GPU比較 VRMARK ベンチマーク結果からVR性能を考える

2020年9月26日

3DMARK等のパソコンのパーツの性能を計る「ベンチマーク」アプリで有名な、フィンランドのソフトウェア開発会社「Futuremark」社が手掛けるVR用のベンチマークアプリが「VRMARK」です。

このVRMARKのベンチマーク結果から、VR体験をするためには、最低限どれくらいのGPUを持っていれば良いのか、検証してみます。

VRで求められるGPU

推奨GPUについて考えてみます。HMDメーカーが推奨するGPUの性能を満たせば、ある程度のVRアプリが対応していると言えるでしょう。

Oculus Rift S, Oculus Quest(Oculus Link)の推奨GPU

ここでは比較的軽いHMDであるOculusシリーズについて考えます。公式サイトを見ると、推奨GPUは下記の通り。Oculus Rift Sの方が若干Oculus Questよりも低いGPUでも動作します。

HMD推奨GPU
Oculus Rift SGTX 1060-3GB以上
Oculus Quest (Oculus Link)・GTX 1060-6GB以上
・GTX 1650 SUPER以上
且つ、GTX 1060(note PC)不可

と、ここで、Oculus Questの推奨GPUからGTX 1060のノートPC版がはじかれました。

ノートPCのGPUとデスクトップPCのGPUの性能は違う?

実は、同じ型番でもノートPCとデスクトップPCのGPU性能は大分異なります。

結論から言うと、ノートPCの方が性能が落ちます。理由は、GPUはものすごい計算量を一気にこなすので、発熱します。この熱が逃がすことが出来れば、性能を発揮できるのですが、ノートPCの場合、ファンも小さく熱がこもってしまうため、GPUの性能を生かし切れないのです。

というわけで、以下はデスクトップPCとノートPCを分けて考えます。

VRMARK の概要

Orange Room

DirectX 11対応の基本的なVR用ベンチマーク。

  • DirectX 11対応
  • 実施時解像度:2264 x 1348

Cyan Room

DirectX 12対応のOrange Roomよりちょっと重たいVR用ベンチマーク

  • DirectX 12対応
  • 実施時解像度:2264 x 1348

Blue Room

DirectX 11対応のかなり重たいVR用ベンチマーク。解像度は5kと、ハイエンドなHMDを想定している。

  • DirectX 11対応
  • 実施時解像度:5120 × 2880

ハイエンド向けなので、今回の検証では実施しない。

デスクトップPC ベンチマーク目安

VRMARKのサイトから各GPUの平均値を抜き出したグラフが下記のものです。

数字とグラフを並べますが、正直これだけ見ても、今一よくわかりません。次の項目まで飛んでもらっても良いでしょう。

Orange Room (平均値・デスクトップPC)

Cyan Room(平均値・デスクトップPC)

デスクトップPC ベンチマークから分かる性能

上記を踏まえて、Oculus Rift S, Oculus Questの両者が推奨対象となるGPU「GTX 1060-6GB」の性能を100とした時の、各GPUの性能を見てみます。

Orange Room

下のグラフは、VRMARK Orange Roomの「GTX 1060-6GB」のスコアを100とした時の各GPUのスコアです。

100を超えると、Oculusシリーズの推奨スペックを超えているということになり、反対に100より小さいと、Oculusシリーズの推奨スペックを満たしていない、ということになります。

「GTX 1650」は推奨値以下だけれども、「GTX 1650 SUPER」は推奨値以上の性能を持っていることが分かります。

GTX 1660系になると、かなり余裕が出てきています。

Cyan Room

同様に、「GTX 1060-6GB」のスコアを100として、DirectX 12対応のCyan Roomについて見てみます。

こちらも同様の結果です。

「GTX 1650」は推奨値以下だけれども、「GTX 1650 SUPER」は推奨値以上の性能を持っていることが分かります。

GTX 1660系になると、Orange Roomよりも、更に余裕が出てきています。

ノートPC ベンチマーク目安

一応、生データを並べますが、これを見ても判断が難しいです。

Orange Room (平均値・ノートPC)

Cyan Room (平均値・ノートPC)

ノートPC ベンチマークから分かる性能

こちらも、デスクトップ版の「GTX 1060-6GB」のベンチマーク結果を100とした場合のスコアを見ていきます。

Orange Room

 これを見ると、ノートPC版GTX 1060の性能は、デスクトップ版の80%程度です。Oculus Questの推奨からは外れていますが、Oculus Rift Sの推奨には入っています。このグラフで見る限り80%前後の性能が出ているGPUならば、そこそこ動く可能性があると考えられます。

Cyan Room

次にDirectX 12対応のCyan Roomの結果を見ていきます。

今度は割と顕著な差が出ています。GTX 1060では、推奨の7割程度に対して、GTX 1650 Tiは推奨の80割程度をキープしています。

検証:GTX 1650でOculusアプリを起動してみた

検証PC

使用したPCは、お借りしているLenovo Legion T530

項目内容
CPUIntel Core i7-9700
memory16GB
GPUGTX 1650

Oculusアプリを立ち上げる

Oculus Questをセットアップして、Oculusアプリを立ち上げると、「お使いのコンピューターはアップデートされた最小要件を満たしていないため、VRのパフォーマンスに問題が生じる可能性があります。」と表示されました。

実際にOculus Questの画面をのぞき込むとこんな感じです。「!」マークが出て、「お使いのコンピューターは~」の警告がホーム画面ではずっと出ている状態です。

この状態でBEAT SABERをプレイしてみます。ちゃんとQuest版よりもリッチな映像も出て、特にフレームレートのドロップも感じません。なお、アプリ起動中は「お使いのコンピューターは~」の警告は表示されません。

ちなみに、BEAT SABERプレイ時のタスクマネージャーは下記の通り。GPUはまだまだ余裕があります。

Climbをプレイした場合、メモリー使用量が増えています。

Oculusアプリ内の、バーチャルデスクトップを立ち上げると、一気にGPUに負荷がかかりますが、それでも80%程度です。余力を少し残しています。なお、下のスクリーンショットのうち、一瞬負荷が下がっているのでは、Oculus Questの画面が切れたためです。

推奨GPUのGTX1060-6GBの80%程度の性能のGTX 1650を使っても、BEAT SABERのような軽いアプリならば何の問題もなく動作できるようです。

まとめ

今回、Oculusシリーズの推奨GPU以下の性能のRTX 1650で簡単なテストをしてみました。

結果、BEAT SABERのような簡素なアプリならば、Oculus Quest版よりもリッチなグラフィックで楽しむことが出来ました。

Oculus Questに移植されていないような、少し古めのPC用タイトルをプレイしてみたいと言った場合は、この程度のGPUでも十分なのかもしれません。

とは言え、個人的には少し余裕をもって、GTX 1660以上のGPUが載ったPCをお勧めします。

(番外)Lenovo Legion T550i

現行CPUである第10世代Coreシリーズ搭載。下限カツカツながらもVRも楽しめるGTX 1650 SUPER搭載PCが9万円弱で購入できます。

項目内容
CPUCore i5-10400 , Core i7-10700,
Memory8GB , 16GB
GPUGTX 1650 SUPER, GTX 1660 SUPER, RTX2060, RTX 2070 SUPER