Oculus Rift S はOculus readyのノートPCでも動かない? DisplayPortが超曲者

2019年5月24日

Oculus Rift SはDisplayPortとUSB3の端子で繋ぐ必要があります。

スペック上動作出来るはずの私のノートPC、昨年発売されたDELL G5(5587)は、「Oculus ready」シールの貼られたモデルですが、どうやらPC単体ではOculus Rift Sは動かないようです。原因などを軽くまとめます。

Oculus ready シール

DELL G5 スペック vs Oculus Rift S 推奨スペック

私のPCのスペックを軽く書いていきます。スペック上はOculus Rift Sの推奨スペックをカツカツですが満たしています。

項目スペックOculus Rift S
推奨スペック
Oculus Rift S
最小スペック
CPUCore i7-8750Core i5-4590
Ryzen 5 1500X
以上
Core i3-6100
Ryzen 3 1200
FX4350
memory16GB8GB以上8GB
GPUNVIDIA GeForce GTX 1060
Max Q 6GB GDDR5
NVIDIA GTX 1060
以上
GTX 1050Ti
GTX 960
Radeon RX 470
Radeon R9 290
ポート・USB 3.1 Type-A x 3つ
・Thunderboltと
 DisplayPortをサポートする
Type-C Thunderbolt3
・HDMI2.0
etc.
DisplayPort1.2
USB 3.0 x 1つ
DisplayPort1.2
USB 3.0 x 1つ

ちょっと傷んでますが、「Oculus ready」のシールが貼ってあります。

流石に型落ちしているので、同じモデルはもうないみたいですが、下記の公式サイトにスペック等載っています。

注意すべきはここ。下記の絵の赤枠で囲ったところです。

Thunderbolt接続で、DisplayPortをサポートする、と言った内容と見ることが出来ます。

と言うことで、私は「Thunderbolt-DisplayPort変換アダプターがあれば動く」と考え、Oculus Rift Sを購入しました。

準備した物

Thunderbolt-DisplayPort変換アダプターの安物を二種類準備しました。

注意した点は、「Thunderbolt接続対応」である点。

「USB Type-C / DisplayPort変換アダプター」である場合、変換アダプター内に簡易なドライバーICが内蔵されています。こうなると、Thunderbolt接続では無くなり、単にUSB接続でポートが増設されるだけ。PCの内蔵GPUへ接続する可能性は皆無です。

Thunderbolt3-DisplayPort変換アダプター

Cable Matters USB C DisplayPort 変換アダプター
14cm×7cm程度の箱に入って届きました。
本体の他に説明書が入っていました。
ケースは樹脂です。

PCに接続してみました。ドライバーのインストールの必要も無く、ちゃんと内蔵GPUに接続されているようです。

USB Type-C端子に接続すると、アダプターのLEDが点灯します。

Thunderbolt3-mini DisplayPort変換アダプター

素晴らしい安さ。これでちゃんと動くんだったら儲けものです。

袋に入って配送されました。
本体以外は何も入っていません。ケースはひんやりしています。アルミでしょうか。

上記と同様にPCに接続してみました。こちらもドライバーも要らず、内蔵GPUに接続できているようです。

Oculus Rift Sが動かない

下記の公式ページより、ソフトウェアをダウンロードしてインストールしていきます。今回は詳細は省略します。

が、上記のどちらのアダプタを使っても、セットアップ画面で、DisplayPortの項目にチェックが入りません。

上の図の「詳しくはこちら」をクリックすると下記のページが出てきますが、解決策は出てきません。

当然、「設定をスキップ」して、Oculusのソフトウェアのインストールを終了させました。

PCの再起動等をしても、Oculusのソフトウェア上ではDisplayPortが接続されていないと出てきます。

NVIDIAコントロールパネルを見てみる

こうなると、PC側のデバイス設定が怪しくなってきます。

デスクトップで右クリックし、NVIDIAコントロールパネルを立ち上げてみます。

PhysX構成を見てみました。

すると、ディスプレイ2つがIntel UHD Graphics 630にぶら下がっている図が書いてありました。

ラップトップディスプレイはノートPCの液晶モニタです。TVとなっているのはOculus Rift Sのことっぽいです。

Geforce GTX 1060につながっている絵は? もしかして、Geforce GTX 1060に接続できるのは、HDMI端子だけ?

