32スレッドCPU 「Ryzen 9 3950X」は Insta360 Studioの Renderで 性能を発揮できるのか

2020年1月10日

180度3D映像が撮影できるInsta360 EVO用のRenderアプリ「Insta360 Studio 2019」は、動画の発色を良くするColor Plusという機能が搭載されています。

このColor Plusという機能は、CPUへの負荷が大きいのですが、果たして32スレッドCPUである「Ryzen 9 3950X」で高速にRenderできるかどうか試してみました。

(参考)Premiere Proの結果

Ryzen 9 3950XでPremiere Proを使って、動画のソフトウェアエンコードを行った時の結果を下記にまとめています。ご参考までに。

結論としては、5.7k画質VR180映像のエンコードでは、Ryzen 9 3950Xは40%程度しか稼働しない結果となりました。

(参考)Insta360 Studio 2019のReder機能

下記の記事に、Insta360 Studio 2019のRenderテスト結果をまとめています。ご参考までに。

検証環境

Ryzen 9 3950XのPC

下記で紹介しているFRONTIERのBTOパソコンを使用しました。定格で動作させています。

パーツ名メーカー品番
OSmicrosoftWindows 10 Home
CPUAMDRyzen 9 3950X
メモリー16GB 2枚
GPUMSIGeForce RTX 2080 SUPER
マザーボードASROCKAMD X570 チップセット搭載マザーボード

比較用PC

2018年モデルのDELL G5です。動作は定格で行っていますが、メモリーを増設したり、GPU BOXをつないでみたりと、ノートPCでありながら、そこそこエンコードできる環境にしてきたつもりです。

項目メーカースペック
CPUIntelCore i7-8750H
memorySAMSUNG64GB
GPUNVIDIAGeForce GTX 1060 Max Q
GeForce RTX 2070(GPU BOX)

2台のPCのCINEBENCH(R20)の結果

下記の記事にも記載いたしましたが、CINEBENCH(R20)でのMultiコアでのスコアでは4倍程度の差があります。

アプリケーションのバージョン

Insta360 Studioは、現状(2020/1/11)で最新のv3.4.2を使用しています。

メーカーアプリ名バージョン
Shenzhen Arashi VisionInsta360 Studio 2019v3.4.2

検証に使用した動画

検証に使用した動画は、Insta360 EVOで撮影した180度3D動画です。

カメラ設定
Insta360 EVO5.7k画質
HDRモード(25fps)

この動画から適当にジャスト1分になるように範囲を選択してRenderします。

Render時の設定は下記通り。Color PlusもRemove GrainもONの設定です。

項目設定
codecH.264 100Mbps
Color PlusON
Remove GrainON
True AudioOFF

出力された映像はちょうど1分になっていることを確認しています。

Render時間の測定方法

Insta360 Studio 2019は、Renderにかかった時間を出力しないため、開始から終了時まで、スマートフォンのストップウォッチ機能で手動で時間を測定しました。

レンダーテスト

i7-8750Hの場合

下の図は、Render中のタスクマネージャーのスナップショットです。

CPUはほぼフル稼働、GPUは使われていないことが分かります。メモリーの使用率の増減はありません。

次に、Render出力にかかった時間は下記の通り。

1分の動画をかき出すのに、15分程度の時間がかかっています。

Ryzen 9 3950xの場合

次に、Ryzen 9 3950XでのRender中のタスクマネージャーのスナップショットです。

Premiere Proのときと同じく、CPUの駆動率は50%程度とフル稼働していません。また、GPUは遊んでいるようです。メモリーの増減もありません。

Renderにかかった時間は下記の通り、12分36秒です。

CPUのCINEBENCH(R20)での実力の結果は4倍の差があるのに対して、1.1倍程度の速度の差しか出ていません。

ちなみに、Ryzen 9 3950XのRender中の温度はMaxで79℃と、速度が低下するような温度にはなっていません。

Ryzen 9 3950Xで2ファイル同時Renderの場合

上記の結果、Ryzen 9 3950Xは50%程度の稼働しかしないのであれば、2ファイル同時のRenderができるのではないかと考えました。

Insta360 Studio 2019を2つ同時に立ち上げて、同じ条件で同時にRenderを行いました。

下の図のように、ほぼ同じ速度でRenderが進んでいきました。

その時のタスクマネージャーのスナップショットは下の通り。

CPUの駆動率は、75%前後で推移しています。

CPU温度はMaxでも74℃と、速度低下は起きない温度です。

ほぼ2つ同時にRenderが終了しています。結果は、19分7秒程度となり、1ファイル当たりのRender時間は短縮されたと言えます。

元データと出力データ、共にCドライブに設定しているため、ファイルへのアクセス時間は余分にかかっているはずです。

2ファイルを同時にRenderしたことで、CPUはちょっとは頑張ったといえるのでしょう。

まとめ

今回は、Insta360 Studio 2019で、最も処理の重たい作業であるColor PlusをONにした状態でのRenderをテストしてみました。

結果、処理にかかった時間は下記の通り。

条件Render時間CPU使用率
i7-8750H
1ファイル
14:29.7995%前後
Ryzen 9 3950x
1ファイル
12:36.0040%前後
Ryzen 9 3950x
2ファイル
19:06.7975%前後

この時の1ファイル当たりにかかった時間をグラフにすると下記の通りとなります。

2ファイル同時出力で、やっとi7-8750Hの1.5倍程度の速度という結果です。

CINEBENCH(R20)で4倍の性能差があることを考えると、Ryzen 9 3950Xのマルチスレッドの性能は活かし切れていないようです。

ポジティブに考えると、Ryzen 9 3950Xでは、Render中に他の作業をしても全く動作が重くなった感じがしません。

Zyzen 9 3950Xの特徴

・一つの処理自身はそこまで早くない
・複数の作業が、あまり速度を落とさずに処理できる

超他スレッドCPUを積んだPCの運用は、「早い処理」を求めるものではなく、「いろいろな作業を同時進行で行う」場合に性能が活かせるという認識が正しいようです。