外付けSSDを速いケースに替えたら、Ubuntuが起動しない?〜起動用を分けることでSSD性能を引き出すコツ

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ミニPC(GMKtec EVO-X2)に、OcuLinkでグラフィックボードを載せていろいろ試しています。OcuLinkでm.2のポートが埋まってしまったため、SSDはUSB接続のケースに入れて、そこからOSを起動というトリッキーな形で使っています。そのケースを、もっと速いUSB4対応、40Gbps対応のものに入れ替えました。

ところが、このケースを使うとUbuntu が起動しなくなりました。ケースを替えただけで、なぜ起動しなくなるのでしょうか?

検証と考察をしてみました。

2026年9月時点の実測です。

前回の記事はこちら

使用した機器の概要

本体GMKtec EVO-X2(Ryzen AI Max+ 395 / ユニファイドメモリ128GB)
OSUbuntu 24.04.4 LTS(カーネル 7.0.0-31)
SSDAirDisk APF20-002T 2TB(PCIe 4.0 x4・M.2 2280)。入れ替えの前後で同じもの
入れ替え前のケースUGREEN M.2 SSD 外付けケース 20Gbps(USB 3.2 Gen2×2)。実際にリンクした速度は 10Gbps
入れ替え後のケースUSB4対応・40Gbps(ASMedia ASM2464PD)
起動用に足したものUSBスティック型SSD 233GB(USB 3.2 Gen2・10Gbps)

今回 使ったディスクとケース

入れ替えたのはケースだけで、SSDは前後で同じものです。加えて、起動用のスティック型SSDを1本足しました。

入れ替え前:UGREEN M.2 SSD 外付けケース 20Gbps(手元では10Gbpsでリンク)

これまでOSを起動していた側です。製品としては20Gbps(USB 3.2 Gen2×2)に対応していますが、手元の環境では10Gbpsでリンクしていました。

ふたはねじ留めで、開けるにはプラスドライバーが要ります。シリコンラバーのカバーが付属していて、持ち運ぶならこちらのほうが安心できます。

入れ替え前のケース。ふたに「20 Gbps」と刻まれています。右端の丸いものが、開けるときに外すねじです。
ふたを外したところ。SSDの上に、熱を伝えるシートが貼られています。ふた側にも同じシートが付いています。

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入れ替え後:USB4対応・40Gbpsのケース(ASMedia ASM2464PD)

USB4に正式に対応したケースです。この種の製品は中の制御チップで性能が決まり、40Gbpsを謳うものはこのASM2464PDを積んでいることが多いようです。

手に取ると、ずっしりとしています。金属の部分が多く、堅牢な印象です。ファンは付いておらず、外側に並んだ金属のひれで熱を広げて逃がすつくりになっています。こちらもふたはねじ留めですが、小さなプラスドライバーが同梱されていました。通電しているかどうかが分かるLEDが付いているのも、地味ですが助かります。

40Gbpsのケースと付属品。左が本体で、右へ順に、ねじとスペーサー、プラスドライバー、熱を伝えるシート、USB-Cケーブルです。
ふたを開けて、2TBのSSD(AirDisk APF20-002T・PCIe 4.0 x4・M.2 2280)を載せたところ。

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起動用に足したもの:スティック型SSD 233GB

USBの口に直接挿す、小さなSSDです。今回はここにOSを移しました。移した量は54GBなので、この容量で十分です。

起動用に足したスティック型SSD。USBの口に直接挿します。

[kimono_kw name="USBスティック型SSD 250GB" kw="スティックSSD 250GB USB3.2″]

何を確かめたのか

  • 速いケースに入れ替えたとき、そこからOSを起動できるのか
  • 起動できないなら、どうすれば速さを使えるのか
  • 入れ替えの前と後で、読み書きの速さはどれだけ変わるのか

速さの測り方は、入れ替えの前後で完全に揃えました。自作のプログラムでキャッシュを通さない読み書き(O_DIRECT)を行い、順次は8GiBを3回、ランダムは4KBを5秒間です。中央値を採っています。

この機械では dd を使いません。標準のものと実装が違い、キャッシュを通さない指定が効かずに7,100 MB/s という、メモリの速度そのままの嘘の値が出るためです。

起きたこと〜ケースを替えたら起動しなくなった

SSDを40Gbpsのケースに入れ替えて電源を入れると、Ubuntu が立ち上がりませんでした。同じSSD、同じ中身です。元のケースに戻せば、これまでどおり起動します。

ディスクの中身ではなく、繋ぎ方だけで起動できなくなったことになりました。このとき、ケースのLEDが光っていませんでした。通電していれば点くはずのものです。

なぜ起動しないのか?