試しに、HDMI端子に外付けモニターを接続してみると、ビンゴです! Geforce GTX 1060にディスプレイの型番が表示されました(何故か、Intel GPUやラップトップディスプレイが消えましたが)

ディスプレイの詳細設定を見てみる

Windowsの設定画面から、「ディスプレイの詳細設定」を見てみました。

接続しているモニターは二つ。

  • Thunderbolt-DisplayPort変換アダプターを介したOculus Rift S
  • HDMI端子に接続した外付けモニター(22EN43)
上:ノートPCの液晶モニタ
中:Oculus Rift S
下:外付けモニター

これを見ると、Oculus Rift SはIntel GPUにつながってしまっています。この状態では、Oculus Rift Sの動作スペックを満たせません。

考察

これを見て、納得したと共に、がっかりとしました。これではDELL G5ではThunderbolt-DisplayPort変換は絶望的です。

理由を順を追って説明します。

Thunderboltって、デスクトップPCのPCI-eボードと同等の規格がスタートです。

つまりは、Thunderboltにデバイスを接続すると言うことは、デスクトップで言うところの、PCI-eボードを増設するのと同義と考えて良いでしょう。

PCを自作したことがある方なら、下を見て頂けると、イメージ出来るかと思います。多分、私の使っているDELL G5をデスクトップ風に書くと、こんな感じになっているかと思います。

DELL G5の中身が自作PCだったら、というイメージ図

更に乱暴にグラフィック系だけを簡略化したものが下の図です。

超乱暴に、グラフィック系のみ抜き出して書いたイメージ。
ThuderboltがGeforce GTX 1060につながってません。

Thunderbolt端子はマザーボードに付いているので、CPU内蔵のGPUにしかつながりません。

グラフィックボード(Geforce GTX 1060)にはHDMI端子しかありません。Oculus Rift SはグラフィックボードのDisplayPortに直接接続する必要があります。

と言うわけで、、、

ツンダ!!! \(ToT)/

DELL G5の解決方法としては、Thunderbolt接続のGPUボックスを購入する、の一択なのではないでしょうか。

HDMI-DisplayPort変換の可能性は?

下記のサイトで議論されています。が、結論から言うと「無理」とのこと。

そもそも、HDMIとDisplayPortは互換性のあるポートではないので、変換は現実的ではありません。

Oculusの公式サイトの見解

下記の公式サイトを見ると、「PC本体にDisplayPortが付いてないなら、動作保証出来ないよ」という見解のようです。

NVIDIA Optimus TechnologyとOculus Rift S

NVIDIA Optimus Technologyっていう物があります。ノートPCで、Intel製CPUの他にnVIDIA製GPUを乗っけている場合、プログラム毎に、nVIDIAのGPUとIntelのGPUを割り振ることが出来る便利な機能です。

この機能を使って、Oculusのプログラムを内蔵GeForce GTX 1060に切り替えれるんじゃ無いか、と思われるかと思います。

ここで一個盲点が。NVIDIA Optimus Techologyは、出力ポートがIntelのGPU(IGP)前提での技術のようです。つまり、GeForce GTX 1060は裏方でガンガン計算して、IGPにデータ送って、IGPがディスプレイに出力するって方式。この場合、ディスプレイから見たGPUはIGPになります。

Oculus Rift Sは多分ですが、接続されたDisplayPortのGPUのドライバーの名前でも見に行ってるんではないでしょうか。ということは、PCに内蔵されているnVIDIA製GPUがあったとしても、Oculus Rift Sは「何だ、IGPやん。ショボいし使えへんやん」と思ってしまい、動いてくれないわけです。

