Oculus Linkが大幅アップデート! FacebookはRift Sの息の根を止めに来た!?
Oculus Quest 2やOculus Questの機能の一つ、Oculus Linkが大幅にアップデートしました。世の中的には90Hzへの正式対応がもてはやされていますが、本当の狙いは何でしょうか。
実際に動かしてみて、考えてみます。
Oculus Link のアップデート内容
Oculus Quest 2のリフレッシュレートと、解像度が選べるようになりました。
選択できるリフレッシュレート
以前までは、72Hz固定でしたが、今回のアップデートで80Hzと90Hzがサポートされました。
- 72Hz
- 80Hz
- 90Hz
リフレッシュレートが高いほど、画面の書き換えが早くなり、頭の動きと映像のズレが小さくなります。結果としてVR酔いを起こしにくくなるため、リフレッシュレートが上がることは非常に有意です。
選択できるレンダリング解像度
レンダリング解像度は、従来は「パフォーマンスを優先」「バランス」「品質を優先」の3種類でしたが、今回から15段階に変貌を遂げました。
なお、レンダリング解像度を変更すると、アプリの再起動が必要になる点は、依然と同様です。
レンダリングの解像度を変更する効果については、下記の記事にてまとめています。ご参考までに。
従来の解像度
表示 | Oculusアプリ表示相当(両目分) | SteamVR表示解像度(片目分) |
---|---|---|
パフォーマンスを優先 | 3552 x 1808 | 1776 x 1808 |
バランス | 4128 x 2080 | 2064 x 2080 |
品質を優先 | 4704 x 2368 | 2352 x 2368 |
新しい解像度
従来の解像度と新しい解像度は、完全には一致しません。
表示倍率 | Oculusアプリ表示解像度(両目分) | SteamVR表示解像度(片目分) |
---|---|---|
0.7x | 2784 x 1408 | 1392 x 1408 |
0.7x | 2944 x 1504 | 1472 x 1504 |
0.8x | 3104 x 1584 | 1552 x 1584 |
0.8x | 3248 x 1648 | 1624 x 1648 |
0.8x | 3440 x 1744 | 1720 x 1744 |
0.9x(パフォーマンスを優先) | 3616 x 1840 | 1808 x 1840 |
0.9x | 3696 x 1872 | 1848 x 1872 |
0.9x | 3920 x 1984 | 1960 x 1984 |
1.0x(バランス) | 4128 x 2096 | 2064 x 2096 |
1.0x | 4208 x 2128 | 2104 x 2128 |
1.1x | 4464 x 2256 | 2232 x 2256 |
1.1x(品質を優先) | 4704 x 2384 | 2352 x 2384 |
1.2x | 4848 x 2448 | 2424 x 2448 |
1.2x | 5136 x 2608 | 2568 x 2608 |
1.2x | 5408 x 2736 | 2704 x 2736 |
目安として、近しい解像度の項目に青文字を入れました。上にも下にも、大きく変化させることが出来るようになりました。
新しい解像度の基準(1.0x)は、従来の「バランス」設定と近いことが分かります。
SteamVRの解像度と比較確認
Oculusアプリ上では、両目分の解像度が表示され、SteamVRの設定画面では片目分の解像度が表視されます。
片目分、両目分の差はあれど、両者共に同じ解像度を示しています。
1.0x:標準値
Oculusアプリ
SteamVR
0.7x:最小値
Oculusアプリ
SteamVR
1.2x:最大値
Oculusアプリ
SteamVR
解像度の下限を広げた意味
今回のOculu Linkの正式リリースでは、90Hzに対応した点がクローズアップされているが、本当に見るべき点は、解像度の下限が広がった点でしょう。
これは、明らかに来年度(2021年)にOculus Rift Sの販売終了に向けた布石です。
Oculus Rift Sは、Oculus Quest 2よりもレンダリング解像度が低く、且つDisplayPortでつながっているためPCへの負荷は低くなっていました。
今回、Oculus Linkで低い解像度のレンダリングをサポートすることによって、PCの要求スペックを下げ、比較的スペックの低いPCでもOculu Linkでストレスなく使えるようにした、ということです。
