GLM-5.3-Flash(320B)は、ミニPCのEVO-X2でどれだけ速く書く?〜llama.cpp v0.7.0 で測った
Z.ai が公開した「GLM-5.3-Flash」(総パラメータ3,200億、1回に使うのは180億)の量子化版 UD-IQ1_S は、ファイルだけで93.1GBあります。このモデルを、ミニPC「EVO-X2」(Ryzen AI Max+ 395 搭載。メモリ128GB。内蔵GPUは Radeon 8060S)で、llama.cpp v0.7.0 を使って動かし、速さを測りました。1つ前の版の llama.cpp では読み込めなかったモデルです。新しい版なら読めて、どれくらいの速さで書くのでしょうか?
2026年10月17日時点の内容です。
目的〜何を測った記事か
この記事で測ったのは、次の3つです。
- 読み込めるか: 1つ前の版(b11192)で読めなかったモデルが、v0.7.0 で読めるか
- 入力処理の速さ(pp512): 512トークンの入力を読ませるとき、1秒あたり何トークン処理するか(読む側の速さ)
- 生成の速さ(tg128): 128トークンの文章を書かせるとき、1秒あたり何トークン出てくるか(書く側の速さ)
あわせて、使われたメモリの量も記録しました。答えの出来や正確さ、画像を入力したときの動き、長い入力での動きは測っていません。詳しくは「限界〜測っていないこと」に書きました。
読み終えたときに、「93.1GBの超低ビット量子化版は、メモリ128GBのミニPCに載り、毎秒約18トークンで書く」という目安が持てることを目的にしています。
前提知識〜用語の説明
専門用語が続くため、先に整理します。
- トークン: AIが文章を処理するときの単位です。文字数とは一致せず、単語や文字の断片を1トークンと数えます
- tok/s(トークン毎秒): 1秒あたりに処理するトークン数です。大きいほど速く、本文の速度はすべてこの単位です
- llama.cpp: ローカルでAIを動かすためのソフトです。今回は v0.7.0(ビルド 620d222)と、1つ前に試した b11192 を使いました
- llama-bench: llama.cpp に付いている測定用の道具です。入力512トークンの処理(pp512)と、128トークンの生成(tg128)を測ります
- Vulkan: GPUを使うための仕組み(API)のひとつです。今回は Vulkan で Radeon 8060S を使いました
- UMA(ユニファイドメモリ): CPUとGPUが同じメモリを共有する作りです。EVO-X2 では専用のVRAM表示が出ず、メインメモリの使用量で見ます
- 量子化: モデルの数値を粗くして、ファイルを小さくする方法です。今回の UD-IQ1_S は、1つの値を約1.56ビットで持つ、とても粗い形式です
- MoE(Mixture of Experts、専門家の混合): モデルの中に多数の「エキスパート」と呼ばれる小さな部品を持ち、1トークンごとに一部だけを使う作りです。総パラメータが大きくても、1回の計算量は活性パラメータの分で済みます
- 線形注意・疎注意: 文章が長くなっても計算量を増やしにくくするための、注意機構の工夫です。詳しくは次の節で触れます
GLM-5.3-Flash とは〜歴史と作りの蘊蓄
測定の前に、このモデルがどこから来たのかを整理します。ここは Hugging Face(AIモデルの配布サイト)の公開情報で確認した内容で、出典は記事末にまとめました。
GLM シリーズの系譜
公開元は Z.ai(Hugging Face の組織名は zai-org)です。リポジトリは2026年8月25日に作られ、本体の GLM-5.3 と同じ日でした。Artificial Analysis(AA、AIモデルを第三者の立場で比べるサイト)などの記事の日付は8月26日です。
GLM という名前の出どころは、2021年3月に投稿された論文「GLM: General Language Model Pretraining with Autoregressive Blank Infilling」です。ただし、現行のシリーズが今もこの略称をそう説明しているかは、確認できませんでした。
「Flash」の名前の由来は、README・AA・解説記事のどれにも説明がなく、確認できませんでした。同じシリーズに GLM-4.7-Flash(2026年1月)と GLM-4.6V-Flash(2025年12月)という先例があります。
Hugging Face の作成日をたどると、シリーズは次のように進んできました。
