HMD(VRヘッドセット)の見え方を視力換算してみた
ヘッドセットやら、VRゴーグルやら、 HMD(ヘッドマウントディスプレイ)やらと、いろいろと呼ばれているVR体験時に頭にかぶるディスプレイ。ここではHMDと呼ぶことにします。
HMDのディスプレイの解像度は日進月歩で上がっていっていますが、視力に換算するとどれくらいの値になるのでしょうか。気になったので、大雑把に計算してみました。
計算手法
HMDのディスプレイの解像度を視力換算するにあたって、計算手法を考えます。
なお、HMDの最大視野角として書かれている数字は水平方向の視野角を表すことが多いようです。このことから水平方向のみを考えていきます。
簡単のために、画素数は角度に対して一定に分布していると仮定します。
例えば、水平方向の解像度1200px、視野角100度のHMDは1度辺り12pxがある、といった計算になります。
では、視力換算について考えていきます。計算式は、下記のサイトを参考にしました。
角度1度の60分の1を、1分と言います。
視力は、角度に対してどれだけハッキリ見えるかの指標であり、1分当たりの解像度とも言えます。
したがって、HMDの画素数を視力換算する式は、
視力 = 水平方向画素数(px) ÷ (視野角 × 60 )
となります。
先ほどの例(水平方向の解像度3000px、視野角100度のHMD)では、
1200px ÷ (視野角100度 × 60) = 0.2
となり、視力換算で、0.2のHMDということになります。
比較するHMD
PSVR
発売日:2016/10/13
2016年代のVRブームを支えた一台です。まだまだ現役のPS4専用の6DOF対応です。
Oculus Rift (CV1)
発売日:2016/3頃
Oculus Rift Sにその地位を譲り廃盤になっているPC向けの6DOF対応HMDです。2016年台のVRブームを支えた機種の一つです。
Oculus Rift S
発売日:2019/5/21
現行のFacebook製のPC向けの6DOF対応HMDです。外部センサーなしに使用できるため、従来のモデルよりも接続が簡単になりました。
Oculus Quest
発売日:2019/5/21
現行のFacebook製のスタンドアロン型の6DoF対応のHMDです。
Oculus Go
発売日:2019/5
現行のFacebook製のスタンドアロン型の3DoF対応のHMDです。
HTC Vive
発売日:2016/4/5
コンシューマー向けで初のルームスケールのVRを実現したPC向けの6DOF対応HMDです。2016年代のVRブームを支えたHMDです。現役商品です。
HTC Vive Pro
発売日:2018/4/23
Viveの高性能版です。アイトラッキング機能の付いたVive Pro Eyeもありますが、ディスプレイの解像度は同じです。
HTC Vive Cosmos
発売日:2019/10/11
Oculus Rift Sのように、外部センサーを用いないタイプのPC向け6DoF対応HMDです。
Pico G2 4k
発売日:2019/10/3
Oculus Goのような、スタンドアロン型の3DoF対応HMDです。
VALVE INDEX
発売日:2019/6/28
SteamVRを運営しているValve社のPC向け6DoF対応HMDです。5本の指の動きを認識するコントローラーが付いてきます。
日本では、2019年11月に販売が開始され、特徴的なコントローラは現在(2019/12/2)品切れとのこと。
Pimax 8k X
発売日:2019/12/18
ずば抜けた視野角を誇るPC用6DoF対応HMD, Pimax 8kの改良版です。視野角は公称200度、片目170度とのことです。
2019/12/18からKickstarterに出資した人から順に出荷されるようです。
Pimax 5k Plus
発売日:2018/12
ずば抜けた視野角を誇るPC用6DoF対応HMDです。シリーズとしては、液晶のplusと有機ELのXRがあるようです。今回はRGB方式のPlusで比較します。視野角は公称200度、片目170度とのことです。
HP Reverb
※現在(2020/1/5)、HPの直販店では、キャンペーンで¥49,800となっています。
発売日:2019/7(プロフェッショナルモデル)
片目2k画質と高画質のWindows MR対応のHMDです。ディスプレイ自身は高画質なのですが、高画質で描写させるには、PCにもNVIDIA RTX 2080以上と高い性能を求められます。
なお、コンシューマー向けの低価格モデル(定価:¥54,800)と、プロフェッショナルモデル(定価:¥63,500)が出ています。
視力換算
視力換算するにあたって、数字をまとめていきます。
各HMDの解像度(公称値)
各HMDの画素数を並べました。
HMD名 | ディスプレイ形式 | 最大視野角 | 画素数(横) | 画素数(縦) |
PSVR | RGB | 100 | 960 | 1080 |
Oculus Rift | ペンタイル | 110 | 1080 | 1200 |
Oculus Rift S | RGB | 115 | 1280 | 1440 |
Oculus Quest | ペンタイル | 100 | 1440 | 1600 |
Oculus Go | RGB | 110 | 1280 | 1440 |
HTC Vive | ペンタイル | 110 | 1080 | 1200 |
