一般向けVRカメラで360度3D映像は作れるのか? 検証してみた
現在市販されている一般向けのVRカメラは大きく分けて2種類あります。
- 360度2Dカメラ
- 180度3Dカメラ(VR180)
これら一般向けのVRカメラを使って、360度3D映像が作れるのかどうか、検証をしてみました。
VR映像の違い
360度2D映像
Richo Thetaシリーズに代表される360度カメラで撮影できます。
いわゆる360度パノラマ映像です。
これらの映像は、表と裏とに設置された二つの超広角レンズで、撮った映像をソフトウェアで処理してパノラマ映像に作る紺である場合がほとんどです。
垂直方向 | 180度 |
水平方向 | 360度 |
視野数 | 1視野 |
VRゴーグルやHMDを使うことによって、臨場感あふれる映像にはなりますが、1視野分のデータしかないために、立体的には見えません。
180度3D映像(VR180)
Googleによって提唱された企画です。
片目180度の映像を左右の計2視野分ある映像です。
垂直方向 | 180度 |
水平方向 | 180度 |
視野数 | 2視野 |
両目のデータがあるために、立体的な映像を見ることが出来ます。まるでその場にいるかのように、高い臨場感が得られます。
ただし、映像自身が前方180度しかないため、VRゴーグルやHMDを使用した場合、横を向くと暗黒の世界が待っています。
360度3D映像
現状、一般向けのVRカメラでは撮影することが出来ません。
Insta360 Proシリーズ、TITAN、Kandao社のObsidianシリーズなど、プロユースのカメラでの撮影が必要です。
とても一般人が買える値段ではないですし、そもそも気軽に持ち運べるような大きさ・重さでもないです。
これらの映像は、左右の視野それぞれの視野の映像を持ち、且つ、それぞれの360度の視野を持っています。
垂直方向 | 180度 |
水平方向 | 360度 |
視野数 | 2視野 |
一般的には、左視野が上、右視野が下に並んだ正方形の映像となるようです。
何処を見ても立体的に見え、臨場感が最も高い映像です。
疑問点「視野の定義」
360度3D映像を作るにあたって、視野の定義は何なのでしょうか。
考えられる定義は以下の二つでしょう。
- 右眼の位置、左眼の位置を固定としたもの。
- 右眼の位置、左眼の位置について相対位置を保ちつつ回転したもの。
1.は分かりやすいですね。360度カメラを二つ並べて撮影すれば、この映像が作れます。でも、これって、どうなのでしょうか? 後ろに回ってしまうと、左右の視野は逆転してしまいます。
2.は、人間の眼を模擬した形となります。普通、人が360度辺りを見渡すとき、右目の位置と左目の位置関係は、どんどん移動していきます。180度3Dカメラで前後を撮影するとこの形になるはずです。
例えば、前方に青いボールと赤いボールが並んで置いてある。同様に後ろにも緑のボールと黄色いボールが並んで置いてある場合を考えてみます。
360度カメラ2台で撮影した場合、前方向は人の眼と同じ様に映りますが、後ろ方向は、左右が弱点してしまいます。
同様に、2.の場合を考えてみます。この場合当然、後ろ方向の視野が上のイラストと左右入れ替わったものとなります。
実際に360度3D映像が出来るのかどうか、上記の視野の定義を意識しながら検証してみます。
検証
実際に写真を撮影してみて検証してみます。
※現状、立体視していただくサンプル映像は準備出来ていません。
使用した機器
カメラはInsta360 EVOを使用します。Insta360 Studio 2019でJPEGに変換したのちに、Adobe After Effectsを使って、Adobeイマーシブ環境にて立体感を検証しました。
Adobe After Efectsでは、Insta360 EVOの出力サイズである6080px × 6080pxのコンポジションを作りました。
Insta360 EVOは、ビデオ撮影用の雲台に取り付けています。360度撮影をする時は、この雲台に取り付けたまま、パカッとInsta360 EVOを閉じてあげれば、位置ずれを起こさず撮影できるという寸法です。
Insta360 EVOと雲台のクイックシューは、1/4ネジで固定されています。
180度3Dモードの全面を撮影し、
クイックシューを入れ替えて、後ろ側を撮影します。
また、360度モードにして、
クイックシューを入れ替えて、反対側も撮影します。360度モードでは、軸が2cmほどズレる点については、今回は目を瞑ります。
360度写真を位置をずらして撮影した場合
まずは、Adobe After Efectsのコンポジションの中に、左視野相当の360度写真を突っ込みます。
左視野分を上に持っていき、右視野分を下に張り付けます。
右視野分にエフェクトの「VR回転」で、パン方向に180度回転させれば終了です。
雲台が大きく映り込んで下の部分はいびつな映像になっている点は、無視します。
次にHMDの形っぽいアイコンをクリックし、「360上/下」を選択。
そのまま、「ビデオプレビューの環境設定」をクリックし、Adobeイマーシブ環境を起動します。
これで、HMDを覗くと、確かに立体的に見えています。が、後ろを向くと焦点が合いません。
やはり、この方法では360度3D映像は作れないようです。
180度3D写真を前後2枚撮影した場合
先ほどと同様のコンポジションに前後の映像を持ってきます。
後ろ側の映像を、エフェクトのVR回転でパン方向に180度回転させます。
写真を合成するにあたり、今回はエイヤーでモードを「比較(明)」にしてみました。露光がズレているようで映像のつなぎ目がハッキリしすぎています。
前方の写真にエフェクトの「Lumetriカラー」を適用して、露出を調整しました。そこそこ綺麗につながったのではないでしょうか。
この状態で、HMDを覗いてみます。
結果、前方・後方共に、立体的に見ることが出来ました。
左右の映像のつなぎ目は2重に見えたり、色が微妙に違っていたりするようですが、今回は検証なので、ここまでとします。
まとめ
今回は、一般向けのVRカメラInsta360 EVOを用いて、360度3D映像が作れるのかどうか、検証を行いました。
・360度カメラでは、360度3D映像の作成は困難
・180度3Dカメラを用いれば、360度3D映像が作成できる可能性がある
360度カメラでの映像では、後ろに回った時に、左右が反転してしまいます。よって、何かしらの画像処理をして、左右の視野を入れ替えるような作業が出来るのであれば、360度3D映像が作れるかもしれませんが、ちょっと現実的な作業量ではないように思います。
一方、180度3Dカメラを用いれば、少なくとも、前後は綺麗な3D映像が見れます。つなぎ目をきれいにしようと思うと困難ではありますが、手軽に360度3Dっぽい映像が作れそうです。
というわけで、居ても立ってもいられずmInsta360 EVOの2台目を購入し、検証を始めています。いい映像が出来ればいいのですが、どうなる??
もし、これで360度3D動画が撮れるのだったらすごくないですか?
10万円弱で、数十万円相当の機材と似たような事が出来るなら、お遊びとしては上等なのではないでしょうか。
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