| モデル | 日付 | メモ |
|---|---|---|
| GLM-4.5 / 4.5-Air | 2025年7月20日 | MIT ライセンス |
| GLM-4.7-Flash | 2026年1月19日 | 総300億・活性30億の小型枠 |
| GLM-5 | 2026年2月11日 | 総7,440億・活性400億 |
| GLM-5.1 | 2026年4月3日 | – |
| GLM-5.2 | 2026年6月16日 | 1M(100万)トークンの文脈 |
| GLM-5.3 本体 | 2026年8月25日 | 独自ライセンス |
| GLM-5.3-Flash | 2026年8月25日 | 総3,200億・活性180億。MIT ライセンス |
ライセンスは、本体の GLM-5.3 が独自の「GLM-5.3 License」なのに対し、Flash は MIT です。MIT ライセンスは、条件を守れば自由に使え、改変し、配れる、代表的な緩いライセンスです。
公式の発表と重みの公開には、日のずれがありました。GLM-5.3 は8月14日に発表され、重みの公開は8月25日です。Flash は翌日の8月26日に話題になっています。
名前の読み方〜320B-A18B
「320B-A18B」は、総パラメータ320B(3,200億)のうち、1トークンごとに使うのが18B(180億)という意味です。使う割合は約5.6%です。使うのが180億でも、置いておく重みは3,200億分すべて必要です。
中身の作り〜線形注意と疎注意の混成
README は、Flash を「GLM-5 シリーズ初のネイティブ・マルチモーダルモデル」と説明しています。画像と文章の両方を入力できる作りです。また「新しく学習したベースモデルから始め、構成と学習方法を作り直した」と書いています。30兆トークンのマルチモーダルな学習データを使ったとされます。
設定ファイル(config.json)には、層の種類が書かれています。全45層のうち、線形注意の層が34層、DeepSeek 系の疎注意の層が11層です。疎注意は4層ごとに1層です。README は、疎注意と線形注意を混ぜた構成を GLM シリーズで初めて採り、長い文脈での計算の負担を下げつつ、長い文脈での精度を保つ狙いだと書いています。
MoE の部分は、ルーティングされるエキスパートが288個、1トークンで使うのが8個、全員が使う共有エキスパートが1個です。先頭の3層はMoEでない通常の層です。MTP(先の予測を同時に行う層)は1層あります。文脈の長さは、設定ファイルの最大位置が1,048,576トークン(1M)です。
README は、規模を大きくする効率を上げるために Manifold-Constrained Hyper-Connections(mHC)という仕組みを採用したとも書いています。仕組みの中身は確認できていません。設定ファイルの中の「kda」という項目名の意味と、モデル形式名 glm5_next の命名の意図も、資料に説明がなく、確認できませんでした。
前の世代の GLM-5 から GLM-5.2 は、78層・256個のエキスパートで、全層が疎注意でした。Flash は45層・288個で、混成の注意機構と画像を見る部品が加わっています。配布は FP8(8ビットの浮動小数)で、公式のファイルは328.3GBあります。GGUF 形式の公式配布は確認できず、今回使ったファイルは unsloth の配布物です。
公式が示す性能と、AAの値
モデルカードに付いたグラフに、開発元の評価値が印字されています。評価データのファイル(.eval_results)と値が一致した4項目の、Flash の値を引用します。並べている前の世代 GLM-5.2 の値は、グラフの印字を当ブログが目で読んだもので、評価データのファイルとの照合はできていません。
| 指標 | GLM-5.3-Flash | GLM-5.2 |
|---|---|---|
| Terminal Bench 2.1 | 84.3 | 81.0 |
| DeepSWE v1.1 | 63.4 | 46.2 |
| Agents’ Last Exam | 26.3 | 20.4 |
| HLE(ツールあり) | 55.3 | 54.7 |
表の値は開発元の自社評価で、第三者の検証ではありません。README は「GLM-5.2 を全面的に上回る」と書いています。
