VRカメラ 運動会や発表会で使える? 数字で検証
360度カメラや、180度3Dカメラといった、いわゆるVRカメラ、これらはハンディカムカメラの代わりとして、世のお父さん方の撮り疲れの救世主になるのかどうか、数字で検証しましたのでまとめます。
検証方法
現在一般に使われている360度カメラや、180度3Dカメラ(以下、VRカメラとまとめます)の映像は、正距円筒図法で処理されています。
地図でよく見る図法ですね。
この図法は、縦・横方向の画素数が、それぞれの角度に比例しているという特徴があります。
ここで、180度3Dカメラでは、片目相当が縦・横が同じ画素数、360度カメラでは、横が縦の2倍の画素数になっている場合がほとんどです。
正距円筒図法で処理をしているため、1度当たりの画素数がそろうようになっています。
さて、上の図のように、各カメラの撮影している角度は、下記の通りです。
カメラの種類 | 横方向 | 縦方向 |
360度2Dカメラ | 360度 | 180度 |
180度3Dカメラ(片目) | 180度 | 180度 |
これらを踏まえると、例えば、3600×1800画素(以下、ピクセル≒pxと略します)の360度3Dカメラの画像の1度当たりの画素数は、
横方向:3600px ÷ 360度 = 10px/度
縦方向:1800px ÷ 180度 = 10px/度
という事になります。
我が子は何ピクセル?
では、VRカメラでは我が子は何ピクセルくらいで映るのでしょうか。
ハンディカムと比較して、我が子はどう映るのか考えていきます。
想定する子供のサイズ
小学校低学年くらいのサイズを考えてみます。
例えば、身長120cmくらい、横幅は30cmくらいでしょうか。
この長方形の板が視点に対して絶えず垂直に存在しているという仮定で計算していきます。
想定するカメラの画素数
VRカメラの縦方向(画素数の少ない方)を基準として計算していきます。
カメラのうたい文句 | 縦の画素数 |
4kカメラ | 1920px |
5.7kカメラ | 2880px |
7kカメラ(Richo Theta Z1) | 3360px |
11kカメラ(Insta360 TITAN) | 5280px |
7kカメラは、Richo Theta Z1の写真の解像度を想定しています。
11kカメラは、業務用360度3DカメラであるInsta360 TITANを想定しています。
計算方法
計算方法は、単純に三角関数を使って、角度を求めます。
計算結果
ハンディカム想定ピクセル数
ハンディカムは自由にズームができ、子供を追って撮影が出来るという想定で考えていきます。
我が子の全身が縦の半分くらいに映るように撮影したとしましょう。
映像としては、下の絵のようなイメージです。
子供のサイズは、身長120cm、幅30cmです。
縦の画素数は、画面の半分。
横の画素数 = 縦の画素数 × 30cm / 120cm
です。したがって、
SD画質 | DVD画質 | フルHD画質 | 4k画質 | |
縦の画素数 | 120px | 240px | 540px | 1080px |
横の画素数 | 30px | 60x | 135px | 270px |
子供のピクセル数 | 3,600px | 14,400px | 72,900px | 291,600px |
となります。
なお、この時の子供の顔のサイズが、例えば、20cm四方だとすると、
SD画質 | DVD画質 | フルHD画質 | 4k画質 | |
縦・横の画素数 | 20px | 40px | 90px | 180px |
顔のピクセル数 | 400px | 1,600px | 8,100px | 32,400px |
となり、SD画質ではもうドット絵の世界ですが、ギリギリ表情がモヤっととらえられそうな数字です。
全身で3,500px程度を限界として考えていいのではないでしょうか。
では、VRカメラはどうでしょうか。
4kカメラ
大抵の4kカメラの縦の画素数は1920pxです。1度当たりの画素数はおよそ11px/度です。
子供までの距離 | 1m | 2m | 5m | 10m | 20m |
横方向角度(度) | 17.1 | 8.6 | 3.4 | 1.7 | 0.9 |
縦方向角度(度) | 61.9 | 33.4 | 13.7 | 6.9 | 3.4 |
横方向画素数(px) | 182 | 92 | 37 | 18 | 9 |