これによって、「Oculus Quest 2を買ったら、Oculus Rift Sが要らないよね!」と言えるようになったわけです。
確認を取ってみた
最低解像度での動作確認
個人的に所有しているDELL G5 5500にて、Oculus Quest 2の最低解像度で各アプリのフレームレートを調べてみました。
DELL G5 5500のVR性能については、下記の記事にてまとめています。ご参考までに。
縦軸がフレームレート、横軸が画素数(縦の解像度 × 横の解像度)です。
Oculus Rift S パフォーマンスを優先 | Oculus Rift S 品質を優先 | Oculus Quest 2 最低解像度 | |
画素数 | 4.9Mpx | 5.9Mpx | 4.0Mpx |
BEAT SABER | 250fps | 252fps | 341fps |
Half Life:ALYX 低画質 | 117fps | 107fps | 158fps |
Half Life:ALYX 最高画質 | 95fps | 87fps | 96fps |
SteamVR Home | 114fps | 107fps | 136fps |
Asgard’s Wrath 簡単 | 94fps | 78fps | 99fps |
Asgard’s Wrath 高 | 64fps | 56fps | 70fps |
【セルの色】水色:90Hz以上、黄色:72Hz~90Hzまで、赤:72Hz以下
こうしてみると、今回追加された解像度の下限値は、Oculus Rift Sよりも小さいことが分かります。また、同じアプリであれば、Oculus Quest 2のフレームレートが、Oculus Rift Sのフレームレートを上回っていることが分かります。
描く絵が小さくなれば、当然早く書けるようになるので、フレームレートは上がります。
今回のOculus Linkの正式リリースと共に、Oculus Quest 2のPCでのVR体験は、Oculus Rift Sを速度では上回っています。
近しい解像度での動作確認
次に、Oculus Rift Sの解像度と近しいレンダリング解像度でのテストを行いました。
Oculus Rift Sの設定 | Oculus Rift Sの レンダリング解像度 | 選択したOculus Quest 2の レンダリング解像度 |
---|---|---|
パフォーマンスを優先 | 4.9Mpx 1504 x 1616px(片目) | 4.9Mpx 1552 x 1584px(片目) |
品質を優先 | 5.9Mpx 1648 x 1776px(片目) | 6.0Mpx 1720 x 1744px(片目) |
「パフォーマンスを優先」設定相当では、各アプリのフレームレートは下記のようになりました。
Oculus Quest 2の方が、およそ1割程度フレームレートが遅くなっています。
また、「品質を優先」設定相当でも、同様の結果となりました。
結論としては、同一のレンダリング解像度ならば、Oculus Quest 2よりもOculus Rift Sの方が1割ほど処理が早い、となります。
Oculus Rift Sは映像のレンダリング後には、そのままRift Sのモニターに映像を映せばいいのに対して、Oculus Quest 2は、映像のレンダリング後にUSBケーブルで伝送するために画像の圧縮する作業が入ります。その分だけ、Oculus Quest 2はOculus Rift Sよりも、処理に時間がかかっているのでしょう。
まとめ
Oculus Linkが正式リリースとなりました。
結果、Oculus Quest 2が90Hzに対応したほか、レンダリング解像度の最大値、最小値の幅が拡大されました。
同一の解像度ならば処理が少ない分Oculus Rift Sの方がフレームレートは稼げます。が、今回のアップデートでOculus Quest 2の解像度の設定が増えました。
Oculus Quest 2では、フレームレートの観点から見ると、解像度を下げてあげることによって、Oculus Rift Sを接続した時以上のVR体験が実現できています。
Oculus Rift Sを新規に購入する費用があるのならば、PCのGPUをワンランク上げた方が良いでしょう。Oculus Rift Sを購入する意義が無くなっています。
Facebookは、Oculus Rift Sの息の根を止めに来ているということでしょう。