AA の Intelligence Index(v4.3.2)は、AA のモデルページで42と表示されていました。同種の open-weight(重みの公開されたモデル)の中央値は19と書かれています。これは AA が出した数字で、グラフの棒でなくモデルページの表示値を引用しています。当ブログの測定ではありません。
方法〜どう測ったか
測定した機体とソフト
機体は EVO-X2 です。Ryzen AI Max+ 395 を載せたミニPCで、メモリは128GBあります。内蔵GPUの Radeon 8060S を、Vulkan で使いました。環境変数 GGML_VK_VISIBLE_DEVICES で、8060S だけが見えるようにしています。ソフトは llama.cpp v0.7.0(ビルド 620d222)です。別の機体でビルドしたものを EVO-X2 にコピーして使いました。
測定の条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モデル | unsloth の GLM-5.3-Flash-GGUF、UD-IQ1_S(3分割、合計93,077,724,536バイト=93.1GB。1.5625ビット/値) |
| コマンド | llama-bench -ngl 99 -p 512 -n 128 -r 5 -lm none |
| -ngl 99 | 全部の層をGPUに載せる指定 |
| -lm none | ファイルを必要な分だけ読む方式(mmap)でなく、先にメモリへ読み込む指定 |
| 回数 | 5回 |
| 集計 | 5回を小さい順に並べ、中央の3点の中央値を採用 |
同じファイルを、1つ前の版の llama.cpp(ビルド b11192)でも試しています。測定日は、b11192 が2026年10月16日、v0.7.0 が10月17日です。
ollama の数字を同じ表に並べない理由
ollama は llama.cpp とは別のソフトで、読み込みの実装や測り方が違います。今回の数字は llama-bench の値なので、当ブログの ollama で測った記事の数字とは、同じ表で比べません。
結果
1つ前の版では読めなかった
b11192 では、次のエラーが出て読み込めませんでした。
unknown model architecture: 'glm5-next'
このモデルは、構成の名前(アーキテクチャ名)が glm5-next です。b11192 が知っている名前は glm5 で、glm5-next は未対応でした。v0.7.0 では同じファイルが読め、測定できました。
速さ
| 回 | 入力処理 pp512[tok/s] | 生成 tg128[tok/s] |
|---|---|---|
| 1 | 169.73 | 18.41 |
| 2 | 169.93 | 18.44 |
| 3 | 170.24 | 18.46 |
| 4 | 172.27 | 18.54 |
| 5 | 183.71 | 18.57 |
| 中央3点の中央値 | 170.24(幅2.34) | 18.46(幅約0.1) |
入力処理は、5回の値が169.73〜183.71 tok/s で、5回目だけ高めに出ました。中央の3点(169.93・170.24・172.27 tok/s)の中央値は170.24 tok/s です。512トークンの入力なら、約3.0秒で読み終える計算です。
生成は18.41〜18.57 tok/s で、そろいました。中央値は18.46 tok/s です。128トークンなら約6.9秒で書き終わる計算です。表の値は小さい順に並べ替えてあり、測定した順ではありません。
メモリ
使われたメモリは、約92.8GBでした。EVO-X2 はCPUとGPUでメモリを共有するため、専用のVRAM表示は出ません。ファイルの大きさ93.1GBに近い量が、メインメモリ側に載った形です。
温度と消費電力は計測していません。
考察
毎秒約18トークンという生成の速さは、1つの条件を5回測った値です。長い入力や複数の質問の同時利用では測っていません。
載り方の事実は、93.1GBのファイルが、メモリ128GBのミニPCで全層をGPUに割り当てる指定のまま動いたことです。メモリの使用量は約92.8GBで、128GBの範囲に収まりました。同じミニPCで大型のモデルを動かした例は、Hy3 の記事とgpt-oss-120b の記事にあります。ソフトや量子化の条件が違うため、速さの数字は並べて比べません。
ここで「1回に使うのが180億と少ないから、3,200億のモデルでも毎秒18トークン出る」という説明が思い浮かびます。使う割合は約5.6%(18B÷320B)で、1トークンあたりに読み出す重みが少ないためです。これは推測で、確かめていません。