縦方向画素数(px) | 661 | 356 | 146 | 73 | 37 |
画素数(px) | 120,215 | 32,598 | 5,351 | 1,343 | 336 |
5m離れただけで、SD画質ハンディカム程度に落ち込んでしまいます。10メートルも離れれば、表情は分からないでしょう。
運動場の向こう側の子供は豆粒です。
ハンディカムの代わりは荷が重すぎます。
5.7kカメラ
Insta360 One XやEVO、Vuze XRと言った、5.7kカメラの縦の画素数は2880pxです。1度当たりの画素数はおよそ16px/度です。
子供までの距離 | 1m | 2m | 5m | 10m | 20m |
横方向角度(度) | 17.1 | 8.6 | 3.4 | 1.7 | 0.9 |
縦方向角度(度) | 61.9 | 33.4 | 13.7 | 6.9 | 3.4 |
横方向画素数(px) | 273 | 137 | 55 | 27 | 14 |
縦方向画素数(px) | 991 | 534 | 219 | 110 | 55 |
画素数(px) | 270,484 | 73,345 | 12,041 | 3,022 | 756 |
このクラスのカメラになると、2mくらい離れた子供なら綺麗に映せるでしょう。10mでSD画質程度。表情までは厳しそうです。
7kカメラ
Richo Theta Z1を想定しています。縦の画素数は3360px。1度当たりの画素数はおよそ19px/度です。
子供までの距離 | 1m | 2m | 5m | 10m | 20m |
横方向角度(度) | 17.1 | 8.6 | 3.4 | 1.7 | 0.9 |
縦方向角度(度) | 61.9 | 33.4 | 13.7 | 6.9 | 3.4 |
横方向画素数(px) | 318 | 160 | 64 | 32 | 16 |
縦方向画素数(px) | 1156 | 623 | 255 | 128 | 64 |
画素数(px) | 368,159 | 99,830 | 16,389 | 4,113 | 1,029 |
画素数だけの比較でいうと、5.7kカメラと比べて、劇的な変化はありませんが、10m先でもSD画質よりは解像度が上がってきます。
とは言え、運動場の向こう側の子供の表情は捉えきれないのではないでしょうか。
11kカメラ
業務用のVR360カメラInsta360 TITANを想定しています。縦の画素数が5280px。1度当たりの画素数は約39px/度です。
子供までの距離 | 1m | 2m | 5m | 10m | 20m |
横方向角度(度) | 17.1 | 8.6 | 3.4 | 1.7 | 0.9 |
縦方向角度(度) | 61.9 | 33.4 | 13.7 | 6.9 | 3.4 |
横方向画素数(px) | 500 | 252 | 101 | 50 | 25 |
縦方向画素数(px) | 1817 | 980 | 401 | 201 | 101 |
画素数(px) | 909,127 | 246,519 | 40,470 | 10,156 | 2,541 |
このクラスのカメラですら、5mも離れるとフルHDハンディカムに劣るようです。とは言え、15m離れてもSD画質以上はあります。
このクラスのカメラを使えば、ようやくトラックの狭い、保育園や幼稚園クラスの運動会の撮影で、ハンディカムの代わりになるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、画素数から子供の運動会や発表会で、VRカメラがハンディカムの代わりになるかどうかを検証してみました。
子供の運動会や発表会では、民生レベル用のVRカメラは、ハンディカムの代わりにはならない。
という結論となります。
とは言え、「VRカメラが使えない」という事ではありません。
ハンディカムとVRカメラは別物だと考えるべきです。
私自身360度カメラを固定しながら、ハンディカムでの撮影もしています。
VRカメラでは、後で「追体験」が出来るため、自分がその場にいた場合は、画素数以上に記憶がよみがえります。
また、応援している家族の様子など、その場ではなかなか見れない人の姿を見ることが出来るなど、ハンディカムとは違った楽しみ方も出来ます。
ハンディカムは子供の表情の記録、VRカメラで「場」の記録が出来るのではないでしょうか。
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