メモリが高い〜SSDで代用できるのか、待ち時間と寿命を調べた
2026年8月19日
メモリの値段が、底値から3〜6倍に上がっています。
ローカルAIは、メモリが多いほど大きなモデルを動かせます。ところが買い足そうとすると、DDR5の64GBが$600を超えている。ここで、こう考えました。
SSDをメモリの代わりにできないのか。1TBのSSDなら数万円です。何枚か束ねれば速くなるはずだし、容量あたりの値段はメモリの何十分の1です。
本当にそれで足りるのでしょうか。調べてみました。
この記事は公開情報を調べてまとめたものです。実際に組んで試した結果ではありません(確認日 2026年8月19日)。
SSDの寿命と束ね方については、前回の記事で調べています。
何を調べたか〜範囲と情報源
先に範囲を書いておきます。
- 調べたこと: メモリとNVMeのSSDで、呼んでから返ってくるまでの時間がどれだけ違うか。メモリ代わりに使ったときSSDの寿命がどうなるか。そして代わりの手
- 情報源: NVMeの待ち時間の資料、フラッシュでメモリを拡張したときの寿命を実測した研究論文、SSDメーカーの耐久性の資料(いずれも記事末にリンク)
- 確認日: 2026年8月19日
- 手元の数字: 後述のGPUでの実測のみ(2026年8月19日に測定)
SSDをメモリの代わりにする方法は、昔からある
メモリが足りないとき、ディスクを一時的な置き場として使う仕組みは、どのOSにも入っています。
| OS | 呼び方 | 状態 |
|---|---|---|
| Linux | スワップ | 最初から使えます |
| Windows | ページファイル | 最初から有効です |
| macOS | スワップ | 自動で管理されます |
特別な準備は要りません。すでに動いています。SSDを足して、その領域を大きく取れば、見かけ上のメモリは増やせます。
問題は、それで何が起きるかです。
メモリとSSDは、待ち時間が3桁ちがう
調べていて、いちばんはっきりしていたのがここでした。
| メモリ | 10〜100ナノ秒 |
| NVMeのSSD | 20〜70マイクロ秒 |
ここで大事なのは、「1秒あたり何GB運べるか」ではなく「呼んでから返ってくるまで何秒か」のほうだという点です。
文章を生成するとき、AIは1文字ごとにモデル全体を通ります。そのたびに待たされます。まとめて運べる量が多くても、1回ごとの待ち時間は縮みません。
SSDをRAIDで束ねても、待ち時間は縮まない
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。
SSDを4枚並べれば、1秒あたりに運べる量は増えます。ところが「呼んでから返ってくるまでの時間」は、1枚のときとほとんど変わりません。
4人がかりで荷物を運べば量は4倍ですが、1個の荷物が届くまでの時間は変わらないのと同じです。
調べた範囲では、RAIDで待ち時間が改善するかどうかについて意見が分かれていました。「体感で速く感じる」という報告もあれば、「RAIDの処理が挟まるぶん、むしろ遅くなる」という指摘もあります。どちらとも言い切れる材料は見つかりませんでした。
ただ、どちらだとしても3桁の差は埋まりません。この待ち時間の差が、結論を変えるところです。
メモリ代わりに使うと、SSDの寿命を削り続ける
もうひとつが寿命です。
前回の記事に書いたとおり、SSDは書き換えできる回数が決まっています。いまの主流であるTLCで1,000回程度、安い大容量のQLCはさらに少ない。
そして調べた範囲では、普通の使い方ならこれを使い切ることはまず起こりません。寿命が問題になるのは、大量に書き込み続ける使い方をしたときです。
さらに、SSDは1GB書いたつもりでも実際には3〜4GB書き込まれることがあります。中で領域を整理し直すためで、書き込み増幅と呼ばれます。削られる速さは、見かけより速い。
実際に測った研究もありました。頑丈さで知られる特殊なSSDを使い、日常的な作業をさせた場合で、寿命は2.4〜4.5年という数字が出ています。
この2.4〜4.5年という数字は、桁違いに頑丈な部類のSSDでの話です。安いQLCのSSDで同じことをすれば、もっと短くなると考えるのが自然です。
手元のGPUでも、容量を超えた瞬間に同じことが起きた
この記事は調べたものが中心ですが、関係する数字が手元にあります。
どんな構成で測ったかを先に書いておきます。
| 測った機械 | ミニPC(Ubuntu)。グラフィックボードは外付けで、メモリは16GB |
| 測ったもの | 文章を読ませる速さ(512文字ぶんを処理する速度) |
| 振った条件 | モデルの大きさだけ。8.6GB(16GBに収まる)と17.3GB(1.3GB超える) |
| そろえたもの | 同じ機械・同じ設定・同じ日。グラフィックボード1枚だけで動かしています |
グラフィックボードのメモリに収まらないモデルを動かすと、足りない分をパソコン側のメモリへ逃がします。これは「メモリの代わりに別の場所を使う」という点で、いま話していることと同じ構図です。
| 16GBのボードに載せたモデル | 読ませる速さ | 内蔵GPUと比べて |
|---|---|---|
| 8.6GB(収まる) | 1,172 | 1.60倍 |
