ディスクを束ねれば速くなるのか〜RAIDの仕組みと、SSDの中身の違い

2026年8月28日

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2026年8月19日

前回、NASの速さを測って「置き場所に速さは要らない」という話を書きました。今回はその中身の話です。

ディスクを何台か束ねれば、その分だけ速くなるのでしょうか。束ねる仕組み(RAID)と、SSDが中身によって寿命も速さも別物になるという話。この2つを知らずに買うと、安く買ったつもりが、早く壊れる側に回ります。

この記事は公開情報を調べてまとめたものです。手元で組んで比べた結果ではありません(確認日 2026年8月19日)。

何を調べたか〜範囲と情報源

この記事は手元で組んで測ったものではなく、公開されている情報を調べてまとめたものです。範囲を先に書いておきます。

  • 調べたこと: RAIDの組み方と、それぞれが何を引き換えにしているか。SSDの中身(NANDの種類)が、寿命と書き込み速度をどう変えるか
  • 情報源: SSDメーカーの耐久性の資料、NANDの技術解説、NASメーカー自身によるRAIDの注意喚起(いずれも記事末にリンク)
  • 確認日: 2026年8月19日
  • 手元の数字: 前回の記事で測った速度のみ(NAS 117MB/s・外付けSSD 1,000MB/s・本体のM.2 3,500MB/s)

RAIDは「速くする」だけの仕組みではありません

複数のディスクを1台のように見せる仕組みです。組み方によって、速さ・容量・壊れたときの強さが変わります。

組み方速さ使える容量1台壊れたら
RAID 0速い全部全部消える
RAID 1読みは速い半分もう片方が生きていれば続く
RAID 5書きが遅い1台ぶん減る1台までなら耐える
RAID 6さらに書きが遅い2台ぶん減る2台まで耐える
RAID 10速い半分組み合わせ次第

調べていて、これは先に書いておくべきだと感じた点が2つあります。

RAIDはバックアップではありません

誤って消したファイルは、全部のディスクから同時に消えます。RAIDが守るのは「ディスクが壊れたとき」であって、「自分が消したとき」ではありません。

誤操作、ウイルス、機械ごと壊れる事故。どれもRAIDでは守れません。別の場所に控えを持つ必要があります。

台数を増やすと「どれかが壊れる確率」は上がります

当たり前のようですが、見落としやすいところです。

RAID 0 は、台数を増やすほど危なくなります
4台で組めば、どれか1台が壊れただけで全部消えます。1台のときより、壊れる機会は4倍あります。

速さと容量は手に入りますが、守りは1台のときより弱くなっています。壊れやすくなることを分かったうえで使うなら良い選択ですが、知らずに組むと痛い目を見ます。

直しているあいだが、いちばん危ない

RAID 5やRAID 6で1台壊れたとき、新しいディスクに入れ替えると、残ったディスクから中身を計算し直します。この作業をリビルドと呼びます。

このとき、残った全部のディスクを端から端まで読み続けます。大容量のHDDだと何時間、何日とかかります。

つまり、いちばん弱った状態で、全ディスクに最も重い負荷をかける形です。この入れ替え作業のあいだに2台目のHDDが壊れると、RAID 5ならデータは全部失われます。「大容量のHDDならRAID 6にすべき」と言われるのは、この理由からです。

SSDは、中身によって別物です

ここからがSSDの話です。同じ「SSD」と書いてあっても、中身の作りで寿命が桁違いに変わります。

SSDは、ひとつの記憶素子に何ビット詰め込むかで種類が分かれます。詰め込むほど安く大容量にできますが、そのぶん寿命が短くなる仕組みです。

種類1つに詰める量書き換えできる回数いまの立ち位置
SLC1ビット9〜10万回ほとんど市販されない
MLC2ビット5,000〜10,000回姿を消しつつある
TLC3ビット1,000回程度いまの主流
QLC4ビットさらに少ない安い・大容量の製品に多い

SLCはTLCの30倍以上の耐久性があるとされています。そして、いま店頭で安く売られている大容量SSDの多くはQLCです。

ただしSSDの寿命は、普通の使い方なら気にしなくてよい

ここは正直に書いておきます。

調べた範囲では、一般的な使い方で1日10GB程度なら、寿命を使い切ることは現実的に起こりません。写真を見る、動画を見る、書類を作る。この程度では、先に別のところが壊れます。

寿命を気にすべきなのは、大量に書き込み続ける使い方をするときです。動画編集の作業ファイル、データベースの検証、そして生成AIのデータの書き出しこうした使い方に当てはまるなら、SSDの種類を見て買う値打ちがあります。

SSDのカタログ速度は、最初だけしか出ない

もうひとつ、知らないと引っかかるところです。

QLCのSSDは、そのままだと書き込みが遅くなります。そこでメーカーは、一部の領域を「1ビットだけ詰める」使い方に切り替えて、速い受け皿として使っています。この速い書き込み領域を、SLCキャッシュと呼びます。

