ローカルLLM モデルの選び方 〜十数個を実際に動かして分かった5つの軸|チューニング連載 第1話
ローカルAIを始めてまず迷ったのが、どのモデルを選べばいいのか、という点でした。生成AI用アプリOllamaのモデル一覧を見ると、名前もサイズも違うモデルが何百と並んでいて、どれが自分のパソコンで動くのか、どれを使えば良いのか分かりません。
そこで手元のパソコンで十数個のモデルを実際に動かし、速さと賢さを測ってみました。本記事では、そこから見えてきた「モデルを選ぶときに見る軸」を、実測の数字とあわせて記録します。名前の並びを眺めるかわりに、何を見れば自分の一台に合うモデルを選べるのでしょうか?
ここで言う「モデル」とは、AIの本体になるファイルのことです。ChatGPT のような賢さの部分を、そのままファイルにして自分のパソコンに置くもの、と考えるとイメージしやすいと思います。
測定したのは2026年7月です。モデルの顔ぶれは入れ替わりが速いため、数字はその時点のものとして読んでください。
使用した機器の概要
測定に使ったのは、次の2台です。ふだん使いのデスクトップPCと、メモリーを多く積んだミニPCの2種類で、収まるモデルの大きさが違います。
| 項目 | デスクトップPC | ミニPC(EVO-X2) |
|---|---|---|
| CPU | Ryzen 9 3950X | Ryzen AI Max+ 395 |
| メモリー | 64GB | 128GB(GPUと共有) |
| GPU | RTX 3090(24GB)、RTX 3060(12GB) | 内蔵 Radeon 8060S |
| OS | Ubuntu | Ubuntu |
| 実行ソフト | Ollama | |
デスクトップPCの RTX 3090 は、GPU本体に 24GB の専用メモリー(VRAM)を積んだ製品です。ミニPCの EVO-X2 は、GPU専用のメモリーを持たない代わりに、128GB のメモリーをCPUとGPUで分け合う仕組みで、大きなモデルを載せるのに向いています。
モデル選びで見るのは、この5つ
十数個を動かしてみて、選ぶときに効いてくるのは次の5つに整理できました。上から順に見ていくと、自分のパソコンに合う一台に絞り込めます。
以下、ひとつずつ実測の数字で見ていきます。
軸① 用途で決める(賢さは大きさに比例しない)
大きいモデルほど賢い、と思われがちですが、実際に測ってみると、そう単純ではありませんでした。
12個のモデルに同じテストを受けさせ、「考える力」(推論8問)と「プログラムを書く力」(コーディング7課題の正答率)の2つで採点しました。採点はテスト結果だけで決まるため、どのパソコンで動かしても同じ結果が出ます。
| モデル | 本体サイズ | 考える力 | プログラム |
|---|---|---|---|
| Ornith-1.0-35B | 21GB | 7/8 | 7/7 |
| qwen3.6:35b-a3b | 約21GB | 7/8 | 7/7 |
| gemma4:31b | 約19GB | 7/8 | 7/7 |
| qwen3:14b | 9.3GB | 7/8 | 6/7 |
| Ornith-1.0-9B | 5.6GB | 7/8 | 6/7 |
| phi4-mini | 2.5GB | 7/8 | 4/7 |
| qwen3:8b | 5.2GB | 5/8 | 6/7 |
目を引いたのは phi4-mini です。本体 2.5GB という最小クラスながら、考える力では 7/8 と、20GB 級の大きなモデルに並びました。一方でプログラムを書く力は 4/7 にとどまり、ここは大きなモデルに差をつけられています。
「調べものや文章の相談が中心」なら小さな phi4-mini でも十分で、「プログラムを書かせたい」なら Ornith-35B や gemma4:31b といった大きなモデルが要る、という選び分けです。用途を先に決めると、必要以上に大きなモデルを選ばずに済みます。
軸② サイズとVRAM(ここが収まるかどうかが最重要)
モデルは、GPU のメモリーである VRAM に丸ごと載ると本来の速さで動きます。載り切らずに一部があふれると、あふれた分をCPU側のメモリーで肩代わりすることになり、速度が大きく落ちます。