| 17.3GB(1.3GB超える) | 145 | 0.12倍 |
1.3GB超えただけで、13分の1に落ちています。「収まらない分を別の場所に逃がす」と、これだけの差が出ます。
ここで逃がした先はパソコンのメモリです。SSDはメモリよりさらに桁で遅い。そこへ逃がしたらどうなるかは、想像がつきます。
各行は同じモデルを2つのGPUで比べているので、行ごとの倍率は正しい読み方です。ただし「1.60倍から0.12倍へ落ちる曲線」と読むのは行き過ぎです。
ここで言えるのは、収まっていれば速く、はみ出すと大きく落ちるということまでです。
では、メモリが足りないときはどうするのか
「勧めません」で終わると困るので、代わりの手を書きます。
1. モデルの選び方で解決することが多い
手元で測っていて、いちばん驚いたのがこれでした。
| モデル | 大きさ | 書く速さ |
|---|---|---|
| minimax-m2.7 | 101GB | 29.1 |
| llama3.3:70b | 39.6GB | 5.3 |
101GBのモデルが、39.6GBのモデルより5倍以上速い。大きさで決まっていません。
理由は、モデルの作りが違うからです。101GBのほうは全体は大きいが、1文字を作るときに使う部分は小さいという構造をしています。MoEと呼ばれる作りで、この形のモデルなら、大きくても実用の速さで動きます。
メモリを増やす前に、動かすモデルを見直したほうが早い場合があります。
2. メモリを積んだ完成品を買う
いまは、メモリを単体で買うより、最初からメモリを積んだミニPCを買うほうが安い場面があります。メーカーが値上がり前に仕入れた在庫を使っているためです。
ただし条件があります。CPUとグラフィックでメモリを丸ごと共有する作りでないと、大きなモデルは載りません。この見きわめを外すと、安く買っても目的に届きません。
メモリを多く積んだ完成品の例です。本体にまとめて積んであるので、あとからメモリを買い足す必要がありません。いま単体のメモリが高いぶん、完成品のほうが結果的に安く付く場面があります。
3. モデルの置き場としてなら、SSDは正しい使い道です
ここまで「メモリの代わりにするな」と書いてきましたが、モデルを置いておく場所としてなら、SSDは本来の使い道です。
読み込むときに一度だけ通る使い方なら、書き込みが続かないので寿命も削りません。手元でも、動かすモデルはSSDに置いています。
4. 必要なときだけ借りる
大きいモデルを月に数回しか触らないなら、時間で借りたほうが安く済みます。買ってしまうと、使わない時間も電気代がかかります。
必要なときだけ借りる場合の例です。時間あたりで払う形なので、たまに大きなモデルを触るだけなら、機材を買うより安く済むことがあります。
RunPod(GPUの時間貸し)
組んで試してはいない〜この記事で言えないこと
この記事は公開情報を調べてまとめたもので、実際にSSDをメモリの代わりに組んで試したわけではありません。
- 「寿命2.4〜4.5年」は、頑丈さで知られる特殊なSSDで、日常的な作業をさせた場合の研究値です。安いSSDでローカルAIを動かした場合の数字ではありません
- 比較に使った2つのモデルは別物です。同じモデルで大きさだけを変えた比較ではありません
- 書き込みが実際3〜4倍に膨らむという値も、使い方や製品で変わります
それでも「勧めません」と書いたのは、待ち時間が3桁ちがうという一点が、製品差で埋まる幅ではないからです。この一点は、組んで試さなくても言えます。
まとめ:手段としてはありますが、勧めません
- やり方そのものは、どのOSにも最初から入っています。SSDを足して領域を大きく取れば、見かけ上のメモリは増やせます
- ただし呼んでから返ってくるまでの時間が、メモリとSSDで3桁違います(ナノ秒とマイクロ秒)
- RAIDで束ねても、そこは変わりません。運べる量は増えますが、1回ごとの待ち時間は縮みません
- 寿命を削り続ける使い方です。頑丈な部類のSSDでも2.4〜4.5年という研究がありました
- 代わりに、モデルの選び方・メモリ入りの完成品・借りるという手があります
調べてみて、「安く済ませる方法」を探していたつもりが、いちばん高くつく道を選びかけていたと分かりました。SSDは消耗品です。数万円のSSDを数年で使い切るなら、その間に払う額はメモリの値段に近づいていきます。
もし試すなら、壊れてもよいSSDで、しばらく我慢する用途に限るのがよさそうです。動かないよりはまし、という場面はあります。ただ、それを常用の構成にはしないほうがいいというのが、調べたうえでの私の判断です。
参考にしたサイト(SSDの寿命とメモリの待ち時間)
確認日 2026年8月19日。手元の実測は GMKtec EVO-X2(Ryzen AI Max+ 395・統合メモリ128GB)/Ubuntu 26.04/Radeon RX 9060 XT 16GB(OCuLink接続)/内蔵 Radeon 8060S/llama.cpp Vulkan、2026年8月19日に測定したものです。









ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません