Oculus Linkが大幅アップデート! FacebookはRift Sの息の根を止めに来た!?

2020年11月20日

Oculus Quest 2やOculus Questの機能の一つ、Oculus Linkが大幅にアップデートしました。世の中的には90Hzへの正式対応がもてはやされていますが、本当の狙いは何でしょうか。

実際に動かしてみて、考えてみます。

Oculus Link のアップデート内容

Oculus Quest 2のリフレッシュレートと、解像度が選べるようになりました。

選択できるリフレッシュレート

以前までは、72Hz固定でしたが、今回のアップデートで80Hzと90Hzがサポートされました。

  1. 72Hz
  2. 80Hz
  3. 90Hz

リフレッシュレートが高いほど、画面の書き換えが早くなり、頭の動きと映像のズレが小さくなります。結果としてVR酔いを起こしにくくなるため、リフレッシュレートが上がることは非常に有意です。

選択できるレンダリング解像度

レンダリング解像度は、従来は「パフォーマンスを優先」「バランス」「品質を優先」の3種類でしたが、今回から15段階に変貌を遂げました。

なお、レンダリング解像度を変更すると、アプリの再起動が必要になる点は、依然と同様です。

レンダリングの解像度を変更する効果については、下記の記事にてまとめています。ご参考までに。

従来の解像度

表示Oculusアプリ表示相当(両目分)SteamVR表示解像度(片目分)
パフォーマンスを優先3552 x 18081776 x 1808
バランス4128 x 20802064 x 2080
品質を優先4704 x 23682352 x 2368

新しい解像度

従来の解像度と新しい解像度は、完全には一致しません。

表示倍率Oculusアプリ表示解像度(両目分)SteamVR表示解像度(片目分)
0.7x2784 x 14081392 x 1408
0.7x2944 x 15041472 x 1504
0.8x3104 x 15841552 x 1584
0.8x3248 x 16481624 x 1648
0.8x3440 x 17441720 x 1744
0.9x(パフォーマンスを優先)3616 x 18401808 x 1840
0.9x3696 x 18721848 x 1872
0.9x3920 x 19841960 x 1984
1.0x(バランス)4128 x 20962064 x 2096
1.0x4208 x 21282104 x 2128
1.1x4464 x 22562232 x 2256
1.1x(品質を優先)4704 x 23842352 x 2384
1.2x4848 x 24482424 x 2448
1.2x5136 x 26082568 x 2608
1.2x5408 x 27362704 x 2736

目安として、近しい解像度の項目に青文字を入れました。上にも下にも、大きく変化させることが出来るようになりました。

新しい解像度の基準(1.0x)は、従来の「バランス」設定と近いことが分かります。

SteamVRの解像度と比較確認

Oculusアプリ上では、両目分の解像度が表示され、SteamVRの設定画面では片目分の解像度が表視されます。

片目分、両目分の差はあれど、両者共に同じ解像度を示しています。

1.0x:標準値

Oculusアプリ

4128 x 2096 px

SteamVR

2064 x 2096 px

0.7x:最小値

Oculusアプリ

2784 x 1408 px

SteamVR

1392 x 1424 px

1.2x:最大値

Oculusアプリ

5408 x 2736 px

SteamVR

2704 x 2736 px

解像度の下限を広げた意味

今回のOculu Linkの正式リリースでは、90Hzに対応した点がクローズアップされているが、本当に見るべき点は、解像度の下限が広がった点でしょう。

これは、明らかに来年度(2021年)にOculus Rift Sの販売終了に向けた布石です。

Oculus Rift Sは、Oculus Quest 2よりもレンダリング解像度が低く、且つDisplayPortでつながっているためPCへの負荷は低くなっていました。

今回、Oculus Linkで低い解像度のレンダリングをサポートすることによって、PCの要求スペックを下げ、比較的スペックの低いPCでもOculu Linkでストレスなく使えるようにした、ということです。

これによって、「Oculus Quest 2を買ったら、Oculus Rift Sが要らないよね!」と言えるようになったわけです。

確認を取ってみた

最低解像度での動作確認

個人的に所有しているDELL G5 5500にて、Oculus Quest 2の最低解像度で各アプリのフレームレートを調べてみました。

DELL G5 5500のVR性能については、下記の記事にてまとめています。ご参考までに。

縦軸がフレームレート、横軸が画素数(縦の解像度 × 横の解像度)です。

Oculus Rift S
パフォーマンスを優先
Oculus Rift S
品質を優先
Oculus Quest 2
最低解像度
画素数4.9Mpx5.9Mpx4.0Mpx
BEAT SABER250fps252fps341fps
Half Life:ALYX 低画質117fps107fps158fps
Half Life:ALYX 最高画質95fps87fps96fps
SteamVR Home114fps107fps136fps
Asgard’s Wrath 簡単94fps78fps99fps
Asgard’s Wrath 高64fps56fps70fps

【セルの色】水色:90Hz以上、黄色:72Hz~90Hzまで、赤:72Hz以下

こうしてみると、今回追加された解像度の下限値は、Oculus Rift Sよりも小さいことが分かります。また、同じアプリであれば、Oculus Quest 2のフレームレートが、Oculus Rift Sのフレームレートを上回っていることが分かります。

描く絵が小さくなれば、当然早く書けるようになるので、フレームレートは上がります。

今回のOculus Linkの正式リリースと共に、Oculus Quest 2のPCでのVR体験は、Oculus Rift Sを速度では上回っています。

近しい解像度での動作確認

次に、Oculus Rift Sの解像度と近しいレンダリング解像度でのテストを行いました。

Oculus Rift Sの設定Oculus Rift Sの
レンダリング解像度
選択したOculus Quest 2の
レンダリング解像度
パフォーマンスを優先4.9Mpx
1504 x 1616px(片目)
4.9Mpx
1552 x 1584px(片目)
品質を優先5.9Mpx
1648 x 1776px(片目)
6.0Mpx
1720 x 1744px(片目)

「パフォーマンスを優先」設定相当では、各アプリのフレームレートは下記のようになりました。

Oculus Rift Sの「パフォーマンスを優先」設定相当

Oculus Quest 2の方が、およそ1割程度フレームレートが遅くなっています。

また、「品質を優先」設定相当でも、同様の結果となりました。

Oculus Rift Sの「品質を優先」設定相当

結論としては、同一のレンダリング解像度ならば、Oculus Quest 2よりもOculus Rift Sの方が1割ほど処理が早い、となります。

Oculus Rift Sは映像のレンダリング後には、そのままRift Sのモニターに映像を映せばいいのに対して、Oculus Quest 2は、映像のレンダリング後にUSBケーブルで伝送するために画像の圧縮する作業が入ります。その分だけ、Oculus Quest 2はOculus Rift Sよりも、処理に時間がかかっているのでしょう。

まとめ

Oculus Linkが正式リリースとなりました。

結果、Oculus Quest 2が90Hzに対応したほか、レンダリング解像度の最大値、最小値の幅が拡大されました。

同一の解像度ならば処理が少ない分Oculus Rift Sの方がフレームレートは稼げます。が、今回のアップデートでOculus Quest 2の解像度の設定が増えました。

Oculus Quest 2では、フレームレートの観点から見ると、解像度を下げてあげることによって、Oculus Rift Sを接続した時以上のVR体験が実現できています。

Oculus Rift Sを新規に購入する費用があるのならば、PCのGPUをワンランク上げた方が良いでしょう。Oculus Rift Sを購入する意義が無くなっています。

Facebookは、Oculus Rift Sの息の根を止めに来ているということでしょう。

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