メモリが高い〜SSDで代用できるのか、待ち時間と寿命を調べた

2026年8月29日

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2026年8月19日

メモリの値段が、底値から3〜6倍に上がっています。

ローカルAIは、メモリが多いほど大きなモデルを動かせます。ところが買い足そうとすると、DDR5の64GBが$600を超えている。ここで、こう考えました。

SSDをメモリの代わりにできないのか。1TBのSSDなら数万円です。何枚か束ねれば速くなるはずだし、容量あたりの値段はメモリの何十分の1です。

本当にそれで足りるのでしょうか。調べてみました。

この記事は公開情報を調べてまとめたものです。実際に組んで試した結果ではありません(確認日 2026年8月19日)。

SSDの寿命と束ね方については、前回の記事で調べています。

何を調べたか〜範囲と情報源

先に範囲を書いておきます。

  • 調べたこと: メモリとNVMeのSSDで、呼んでから返ってくるまでの時間がどれだけ違うか。メモリ代わりに使ったときSSDの寿命がどうなるか。そして代わりの手
  • 情報源: NVMeの待ち時間の資料、フラッシュでメモリを拡張したときの寿命を実測した研究論文、SSDメーカーの耐久性の資料(いずれも記事末にリンク)
  • 確認日: 2026年8月19日
  • 手元の数字: 後述のGPUでの実測のみ(2026年8月19日に測定)

SSDをメモリの代わりにする方法は、昔からある

メモリが足りないとき、ディスクを一時的な置き場として使う仕組みは、どのOSにも入っています。

OS呼び方状態
Linuxスワップ最初から使えます
Windowsページファイル最初から有効です
macOSスワップ自動で管理されます

特別な準備は要りません。すでに動いています。SSDを足して、その領域を大きく取れば、見かけ上のメモリは増やせます。

問題は、それで何が起きるかです。

メモリとSSDは、待ち時間が3桁ちがう

調べていて、いちばんはっきりしていたのがここでした。

呼び出してから返ってくるまでの時間
メモリ10〜100ナノ秒
NVMeのSSD20〜70マイクロ秒
ナノ秒とマイクロ秒。単位が3桁違います。速いSSDでも、メモリの数百倍から千倍の時間がかかります。

ここで大事なのは、「1秒あたり何GB運べるか」ではなく「呼んでから返ってくるまで何秒か」のほうだという点です。

文章を生成するとき、AIは1文字ごとにモデル全体を通ります。そのたびに待たされます。まとめて運べる量が多くても、1回ごとの待ち時間は縮みません。

SSDをRAIDで束ねても、待ち時間は縮まない

ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。

SSDを4枚並べれば、1秒あたりに運べる量は増えます。ところが「呼んでから返ってくるまでの時間」は、1枚のときとほとんど変わりません。

4人がかりで荷物を運べば量は4倍ですが、1個の荷物が届くまでの時間は変わらないのと同じです。

調べた範囲では、RAIDで待ち時間が改善するかどうかについて意見が分かれていました。「体感で速く感じる」という報告もあれば、「RAIDの処理が挟まるぶん、むしろ遅くなる」という指摘もあります。どちらとも言い切れる材料は見つかりませんでした。

ただ、どちらだとしても3桁の差は埋まりません。この待ち時間の差が、結論を変えるところです。

メモリ代わりに使うと、SSDの寿命を削り続ける

もうひとつが寿命です。

前回の記事に書いたとおり、SSDは書き換えできる回数が決まっています。いまの主流であるTLCで1,000回程度、安い大容量のQLCはさらに少ない。

そして調べた範囲では、普通の使い方ならこれを使い切ることはまず起こりません。寿命が問題になるのは、大量に書き込み続ける使い方をしたときです。

メモリの代わりに使うことが、まさにそれです
メモリの代わりに使うということは、絶え間なく書き込み続けるということです。普通の使い方では届かない領域へ、毎日入り続ける形です。

さらに、SSDは1GB書いたつもりでも実際には3〜4GB書き込まれることがあります。中で領域を整理し直すためで、書き込み増幅と呼ばれます。削られる速さは、見かけより速い。

実際に測った研究もありました。頑丈さで知られる特殊なSSDを使い、日常的な作業をさせた場合で、寿命は2.4〜4.5年という数字が出ています。

この2.4〜4.5年という数字は、桁違いに頑丈な部類のSSDでの話です。安いQLCのSSDで同じことをすれば、もっと短くなると考えるのが自然です。

手元のGPUでも、容量を超えた瞬間に同じことが起きた

この記事は調べたものが中心ですが、関係する数字が手元にあります。

どんな構成で測ったかを先に書いておきます。

測った機械ミニPC(Ubuntu)。グラフィックボードは外付けで、メモリは16GB
測ったもの文章を読ませる速さ(512文字ぶんを処理する速度)
振った条件モデルの大きさだけ。8.6GB(16GBに収まる)と17.3GB(1.3GB超える)
そろえたもの同じ機械・同じ設定・同じ日。グラフィックボード1枚だけで動かしています

グラフィックボードのメモリに収まらないモデルを動かすと、足りない分をパソコン側のメモリへ逃がします。これは「メモリの代わりに別の場所を使う」という点で、いま話していることと同じ構図です。

16GBのボードに載せたモデル読ませる速さ内蔵GPUと比べて
8.6GB(収まる1,1721.60倍
17.3GB(1.3GB超える1450.12倍

1.3GB超えただけで、13分の1に落ちています。「収まらない分を別の場所に逃がす」と、これだけの差が出ます。

ここで逃がした先はパソコンのメモリです。SSDはメモリよりさらに桁で遅い。そこへ逃がしたらどうなるかは、想像がつきます。

この数字について、正直に書いておきます
この2つは別のモデルです(8.6GBと17.3GBで、作りも規模も違います)。同じモデルで大きさだけを変えた比較ではありません。

各行は同じモデルを2つのGPUで比べているので、行ごとの倍率は正しい読み方です。ただし「1.60倍から0.12倍へ落ちる曲線」と読むのは行き過ぎです。

ここで言えるのは、収まっていれば速く、はみ出すと大きく落ちるということまでです。

では、メモリが足りないときはどうするのか

「勧めません」で終わると困るので、代わりの手を書きます。

1. モデルの選び方で解決することが多い

手元で測っていて、いちばん驚いたのがこれでした。

モデル大きさ書く速さ
minimax-m2.7101GB29.1
llama3.3:70b39.6GB5.3

101GBのモデルが、39.6GBのモデルより5倍以上速い。大きさで決まっていません。

理由は、モデルの作りが違うからです。101GBのほうは全体は大きいが、1文字を作るときに使う部分は小さいという構造をしています。MoEと呼ばれる作りで、この形のモデルなら、大きくても実用の速さで動きます。

メモリを増やす前に、動かすモデルを見直したほうが早い場合があります。

2. メモリを積んだ完成品を買う

いまは、メモリを単体で買うより、最初からメモリを積んだミニPCを買うほうが安い場面があります。メーカーが値上がり前に仕入れた在庫を使っているためです。

ただし条件があります。CPUとグラフィックでメモリを丸ごと共有する作りでないと、大きなモデルは載りません。この見きわめを外すと、安く買っても目的に届きません。

メモリを多く積んだ完成品の例です。本体にまとめて積んであるので、あとからメモリを買い足す必要がありません。いま単体のメモリが高いぶん、完成品のほうが結果的に安く付く場面があります。

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3. モデルの置き場としてなら、SSDは正しい使い道です

ここまで「メモリの代わりにするな」と書いてきましたが、モデルを置いておく場所としてなら、SSDは本来の使い道です。

読み込むときに一度だけ通る使い方なら、書き込みが続かないので寿命も削りません。手元でも、動かすモデルはSSDに置いています。

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4. 必要なときだけ借りる

大きいモデルを月に数回しか触らないなら、時間で借りたほうが安く済みます。買ってしまうと、使わない時間も電気代がかかります。

必要なときだけ借りる場合の例です。時間あたりで払う形なので、たまに大きなモデルを触るだけなら、機材を買うより安く済むことがあります。

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組んで試してはいない〜この記事で言えないこと

この記事は公開情報を調べてまとめたもので、実際にSSDをメモリの代わりに組んで試したわけではありません。

  • 「寿命2.4〜4.5年」は、頑丈さで知られる特殊なSSDで、日常的な作業をさせた場合の研究値です。安いSSDでローカルAIを動かした場合の数字ではありません
  • 比較に使った2つのモデルは別物です。同じモデルで大きさだけを変えた比較ではありません
  • 書き込みが実際3〜4倍に膨らむという値も、使い方や製品で変わります

それでも「勧めません」と書いたのは、待ち時間が3桁ちがうという一点が、製品差で埋まる幅ではないからです。この一点は、組んで試さなくても言えます。

まとめ:手段としてはありますが、勧めません

  • やり方そのものは、どのOSにも最初から入っています。SSDを足して領域を大きく取れば、見かけ上のメモリは増やせます
  • ただし呼んでから返ってくるまでの時間が、メモリとSSDで3桁違います(ナノ秒とマイクロ秒)
  • RAIDで束ねても、そこは変わりません。運べる量は増えますが、1回ごとの待ち時間は縮みません
  • 寿命を削り続ける使い方です。頑丈な部類のSSDでも2.4〜4.5年という研究がありました
  • 代わりに、モデルの選び方・メモリ入りの完成品・借りるという手があります

調べてみて、「安く済ませる方法」を探していたつもりが、いちばん高くつく道を選びかけていたと分かりました。SSDは消耗品です。数万円のSSDを数年で使い切るなら、その間に払う額はメモリの値段に近づいていきます。

もし試すなら、壊れてもよいSSDで、しばらく我慢する用途に限るのがよさそうです。動かないよりはまし、という場面はあります。ただ、それを常用の構成にはしないほうがいいというのが、調べたうえでの私の判断です。

参考にしたサイト(SSDの寿命とメモリの待ち時間)

NVMe Latency: Typical Numbers and What Drives Them(simplyblock)
NVMeの待ち時間が20〜70マイクロ秒という数字
Extending Memory Capacity in Consumer Devices with Emerging Non-Volatile Memory(arXiv)
メモリの代わりに使ったときの寿命を実測した研究。2.4〜4.5年という数字

確認日 2026年8月19日。手元の実測は GMKtec EVO-X2(Ryzen AI Max+ 395・統合メモリ128GB)/Ubuntu 26.04/Radeon RX 9060 XT 16GB(OCuLink接続)/内蔵 Radeon 8060S/llama.cpp Vulkan、2026年8月19日に測定したものです。