これが意味するところは、Oculus Rift SはGPUに直結したDisplayPortでの動作を想定していると言うことではないでしょうか。下記にAdobe Premiere Proを使用時にVR環境を実現する、Adobeイマーシブ環境についてまとめていますが、こちらでは、Premiere Proのプログラムと、Oculus Rift Sが同一のGPU上で動き、且つ、メインディスプレイ設定で無いといけない、と言う制限がありました。

ノートPC内に複数のGPUが存在し、プログラム毎に使い分けることが出来たとしても、ハードウェア的に同一のGPUの接続を求められてしまうと、拡張性やハード的な自由度の低いノートPCでは厳しい物があります。

まとめ

PC本体にDisplayPortポートがない場合、Oculus Rift Sの動作はハードルがぐぐっと高くなることがお分かりいただけたでしょうか。

「うちのPCはThunderbolt3あるから、いけるかも」といって油断すると私の二の舞になります。確かめてみたいのでしたら、下記のようなアダプターで試してみるのもありかもしれませんが。1000円しませんし。

上記の商品を介してモニターに接続して、NVIDIAなり、AMDなりのGPU接続でモニターが表示されているのならば、Thunderbolt-DisplayPort変換でOculus Rift Sが動く可能性は高いのでは無いでしょうか。

個人的には、今回買ったThunderbolt-DisplayPort変換アダプターは死蔵決定ですね。

(追記:2019/5/30)GPUボックステスト

GPUボックスを購入してOculus Rift Sの動作を試しました。ご参考までに。

追記(2019/5/31) Thunderbolt3/DisplayPort変換アダプター

TwitterでThunderbolt3/DisplayPort変換アダプターで動作したと、教えてもらいました。

まぁ、前述の通り、Thunderbolt3/DisplayPort変換アダプターでは、CPUの内蔵GPUにつながってしまうようなので、私のPCでは使えないと思います。人柱覚悟でポチりました。

(追記:2019/6/3)追加購入したTB3/DPアダプターの動作結果

Twitterで動作したと報告があった物をテストしてみました。

Thunderboltにぶっさして、Oculus Rift Sを繋ぎます。

う~ん。やっぱりダメです。

ディスプレイ設定を見てみると、Oculus Rift Sは縦長ディスプレイとして認識されています。

ディスプレイの詳細設定を見ると、Oculus Rift SはIntelのGPUにつながっていると出ています。やはり、これが原因で動かないのでしょう。

ちなみに、GPUボックスを使って、Oculus Rift Sが正しく認識している時には、ディスプレイの設定画面には、Oculus Rift Sは出てきません。

下のスクリーンショットはOculus Rift S動作中のスクリーンショットです。

Oculus Rift Sはディスプレイとして認識されていません。これが正常なんでしょう。

(追記:2019/6/22)まだ購入していないのならば、Oculus Questという選択肢は?

上記のように、Oculus Rift SはDisplayPortのないノートPCではハードルが高いです。

では、いっそうのことOculus Questを使ってみるというのはどうでしょうか。Oculus Questには、USBケーブルをつなぐだけで、PC用HMD(ヘッドマウントディスプレイ)として使用できる「Oculus Link」という機能があります。

また、Oculus QuestをWifi接続でPCに接続して、PCVRゴーグルとして使用するアプリが複数あるようです。
私はALVRを試してみました。
ワイヤレスでPCVRが使える手軽さには驚きました。

もっとも、ワイヤレスでの通信は、

  1. アプリ自身が開発中だったり不完全
  2. 高速Wifi環境が必要
  3. Wifi接続のため、コンマ数秒遅延が出る。タイミングがシビアなゲームには向かない
  4. 遅延の影響でVR酔いしやすい

といったデメリットもあるようです。

DisplayPortが無いノートPCでVRを楽しみたい場合は、Oculus Questという選択肢も良いのではないでしょうか。