これがどのくらい効くのかを、同じ gemma4:31b で見てみます。デスクトップPCの RTX 3090(24GB)に対し、圧縮の強さ(後述する量子化)を変えて載せた結果です。
| gemma4:31b の版 | VRAM使用 | 24GBに収まるか | 速度 |
|---|---|---|---|
| Q4(標準的な圧縮) | 20.3GB | 収まる | 24.82 tok/s |
| QAT(品質重視の圧縮) | 19.2GB | 収まる | 36.95 tok/s |
| Q8(ほぼ圧縮しない) | 22.8GB | あふれる | 7.95 tok/s |
Q8 版は数字の上では 22.8GB で、24GB に収まりそうに見えます。ところが実際には推論の途中で使う作業用メモリーが加わってあふれ、速度が 7.95 tok/s まで落ちました。収まった Q4 版の 24.82 tok/s と比べると、3分の1以下です。「サイズの数字が VRAM より少し小さい」くらいでは、あふれると考えておいたほうが安全なようです。
大きなモデルはメモリーの多いパソコンが向く
逆に、メモリーを多く積んだパソコンなら、大きなモデルもあふれずに動きます。120B(1200億パラメータ)クラスの gpt-oss:120b で比べると、違いがはっきり出ました。
| 動かした機器 | 収まるか | 速度 |
|---|---|---|
| デスクトップPC(RTX 3090・24GB) | あふれる | 17.33 tok/s |
| ミニPC EVO-X2(128GB共有) | 収まる | 33.21 tok/s |
同じモデルでも、収まるかどうかで速度が倍近く変わりました。「どのモデルを選ぶか」は、自分のGPUのVRAM(またはメモリー)に収まる範囲から選ぶ、というのが出発点です。
実例:100MiB足りずに載らなかった
2026年8月14日に公開された Qwen3.8-27B で、この「収まるかどうか」がはっきり出ました。密なモデルで、4ビットの標準的な刻み(Q4_K_M)にすると約15.3GiBです。数字だけ見れば、16GBのグラフィックボードに収まりそうに思えます。
ところが、当方が RX 9060 XT(16GB)で試したところ載りませんでした。必要なのが 16,397MiB、実際に使えるのが 16,304MiB。差は約100MiB です。VRAMは全部が使えるわけではなく、画面の表示などに少し取られます。カタログの容量と、実際に置ける量は違います。
| 刻み | 16GBのGPUで | 読む速さ / 書く速さ |
|---|---|---|
| Q2_K_XL | 載る | 596.33 / 24.54 tok/s |
| Q4_K_S | 載る | 562.34 / 17.48 tok/s |
| Q4_K_M 以上 | 載らない | — |
もうひとつ、このモデルは密なモデルです。次の軸④で書くとおり、同じくらいの大きさでも MoE のモデルより遅くなります。「27B」という数字だけでは、速いか遅いかは決まりません。
軸③ 量子化でサイズを調整する
量子化とは、モデルを圧縮してファイルを小さくする技術です。写真を JPEG で保存するときに画質を少し落として容量を減らすのと似ていて、賢さをわずかに犠牲にする代わりに、VRAM に収まりやすくなります。
Ollama でよく見かけるのは次の3種類です。
- Q4 … 標準的な圧縮。サイズと賢さのバランスが良く、まずこれを選べば失敗が少ない
- Q8 … ほとんど圧縮しない版。賢さは高いがサイズが約2倍で、あふれやすい
- QAT … 圧縮を前提に学習し直した版。小さいまま品質を保ちやすい
さきほどの gemma4:31b の表がそのまま量子化の効きを示しています。Q8 は賢さでは有利でも、サイズが大きく VRAM をあふれさせて逆に遅くなりました。QAT は 19.2GB と小さく収まったうえに 36.95 tok/s と最も速く、圧縮版のなかでは扱いやすい選択でした。
迷ったら Q4 を選び、VRAM に余裕があれば QAT を探す、という順で問題ないと思います。
軸④ MoE なら、大きくても速い