ここからは考察です。先に断っておくと、当方では原因を特定できていません。起動に失敗したときの画面を記録しておらず、どの段階で止まったのかが分かっていないためです。

そのうえで、同じ種類のケースで同じ症状が出たという報告では、次のように説明されています。USB4やThunderboltには、繋いだ機器を「使ってよい」と許可してから通す仕組みがあります。知らない機器を挿しただけで中身を読み書きされないようにするための作りです。

その許可をいつ行うかが問題です。OSが起動を始めるいちばん最初の段階では、まだOS本体が読み込まれていません。その時点で許可が済んでいなければ、OSは自分が入っているディスクを見つけられない、という筋です。

手元の機械で設定を見ると、許可のしかたは security=user でした。この設定はOSが動き出してから、常駐しているプログラムが許可するという意味です。上の説明とは矛盾しませんが、これで原因が確定したわけではありません

起動の順番と、許可のタイミング(考察)
① 電源が入る … ここでディスクが見えている必要がある
許可の処理は、まだ行われていない ← ここで詰まる
③ OSが読み込まれる … ここまで来られない
④ OSが動き出す … 許可の処理ができるようになるのは、ここから

この見方が正しいなら、データ用として使うぶんには問題が出ないはずです。OSが動き出した後なら、許可の処理が働くからです。

なお、「USB4の機器からは起動できない」という一般的な話ではありません。Mac は Thunderbolt に繋いだSSDから普通に起動しますし、ファームウェア側で先に許可を出せる機種もあります。ここで書いているのはこの1台での出来事です。

考察をもとに打った手〜起動用と作業用を分ける

そこで、起動するディスクだけを別に用意しました。許可の仕組みが関わらない、普通のUSBのスティック型SSD(233GB)です。このスティックへOSを移し、40Gbpsのケースに入れたSSDはデータ用に回しました。

移したのはOSの部分だけです。元のディスクには800GB近い中身がありますが、そのうち大きい2つ(AIのモデルの控えが620GB、画像生成の環境が120GB)は移さずにそのまま残し、元と同じ場所に見えるように繋ぎ直しました。実際にコピーしたのは54GBです。

結果は、問題なく起動しました。40Gbpsのケースに入れたSSDも、起動後にきちんと繋がっています。

その後、ケーブルを替えたら起動した

あとで分かったことを、先に書いておきます。ケースに付いてきたUSBケーブルを別のもの(ORICO Thunderbolt 4 ケーブル 0.3m)に替えたところ、40GbpsのケースからそのままUbuntuが起動しました。LEDも点きます。

ただし、その付属ケーブルが使えなかったわけではありません。同じケーブルで、10Gbpsのケースなら問題なく使えていました。速度を上げたときだけ落ちた、ということです。

ここから言えるのは、この1本が40Gbpsに耐えなかったというところまでです。不良品だったのかもしれません。上に書いた許可の仕組みの話が正しいのかどうかは、これでも分かっていません。ケーブルという別の要因が混ざっていたので、切り分けられていない、というのが正直なところです。

買うときの話としては、こうなります。ケーブルはType-Cの形が同じでも中身が違い、見た目では区別がつきません。40Gbpsを謳うケースを買うときは、ケーブルもUSB4かThunderbolt対応のものを用意しておく、と考えておいたほうが安全です。

[kimono_product id="17502″]

速さはどれだけ変わったのか

測ったもの前(10Gbpsでリンク)後(40Gbpsでリンク)倍率
順次書き964.3 MB/s3,524.9 MB/s3.66倍
順次読み1,018.8 MB/s3,704.8 MB/s3.64倍
ランダム4KB読み9,086 IOPS(37.2 MB/s)17,677 IOPS(72.4 MB/s)1.95倍

順次は3.6倍、ランダムは2.0倍でした。同じ入れ替えなのに、伸び方が違います

伸び方が違うのは、なぜか

順次のほうは分かりやすく、通り道の太さがそのまま出ています。前は10Gbpsの81.5%まで使い切っていて、そこで頭打ちでした。太くすれば、そのぶん伸びます。

ランダムのほうは事情が違います。4KBという小さな読み出しは、通り道の太さではなく1回あたりの往復にかかる時間で決まります。実際、前の状態でも10Gbpsの3%しか使っていませんでした。

その1回あたりの時間は、110マイクロ秒から57マイクロ秒へ縮んでいました。4KBを運ぶ時間自体は、この110マイクロ秒のうち数マイクロ秒にすぎません。太くしても縮まない部分が大半を占めていた計算です。

では何が縮んだのか。ケースを替えたとき、同時に「繋がり方」も変わっています。前はUSBの外付けディスクとして扱われ、間にUSB向けの変換が挟まっていました。後はPCIeで直接つながったSSDとして扱われます。この変換の往復が無くなったぶんだと考えられます。

逆に言うと、ランダムが速くなったのは「40Gbpsになったから」ではありません。速さの数字と繋がり方が同時に変わったので、この測定では両者を分けられていません。残った57マイクロ秒の大半はSSDの中身(記憶素子の読み出しと制御の処理)だと考えられ、そこは経路を速くしても縮みません。

この数字は妥当なのか

手元の値が特別に良かったのか、それとも普通なのかを調べました。同じASM2464PDを積んだケースの製品では、公称で3,800 MB/s前後を掲げているものがあります。利用者の実測報告は3,000〜3,800 MB/sあたりに分布しており、ホスト側の作りやケーブル、冷却の具合で差が出るようです。