入力処理の5回目の183.71 tok/s のような外れた値が、なぜ出たのかは確認できませんでした。中央3点を採る集計で、この値の影響は避けています。
1つ前の版で読めなかった理由は、エラーメッセージから「アーキテクチャ名 glm5-next への未対応」と読み取れます。v0.7.0 で対応が入ったと考えられますが、ソースの変更点そのものは、この記事では読んでいません。
限界〜測っていないこと
- 答えの品質と精度: 文章の出来、正答率、幻覚の多さは測っていません。品質は未測定です。1.56ビット級の量子化で、元のモデルの精度がどれだけ残るかは、確かめていません
- 画像の入力: Flash は画像も入力できるとされますが、今回はテキストだけで測りました。画像入力は未試験です
- 1回の質問だけの値: llama-bench の1つの条件(入力512トークン・生成128トークン)を5回測った値です。長い入力、長い生成、複数の質問の同時利用の動きは測っていません。1M(100万)トークンまでとされる文脈長の動きも未確認です
- 推論の強さの切替: README にある reasoning_effort の切替は試していません
- 温度と消費電力: 計測していません
- ollama の数字との比較: ollama は別のソフトです。ollama で測った数字とは、同じ表で比べていません
- 量子化の違い: UD-IQ1_S だけで、他の量子化版(UD-IQ1_M、UD-IQ2_XXS など)との差は測っていません
- 測定の日: 2026年10月17日の1日、この1台の機体、v0.7.0 の1つの版だけです。別の版や別の日には値が動くことがあります
- 性能の数字: 表の評価値は開発元の自社評価です。Intelligence Index の42は、Artificial Analysis のモデルページの表示値(v4.3.2)で、当ブログでは検証していません
まとめ〜EVO-X2で GLM-5.3-Flash を動かした結果
- GLM-5.3-Flash(総320B・活性18B)の UD-IQ1_S(93.1GB)は、llama.cpp v0.7.0 で EVO-X2 の Radeon 8060S を指定して動いた
- 1つ前の版の b11192 では「アーキテクチャ glm5-next が未対応」で読めなかった
- 入力処理は170.24 tok/s(pp512、中央3点の中央値)、生成は18.46 tok/s(tg128、同)
- 使われたメモリは約92.8GBで、128GBの範囲に収まった
試すなら、まず llama.cpp を v0.7.0 以降にして、llama-bench でご自身の機体の値を測ってください。ここに載せた値は、あくまで1台の機体の1回分の記録です。
品質や画像入力は、この記事では測っていません。引き続き当ブログのローカルLLMの記事で追っていきます。
参考
- GLM-5.3-Flash(README・config.json・LICENSE): https://huggingface.co/zai-org/GLM-5.3-Flash
- GLM-5.3-Flash リポジトリ情報(作成日): https://huggingface.co/api/models/zai-org/GLM-5.3-Flash
- GLM-5.3-Flash 評価データ: https://huggingface.co/zai-org/GLM-5.3-Flash/raw/main/.eval_results/GLM-5.3-Flash.yaml
- GLM-5.3-Flash GGUF(unsloth): https://huggingface.co/unsloth/GLM-5.3-Flash-GGUF
- Artificial Analysis(GLM-5.3-Flash): https://artificialanalysis.ai/models/glm-5-3-flash
- GLM 論文(GLM: General Language Model Pretraining with Autoregressive Blank Infilling): https://arxiv.org/abs/2103.10360
- GLM-5 技術報告: https://arxiv.org/abs/2602.15763
- 上記の情報は、2026年10月17日に確認しました








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