モデルには大きく2つの作りがあります。ひとつは dense(デンス)と呼ばれる、全体を毎回使う作り。もうひとつが MoE(Mixture of Experts、専門家の集まり)で、内部にたくさんの「専門家」を持ち、質問ごとに一部だけを使う作りです。
MoE は、モデル全体は大きくても、実際に動くのは一部だけなので、サイズのわりに速く動きます。ほぼ同じ賢さの2モデルを EVO-X2 で比べると、差がはっきり出ました。
| モデル | 作り | 毎回使う量 | 賢さ | 速度 |
|---|---|---|---|---|
| qwen3.6:35b-a3b | MoE | 3B分だけ | 7/8・7/7 | 55.3 tok/s |
| gemma4:31b | dense | 31B全部 | 7/8・7/7 | 10.11 tok/s |
賢さはどちらも 7/8・7/7 で並んでいるのに、速度は MoE の qwen3.6:35b-a3b が 55.3 tok/s、dense の gemma4:31b が 10.11 tok/s と、5倍以上の開きになりました。名前に「a3b」「a4b」のように「a+数字」が付いていれば MoE で、毎回使う量がその数字ぶん、という見方ができます。速さと賢さを両立したいなら、MoE は有力な選択肢です。
同じ EVO-X2 で、算術96問(答える前に考える機能=思考を止めた条件・各問1回)も追加で測りました。正答率は gemma4:31b が 0.854(82/96問)、qwen3.6:35b-a3b が 0.792(76/96問)です。この差は1回測定の6問ぶんで、順位を付けられる水準ではありません。思考を許した条件は、30分の上限内に終わらず測れていません。上の 7/8・7/7 の試験とは別のものです。
qwen3.6:35b-a3b(MoE) | 55.3
gemma4:31b(dense) | 10.11
軸⑤ 速度はGPUの帯域で決まる
同じモデルでも、動かすGPUによって速度は変わります。文章を生成する処理は、メモリーとの間でデータをやり取りする太さ(メモリー帯域)で頭打ちになるためで、帯域の広いGPUほど速くなります。
同じモデルを3種類のGPUで測った結果です。
| モデル | 本体サイズ | RTX 3090 | RTX 3060 |
|---|---|---|---|
| phi4-mini | 2.5GB | 173 | 97 |
| qwen3:8b | 5.2GB | 128 | 61 |
| qwen3:14b | 9.3GB | 77 | 35 |
上位の RTX 3090 と普及帯の RTX 3060 では、同じモデルでおおむね2倍近い差が出ました。ここで大事なのは、速度の順番がどのモデルでも変わらない点です。GPU を選ぶ段階で速度のおおよその上限が決まり、そのなかでモデルのサイズを選ぶと生成速度が決まる、という関係になっています。
まとめ:この順番で絞ると迷わない
十数個を動かしてみて、モデル選びは次の順で考えると迷いにくいと分かりました。
速度そのものは GPU を替えないと大きくは変わりませんが、この順で選べば、手持ちのパソコンで一番快適に動く一台にたどり着けます。
一番大きいモデルを入れれば良い、という話ではありませんでした。自分のパソコンに収まる一台を探すうちに、VRAMや量子化といった言葉が実感を伴って分かってきます。
次回は、選んだモデルを同じままで、設定を詰めてもう少し速く動かす小技を実測で見ていきます。
この記事で確かめていないこと
測ったのは手元の機材で動かした範囲です。同じモデルでも、量子化の種類や文脈の長さを変えれば数字は動きます。賢さの比較は当窓が用意した課題に対するもので、別の課題では順位が変わる可能性があります。ここに出ていないモデルについては、何も言えません。
あわせて読みたい
検証に使用した機材
今回の測定に使った機材です。
使用したデスクトップGPU(上位):NVIDIA GeForce RTX 3090
使用したデスクトップGPU(普及帯):NVIDIA GeForce RTX 3060
大きなモデルの検証に使ったミニPC:GMKtec EVO-X2
ローカルAIをこれから始める方はこちらです。
量子化の違いを実測で比べた記事はこちらです。