手元の3,704.8 MB/sは、この範囲の上のほうに入ります。ケースとしては出るところまで出ていると考えられます。

裏を返すと、この3.7 GB/sはSSDの実力ではなく、ケース側の上限かもしれません。同じSSDを本体の内部に直接取り付けて測れば、そこがはっきりします。本体の内部に取り付けた場合の測定は、次回の宿題にします。

速いケースを買う前に、どちらを選ぶか

選び方起動順次読みランダム4KB
速いケース1本で、OSもデータも置く起動しない(当環境)
遅いケースに入れて、起動ディスクにする起動する1,018.8 MB/s9,086 IOPS
起動ディスクを別に用意し、速いケースはデータ用起動する3,704.8 MB/s17,677 IOPS

3つ目の代償は、ディスクが2本になることと、配線が1本増えることだけです。起動用のディスクは遅くて構いません。OSが読み書きするのは起動のときと記録を書くときくらいで、大きなモデルを読み込むのはデータ側だからです。

手元では、起動用に233GBのスティック型SSDを1本足しました。移したのは54GBなので、この大きさで足ります。

もうひとつ〜挿す口を間違えると、速いケースでも遅いまま

入れ替えた直後、実は10Gbpsのままでした。ケースは40Gbps対応で、正しく動いています。挿していた口が違いました。

この機械には、10Gbpsまでの口と、40Gbpsまで出る口(USB4)が別々にあります。見た目では区別が付きにくく、挿し替えて初めて40Gbpsになりました。

# 40Gbpsで繋がっているかの確かめ方(Linux)
boltctl list
# rx speed / tx speed が 40 Gb/s と出れば当たり
# SSDがどう見えているか
lsblk -o NAME,SIZE,MODEL,TRAN
# TRAN が usb なら10Gbps側、nvme ならPCIeで直結(40Gbps側)

この記事で確かめていないこと

  • Windowsでは試していません。ただし同じ種類のケースで、Windowsでも起動できないという報告は出ています(記事末に出典)。当方が確かめたものではありません
  • BIOSの設定は見ていません。機種によっては、この許可の扱いを変えられる項目があるようです
  • SSD自体の実力を測っていません。本体の内部に直接取り付けたときの速さは次回に回します
  • 測定は8GiBを3回で、長時間の連続書き込みは試していません。この種のケースは発熱するという報告があり、続けると落ちる可能性があります
  • 起動に失敗したときの画面を記録していません。どの段階で止まったのかが分からないため、原因を1つに絞れていません
  • ランダム4KBは読み出しの測定です。書き込みは別の要因(キャッシュの効き方)が絡むため、同じにはなりません
  • ケースを替えると速さと繋がり方が同時に変わります。この測定では、どちらがどれだけ効いたかを分けられていません
  • 結果は当方の1台での話です。ケース・SSD・本体の組み合わせが変われば、同じにならない可能性があります

まとめ〜速いケースを買う前に、ケーブルを見る

  • SSDを40Gbps対応のケースに入れ替えたところ、Ubuntuが起動しなくなった。中身も本体も同じで、繋ぎ方だけが違う
  • 原因は特定できていない。同種の報告では「USB4は繋いだ機器を許可してから通す仕組みで、その許可が起動のいちばん最初には間に合わない」と説明されている
  • そこで起動用のディスクだけを別に用意し、速いケースはデータ用に回した。移したのは54GBだけで、問題なく起動した
  • ★あとでケーブルを替えたら、40Gbpsのケースからも起動した。ただし付属ケーブルも10Gbpsでは使えていた=この1本が高速に耐えなかっただけで、起動しなかった理由そのものは切り分けられていない
  • 速さは順次で3.6倍(1,018.8→3,704.8 MB/s)、ランダム4KBで2.0倍(9,086→17,677 IOPS)
  • 伸び方が違うのは理由が別だから。順次は通り道が太くなったため。ランダムは繋がり方がPCIe直結に変わり、USB向けの変換の往復が無くなったため(1回 110→57マイクロ秒)。40Gbpsになったこと自体の効果ではない
  • ただしこの3.7 GB/sはケース側の上限に当たっている可能性がある。同じチップのケースの報告は3,000〜3,800 MB/sに分布している

速いケースを買えば速くなる、という話ではありませんでした。ケースと同じだけ、ケーブルが効きます。形が同じでも中身が違うので、見た目では分かりません。

手元で大きなモデルを動かすとき、待たされるのはモデルを読み込む場面です。その置き場所を速くすることには意味があり、OSの置き場所を速くすることにはあまり意味がありません。お金をかける場所を分けて考えると、同じ予算でも効き方が変わってくるのではないでしょうか。

なお、モデルの置き場所をどう増やすかを値段と速さで並べた記事はこちらです。

参考にしたサイト

検証に使用した機材

測定に使った本体です。

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