MCPってなんだろう?〜AIってそのままファイルを読めないの?|MCP 第1回
手元のパソコンでAIを動かしていると、ある時点でこう思います。このAIは、同じパソコンの中にあるファイルを、そのまま読めないのだろうか。質問には答えてくれるのに、ファイルは読めない。ブラウザも開けない。画像も作れない。会話の外側には出てこられません。
その壁を越えるための仕組みが MCP(Model Context Protocol)です。日本語にすると「モデルに文脈を渡すための約束事」といったところで、名前だけ見ても何のことか分かりません。ところが中身は単純で、実際に使ってみると腑に落ちました。
MCPとは結局のところ何なのか。そしてAIは、なぜそのままではファイルを読めないのでしょうか。私が普段どう使っているかを見せながら、順に見ていきます。
2026年7月時点の内容です。MCPの仕様は、最新の 2026年7月28日版(2026-07-28)を参照しています。
AIは何ができなくて困っていたのか
LLM(大規模言語モデル。文章を扱うAIの本体)は、ごく大雑把に言えば「文章を受け取って、続きの文章を返す」だけの部品です。渡された文章の外側にあるものには、原理的に手が届きません。
手元のファイルを読ませたければ、人間が中身をコピーして貼り付ける必要がありました。天気を聞いても、学習した時点の古い話が返ってくるだけです。画像を作らせたくても、AI自身は絵を描く機能を持っていません。
この「外側に手が届かない」問題を、各社がそれぞれのやり方で解決しようとしていた時期がありました。ツールを呼び出す仕組みは製品ごとにバラバラで、あるAIで作った拡張は別のAIでは動きません。作る側からすると、対応したいAIの数だけ同じものを作り直す必要があったと考えられます。
MCPは何を決めたのか
MCP が決めたのは、AIと外部機能のあいだの「話し方」です。Anthropic が2024年に公開し、その後は特定の企業のものではなく、複数の会社が参加する共通の規格として運用されています。
話し方が共通になると何が起きるか。一度作った拡張が、対応しているAIならどれでも動きます。USBの端子の形が決まっているおかげで、どのメーカーのマウスでもどのパソコンにも挿さるのと同じ話です。MCPを「AI版のUSB端子」と説明する記事をよく見かけますが、この例えはよくできていると思います。
「サーバ」という言葉が出てくると身構えてしまいますが、多くの場合は自分のパソコンの中で動く小さなプログラムです。どこかに契約して借りるものではありません。この点は第3回でくわしく扱います。
実際に何が起きているのか、手元の画面で見てみる
説明だけでは掴みにくいので、私がこのブログの作業で日常的に使っているものを挙げます。いずれもデスクトップPC(Ryzen 9 3950X / RTX 3090)と、ミニPCの GMKtec EVO-X2(以下、EVO-X2)で動かしています。
| 入れているMCPサーバ | これで何ができるようになったか |
|---|---|
| Ollama 連携 | 手元で動かしているローカルLLMに、AIアシスタント側から直接仕事を投げられる |
| ComfyUI 連携 | 画像生成を会話の流れの中から呼び出せる |
| ブラウザ操作 | ページを開く、内容を読む、画面を撮る |
| 他社モデルへの相談 | 同じ問題を別のAIにも聞いて突き合わせる |
使っていて分かったのは、MCPを入れるとAIの「賢さ」が上がるわけではないということです。上がるのは行動範囲です。同じモデルのまま、できることの幅だけが広がります。
MCPサーバは3種類の道具を持っている
仕様上、MCPサーバがAIに差し出せるものは3つに分かれています。呼び名だけ知っておくと、公開されているサーバの説明が読みやすくなります。
この中で気をつけたいのはツールです。読むだけのリソースと違い、実際に何かを変えてしまいます。ファイルを消すツールを持ったサーバを入れれば、AIはファイルを消せます。便利さと危うさは同じところから来ています。
ローカルLLMでもMCPは使えるのか
このブログの読者として気になるのはここだと思います。答えは「使えるが、モデルを選ぶ」でした。
MCPを使うには、AIが「いま道具を呼ぶべきだ」と判断し、決められた形式で呼び出す必要があります。この能力はモデルの規模と学習内容に依存しており、小さいモデルほど怪しくなります。手元で試した範囲でも、道具を呼ぶべき場面で普通に文章で答えてしまったり、呼び出しの形式を間違えたりする様子が見られました。
クラウドの最前線のモデルが道具の扱いに慣れているのに対し、手元で動く規模のモデルはまだ差があるようです。とはいえ「まったく使えない」わけではなく、道具の数を絞る、指示を具体的にする、といった工夫で実用になる場面もありました。ここは第3回であらためて触れます。
仕様が大きく変わったばかりだと知っておくと、混乱しない
この記事を書いている最中に、MCPの仕様が新しくなりました。2026年7月28日版です。公開以来もっとも大きな変更だと紹介されており、実際に読んでみると土台の部分が入れ替わっていました。初めて触る人が古い解説を読んで戸惑わないよう、要点だけ書いておきます。
変わったのは、繋ぎっぱなしを前提にしなくなったところです。これまでは最初に「よろしくお願いします」という挨拶を交わし、以後は同じ通話を続ける電話のような形でした。新しい仕様では挨拶が無くなり、毎回の依頼に必要な情報を添えて出す手紙のような形に変わりました。専門用語ではステートレス(状態を持たない)と呼びます。
つないだ相手を
Mcp-Session-Id で覚えておく切れたら、もう一度かけ直す
挨拶(
initialize)と Mcp-Session-Id は廃止覚えておきたいことは、依頼文の中に書いて渡す
ただし、やりとりが丸ごと消えたわけではありません。server/discover という問い合わせが新しく必須になり、相手が何に対応しているかを1回で聞けるようになっています。手続きが無くなったのではなく、置き場所が移ったと捉えるほうが近いです。
そして大事なことをひとつ。ここまで見てきた「登場人物3つ」と「道具3種類」は、この改訂でも変わっていません。初めて触る人が覚えることが増えたわけではないので、その点はご心配なく。
一方、手元でAIを動かす人には引っかかる変更もありました。サンプリング(Sampling)が非推奨になったことです。これはMCPサーバの側から「あなたのAIを少し貸してください」と頼める仕組みで、公式に示された移行先は「LLMの提供元のAPIに直接つないでください」というものでした。手元のモデルをサーバ側に使わせる道は、細くなった形です。すぐ消えるわけではなく、非推奨になった機能は最低12か月残ると定められています。
まとめ:MCPは賢さではなく行動範囲を広げるもの
第1回で押さえておきたいのは、次の3点です。
- MCPは AIと外部機能のあいだの共通の話し方を決めた規格。一度作った拡張がどのAIでも動くようになった
- 利用者が選ぶのはMCPサーバだけ。多くは自分のパソコンの中で動く小さなプログラム
- MCPで上がるのは行動範囲であって、モデルの賢さではない
- 仕様は 2026年7月28日版で繋ぎっぱなしをやめた(ステートレス化)。ただし登場人物3つと道具3種類は変わっていない
では、そのMCPサーバは実際にどれくらいあって、何を入れればいいのでしょうか。次回は公式の登録所を実際に数えたうえで、用途別に整理してみます。
参考にしたサイト
initialize と Mcp-Session-Id の廃止・server/discover の新設・サンプリングの非推奨化は、すべてここに記載がある確認日 2026年7月30日。仕様の参照版は 2026-07-28(現行)です。







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