名前の挙がる SlimeVR は、Linux 向けの配布物を公式に用意しています。Ubuntu や Debian 向けの deb、Fedora 向けの rpm、どの環境でも動く AppImage、Flathub、Arch のユーザーリポジトリが並んでいます。この点は Quest とは事情が違います。
繋ぎ方には3通りあり、Linux で VR を動かしている人たちの資料には、それぞれ評価が添えられています。
| 繋ぎ方 | 資料での扱い |
|---|---|
| SteamVR のドライバ経由 | 「全般的な不安定さのため、SteamVR を使うことは推奨しない」 |
| VRChat の OSC 経由 | 「この方法は VRChat でしか使えない」「いまのところ OSC の制約で精度が落ちる」 |
| Monado / WiVRn 経由 | 推奨されている側。「純正の SteamVR ドライバと同等の結果が得られる」とされる |
推奨されている繋ぎ方が WiVRn 経由だという点は、先ほど配信の道具として WiVRn が挙がっていたことと噛み合います。Linux でフルトラッキングまで見据えるなら、入口の選び方がそのまま先へ効いてくると考えられます。
動いたという報告も出ています。「SlimeVR は SolarXR を組み込んだ枝を Envision で構築すればおおむね動き、OSC を使う方法でもよく動く」というものが1件(Valve Index・NVIDIA・2025年2月)。ほかに「Tundra のトラッカーはどちらでも問題なく動く」、SteamVR 側で「フルボディトラッキングは動く」というものが並んでいます。当方は、いずれも試していません。
表情の取り込みは、Linux で動くのか?
表情を VRChat のアバターへ渡す側の道具として、VRCFaceTracking があります。ここは、はっきりしない状態です。
Linux 対応を求める要望は 2026年8月13日に「完了」として閉じられています。作者は「Steam に実験的な avalonia ブランチを置いた」「いずれ UI の土台を WinUI3 から移し、Avalonia を目標にする」と書いています。Avalonia は Linux でも動く土台です。
一方で、2026年9月7日時点の Steam の商品情報を見ると、対応プラットフォームは Windows だけです。動作環境の欄にも Windows 10 と Windows 11 しか並んでいません。「Windows 専用」とも「Linux で動く」とも書けない、途中の状態にあります。表情の取り込みまでやりたい場合、ここは発表を待つところだと考えられます。
フルトラッキングとフェイストラッキングが 2026年時点でどこまで来ているかは、別の記事にまとめてあります。
【2026年版】フルトラ・フェイトラ最前線〜VRの身体トラッキングはここまで来た
4つの道の比較
Quest 系 を Ubuntu のパソコンへ繋ぐ道を並べると、次の4つです。
| 道 | Linux で使えるか | 要るもの | 分かっている制約 |
|---|---|---|---|
| Meta Air Link / Link ケーブル | 使えない | — | Meta 公式が対応OSを Windows 10・11 のみと明記 |
| Steam Link | 動いたという報告がある | SteamVR(純正パッケージ)/ Quest 側のアプリ | Flatpak 版の Steam は対象外だとされる。Valve の正式な案内は見当たらない |
| WiVRn | 推奨されている | wivrn-server + xrizer / Avahi / ポート開放 | NVIDIA 向けの最適化が進んでいないと公式が明記している |
| ALVR | 薦められていない | — | SteamVR 2.16.7 以降では動かないとされる。開発が事実上 止まっているとの評 |
2026年9月時点で最初に試す先を1つ選ぶなら、WiVRn になりそうです。推奨されている側であり、Quest 系 が公式の対応表に入っており、更新も続いています。NVIDIA の但し書きが気になる場合は、Steam Link を先に試す順序も成り立つと考えられます。
今回 確かめていないこと
- WiVRn と Steam Link が、手元の構成で実際に繋がるかどうか。どちらも導入していません
- RTX 3090 と有線1Gbps という条件での映像の遅れ。数値は測っていません
- VRChat が人の多いワールドでどれだけのコマ数を出すか。利用者の報告は本文に載せましたが、当方の構成では試していません。Windows と並べて同じ条件で測った数字も見つけられませんでした
- NVIDIA のドライバに必要な版。SteamVR 側は数字を示しておらず、数字を挙げている第三者の資料は取得できませんでした
- 設定
enableLinuxVulkanAsyncの効き方。設定して変わったという報告は在りますが、当方は設定していません - Steam Frame の発売日・価格・日本での価格。公式に記載がありません
- Steam Frame 公式ページ(日本語)
https://store.steampowered.com/sale/steamframe?l=japanese - Steam Frame を一般の Ubuntu から使えるかどうか。公式が挙げているのは Valve 自身の SteamOS 機です
- SlimeVR を3通りの方法で繋いだとき、精度がどれだけ違うか。トラッカーを持っていないため、資料の記述をそのまま載せています