HTC Vive Pro | ペンタイル | 110 | 1440 | 1600 |
HTC Vive Cosmos | RGB | 110 | 1440 | 1700 |
Pico G2 4k | RGB | 101 | 1920 | 2160 |
VALVE INDEX | RGB | 130 | 1440 | 1600 |
Pimax 8K X | RGB | 170 | 3840 | 2160 |
Pimax 5K | RGB | 170 | 2560 | 2160 |
HP Reverb | RGB | 114 | 2160 | 2160 |
有機ELディスプレイで良く使われているペンタイル方式では、画素が間引かれており、実際には荒い見え方になります。そこで、視力換算する前に、ペンタイル方式の実質の画素数を変換してあげます。
各HMDの有効解像度
ペンタイル方式の画素数を√(2/3)してあげます。
また、各HMDの公称値として出てくる視野角は水平方向を表していることが多いようです。そこで、水平方向のみについて考えてみます。
HMD名 | 最大視野角 | 水平方向 有効画素数 (px) | 視力換算値(水平) (px/MOV) |
PSVR | 100 | 960 | 0.16 |
Oculus Rift | 110 | 882 | 0.13 |
Oculus Rift S | 115 | 1280 | 0.19 |
Oculus Quest | 100 | 1176 | 0.20 |
Oculus Go | 110 | 1280 | 0.19 |
HTC Vive | 110 | 882 | 0.13 |
HTC Vive Pro | 110 | 1176 | 0.18 |
HTC Vive Cosmos | 110 | 1440 | 0.22 |
Pico G2 4k | 101 | 1920 | 0.32 |
VALVE INDEX | 130 | 1440 | 0.18 |
Pimax 8K X | 200 | 3840 | 0.38 |
Pimax 5K | 200 | 2560 | 0.25 |
HP Reverb | 114 | 2160 | 0.32 |
ずば抜けているのは、Pimax 8k Xの視力換算値です。0.4に迫る勢いです。次点は、HP ReverbとPico G2 4k。0.3を超えており、現行HMDではトップクラスと言えます。
グラフで比較してみる
最大視野角/視力換算値
2019年世代に話題に上がったHMDは、PSVRやVive、Oculus Riftから、順当に進化しているさまが見て取れます。現状では、緑で囲ったように、視野角100度前後、視力換算0.2程度のHMDが主戦場、という事なのでしょう。
一方、Pimaxシリーズと、Pico G2 4kおよびHP Reverbが既存の一群から飛びぬけていることが分かります。
水平方向画素数/視力換算値
同じ様な視野角の製品では、単純にディスプレイの解像度が上がると、視力換算値が上がっている様子が分かります。
また、このグラフでも、Pico G2 4kとHP Reverb、Pimaxシリーズが突出しています。
視力換算値/価格(円)
価格は現状(11/17)の値を入れています。日本未発売の物は、エイヤーで125円/ドル換算で円に直しています。また、Vive ProやPimaxシリーズなど、周辺機器の選び方によって価格が変わる商品もありますのでこれだけでは一概に言えない面もありますが、参考程度に見てみます。
こうやって見ると、基本的には、価格・視力換算のグループが3つに分かれていることに気づきます。
- Oculus GoやPico G2 4kと言った3DoFのみの対応で高コストパフォーマンスを追求した商品
- Oculus Rift SやOculus Questと言ったミドルクラスグループ
- Pimax 8kやVive Cosmosと言ったハイパフォーマンスグループ
この3つのグループから外れているのが、HP Reverbでしょう。ディスプレイの性能的にはミドルクラスからハイパフォーマンスクラスに相当するはずですが、高コストパフォーマンスグループに位置しています。
なお、ViVeシリーズやPimaxシリーズに比べると、別途センサーなども必要ないOculusシリーズのコストパフォーマンスが高いことが見て取れます。
現状で、Viveシリーズのベースステーションを持っているのならば、Pimax 8k Xはコストパフォーマンスも悪くなく、綺麗な映像を体感できる一台と言えるのではないでしょうか。
まとめ
現行のHMDの見え方を視力換算して、比較してみました。
数字から見えてきた、突出したHMDは下記の2機種です。
現行で最も解像感のあるディスプレイを持つHMDは、Pimax 8k Xではないかと推測出来ます。
視力換算の計算で分母に来る視野角が200度と広大でありながら、0.4に迫る視力換算値を持っているというのは驚異的です。
一方、高いコストパフォーマンスを示している機種は、HP ReverbとPico G2 4kの2つです。Pico G2 4kはコンテンツが限られていると聞きますので、ベストバイは、HP Reverbと言えます。ただし、HP Reverbの性能を発揮できるのは、NVIDIA RTX 2080以上のGPUを積んだPCが必要となる点は、ハードルが高いと言わざるを得ません。
※現在(2020/1/5)、HPの直販店では、キャンペーンで¥49,800となっています。