カタログの数字が出るのは、最初だけです
受け皿に収まっている間
カタログどおりの速さが出ます。短いファイルなら、ここで終わります
受け皿を使い切ったあと
速度が急に落ちます。大きなファイルを続けて書くと、ここに当たります
ローカルAIのモデルは1本で数十GBあります。受け皿に収まる大きさではありません。

では、SSDをRAIDで束ねれば解決するのか

ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。

「安いSSDを何枚か買って、RAID 0で束ねれば速くて大容量になるのでは」と考えたくなります。実際、読み書きの量そのものは増えます。

ただ、いま挙げた問題は、束ねても消えません。

問題RAID 0で束ねると
書き込みの量が多いと寿命が縮む枚数で分担するので、1枚あたりは減ります
受け皿を使い切ると遅くなる全部が同時に使い切ります。同じ量を分けて書いているので、息切れも同時です
1枚壊れると全部消える枚数を増やすほど、その機会が増えます

とくに2つ目です。速い受け皿を4枚並べても、4倍長持ちするわけではありません。同じ量を4分の1ずつ書いているので、使い切るタイミングは揃います。

結果として、安いQLCのSSDを何枚もRAID 0で束ねるという組み合わせが、いちばん危ない形です。寿命が短く、息切れが同時に来て、しかも1枚壊れれば全部失う。3つの弱点が重なります。

記事の中で「これを選べば外れにくい」と書いた側の例です。TLCで、TBW(何TB書き込めるかの目安)が数字で書かれているものを挙げます。書いていない製品が悪いわけではありませんが、比べようがありません。

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もう1つ、TBWが明記されている例です。値段は上がりますが、保証の条件として数字が出ている点は同じです。

[kimono_product id="16852″]

HDDをRAIDで束ねると、どうなるか

こちらは事情が違います。

HDDは1台で150〜250MB/s程度です。台数を束ねれば、そのぶん速くなります。SSDと違って寿命を書き込み量で削る仕組みではないので、寿命の心配も別の話です。

さらに、SSDを受け皿として組み合わせられる機種があります。よく使うものを速いSSDに置いておき、その裏でHDDへ書く。手元のNASもこの作りで、取り込みのときに効いています。

ただし、つないでいる線で頭打ちする

前回の記事で測ったとおりです。

どこ実測
NAS(1000Mbpsの線でつないで)117 MB/s
外付けSSD(USBでつないだ持ち運び用)1,000 MB/s
本体の中のM.23,500 MB/s

NASの中で何台束ねようが、1000Mbpsの線をつないでいるかぎり117MB/sで止まります。台数を増やす前に、どこが詰まっているかを見たほうが早い。

HDDを何台か束ねる場合の例です。NAS向けに作られた型で、24時間回し続ける前提の作りになっています。普通のHDDでも動きますが、常時回す用途では作りが違います。

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組んで測ってはいない〜この記事で言えないこと

ここまで書いた内容は、公開されている情報を調べてまとめたものです。手元でRAIDを組んで測った結果ではありません。

とくに次の3つは、数字を鵜呑みにしないでください。

  • 書き換えできる回数は、製品や世代によって変わります。表の値は目安です
  • 受け皿(SLCキャッシュ)の大きさは製品ごとに違い、公表されていないことも多いです
  • 「1日10GBなら寿命は問題ない」という話も、調べた範囲での目安です。使い方によって変わります

手元で組んで測れば、もっと確かなことが書けます。いまは組んでいないので、そこまでは言えません。

まとめ:安いSSDを何枚も束ねるのが、いちばん危ない

  • RAIDはバックアップではありません。消したファイルは全部のディスクから消えます
  • RAID 0は台数を増やすほど危なくなります。1台壊れれば全部です
  • RAID 5・6で1台壊れたあとの直している最中がいちばん危ないとされています
  • SSDは中身で別物です。書き換えできる回数がSLCとTLCで30倍以上違います
  • ただし普通の使い方なら寿命は気にしなくてよいとされています。効いてくるのは大量に書き続ける使い方です
  • カタログの速度は続きません。速い受け皿を使い切ると落ちます
  • RAID 0で束ねても、息切れは同時に来ます。安いSSDを何枚も束ねるのが、いちばん危ない組み合わせです

調べてみて、「束ねれば解決する」という発想そのものを疑うべきだったと感じました。台数を増やして良くなるものと、増やしても変わらないもの、増やすと悪くなるものが混ざっています。

次は、この話の応用です。メモリの値段が上がったから、SSDをメモリの代わりに使えないかという考えについて、調べたことを書きます。結論だけ先に言うと、手段としては存在しますが、私は勧めません。

参考にしたサイト(RAIDとSSDの寿命)

NANDフラッシュ完全解説2026(semi-connect)
SLC/MLC/TLC/QLCの仕組みと書き換え回数
RAIDだからって過信は禁物(バッファロー)
RAIDがバックアップではない理由

確認日 2026年8月19日。数字は製品や世代によって変わります。買う前に、その製品の仕様で確認してください。