- VRCFaceTracking の実験的な版が Linux でどこまで動くか。試していません
まとめ
ローカルAIのために Ubuntu を入れたパソコンで VR をやりたくなった場合、Windows へ戻さずに済む道は用意されています。ただし Meta 純正の入口は閉じており、Steam Link か WiVRn のどちらかを自分で選ぶところから始まります。2026年9月時点では WiVRn が推奨されている側で、Quest 系 も公式の対応表に入っています。長く名前の挙がっていた ALVR は、SteamVR 2.16.7 以降で動かないとされており、いま最初に選ぶ先ではなくなったようです。NVIDIA のカードを使っている場合、推奨されている WiVRn の側に最適化が追いついていないという但し書きが付きます。利用者の投稿にも、Quest 2 での報告が2件 並んでいます。AMD のカードでは90fpsが安定したというもの、NVIDIA のカードではボタンの反応が遅くて遊べなかったというものです。当方は試していません。手元のカードが NVIDIA なら、そこは覚悟しておいたほうがよさそうです。
Valve の Steam Frame は、この不便さを別の方向から畳もうとしているように見えます。ヘッドセット自体が SteamOS で動くパソコンであり、配信元として Steam Deck と Steam Machine が公式に挙げられています。発売日も価格も、まだ公表されていません。
ローカルAIのために Linux を選んだ人にとって、VR の側で困る場面は「機器が見えているのに、話しかける側が無い」という形で現れます。外付けのグラフィックボードが認識されるのにドライバが載らない、という場面と同じ形です。手元のパソコンでどこまで動くのかを1つずつ確かめていく。この作業は、AI でも VR でも同じではないでしょうか。
なお、その出発点になったパソコンの構成を書いた記事はこちらです。
参考にしたサイト
- Valve「Steam Frame」製品ページ(仕様と公式の説明) https://store.steampowered.com/hardware/steamframe
- Valve「SteamVR for Linux」(開発版である旨と動作環境) https://github.com/ValveSoftware/SteamVR-for-Linux
- WiVRn(対応機種の表と NVIDIA についての但し書き) https://github.com/WiVRn/WiVRn
- WiVRn のリリース一覧(版と日付) https://github.com/WiVRn/WiVRn/releases
- Linux VR Adventures Wiki「ALVR」 https://vronlinux.org/docs/steamvr/alvr/
- Linux VR Adventures Wiki「VR Gear & GPUs」 https://vronlinux.org/docs/hardware/
- Linux VR Adventures Wiki「VRChat」 https://vronlinux.org/docs/vrchat/
- 同「Easy Anti-Cheat」(不正対策が解消した時期) https://vronlinux.org/docs/vrchat/eac/
- 同「Performance」(設定の目安) https://vronlinux.org/docs/vrchat/performance/
- VR on Linux の動作報告データベース(VRChat の欄・日付と機材付きの利用者報告) https://db.vronlinux.org/games/438100.html
- Linux VR Adventures Wiki「OpenComposite」 https://vronlinux.org/docs/fossvr/opencomposite/
- xrizer https://github.com/Supreeeme/xrizer
- Linux VR Adventures Wiki「SlimeVR」 https://vronlinux.org/docs/hardware/trackers/slimevr/
- VRCFaceTracking の Linux 対応要望(issue 197) https://github.com/benaclejames/VRCFaceTracking/issues/197
- Meta「Windows PC requirements for Meta Horizon Link」 https://www.meta.com/help/quest/140991407990979/
- GamingOnLinux「SteamVR Beta 2.16.3 brings Linux fixes for VRLink」 https://www.gamingonlinux.com/2026/04/steamvr-beta-2-16-3-brings-linux-fixes-for-vrlink/
- GamingOnLinux「Steam Link VR for Meta Quest on Linux now appears to work」 https://www.gamingonlinux.com/2025/09/steam-link-vr-for-meta-quest-on-linux-now-appears-to-work-in-the-latest-updates/







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