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家庭用 光造形(SLA)方式 3D プリンターを買って分かったこと

2019年10月11日

180度3Dカメラ用の治具を数点DMM.makeの3Dプリントサービスで作ってみたのですが、結構お金がかかりました。これならば自分で1台買った方が安いんじゃないかと思い、光造形式3Dプリンターを購入し、おっかなびっくり使い始めていたのですが、大分慣れてきたので使用感をまとめていきます。

家庭向け3Dプリンターの種類

ここでは家庭用の3Dプリンターのみに焦点を絞って記載いたします。

家庭用3Dプリンターとして現在売られている物は、大きく分けて2種類あります。

  1. 熱溶解積層方式(Fused Deposition Modeling : FDM)
  2. 光造形方式(Stereo Lithography Apparatus : SLA)

熱溶解積層方式(FDM方式)

一般的に家庭用3Dプリンターとしてイメージされているのは、こちらではないでしょうか。熱で溶ける樹脂の糸(フィラメント)をセットして、溶かしながら形に添って積み上げていきます。

一か所一か所、溶かしては積み、溶かしては積みを繰り返すので処理時間がかかります。一方、熱で溶ける樹脂ならば使えるため、材料の選択肢が多いのも特徴です。使用用途毎に特性から材料を選べるのは良いですね。

積層跡が残る等、出来上がりに特徴があります。

光造形方式(SLA方式)

最も最初に作られた3Dプリンターはこちらの形式でした。

どろどろの光硬化樹脂をタンクに入れて、固めたい部分に光を当てて積層していく方式です。

一般的には紫外線硬化樹脂(UVレンジ)が使われています。照射する光はもともとは紫外線レーザーが主流だったようですが、最近の安価なモデルは紫外線液晶モニターを使用している物が多いようです。

紫外線で固まるタイプの材料しか使うことが出来ませんが、液晶モニター系では面で印刷されていくため1度に作るのならば、1つ作るのも2つ作るのも、印刷時間が変わらないと言った特徴があります。

なお、光造形方式は光源毎に下記の3つに分けられることが多いようです。

・SLA(Stereo Lithography Apparatus) 方式:紫外線レーザーを走査させて描写する物
・DLP(Digital Light Processin)方式:紫外線プロジェクターで、面で描写する物
・LCD(Liquid Crystal Display)方式:紫外線液晶モニターで、面で描写する物

一方、どの方式も光源が異なるだけで、「紫外線硬化樹脂に紫外線を当てている」という行為は同じため、まとめてSLA方式と呼ぶこともあるようです。

2つの方式の比較

実際にSLA方式を使ってみて気になったFDM方式との違いを表にしてみます。

FDM方式SLA方式コメント
材料形状糸状のフィラメント
(熱可塑性樹脂)
UV硬化樹脂
(光硬化性樹脂)
SLAは薬品を
取り扱う
材料種類装置の加熱依存だが、
選べる樹脂の種類が豊富
アクリル
ポリウレタン
エポキシ樹脂等
SLAは材料が
限られる
可動方向X軸、Y軸、Z軸Z軸SLAの方が
壊れにくい
加熱機能押出ノズル
ステージの加熱
なしSLAの方が
壊れにくい
後処理なしIPAで洗浄
二次硬化
SLAは薬品を使う
仕上がり積層跡あり
積層方向に割れやすい
反ることがある
積層跡目立たない
割れやすさに方向なし
SLAの方が
綺麗に仕上がる
作業後の
メンテナンス
押出ノズルの洗浄装置の樹脂付着部分の洗浄
UV硬化樹脂の管理・交換
SLAは薬品の
処理が必要

※:IPA:イソプロピルアルコール

上記は、下記のサイトと私個人の経験からまとめました。

購入した3Dプリンター

ELEGOO MARS

SLA方式の3Dプリンターです。紫外線照射を液晶モニターで行う形式です。線を作るのではなくて、面で印刷するので、一気に物を作るのに適した方式です。

本体自身が安かったのと、Amazonの評価が高かったので購入を決めました。

購入したUVレジン

完全に手探りで決めました。今から考えると、最低でもSDS(安全データシート:Safety Data Sheet)が簡単に読めるものにしておいた方が良かったように思います。

同時購入した物

SLA方式の3Dプリンターは薬品を取り扱うためにいろいろと取り揃えないといけません。
基本的には、レジン工作をしているような方にとってはなじみのある物なのではないでしょうか。

洗浄用IPA

出来上がったモデルの洗浄の他に、装置や周辺に飛び散ったUVレジンを掃除するのに使います。

洗浄液として一般にも使われていますが、揮発しやすい可燃性の薬品なので、良く換気をして使う必要があります。こもった部屋で使用して静電気から発火、なんてこともあるので要注意です。

ストレーナー

レジンを再利用する時に、ごみを除去するためのフィルターです。余分に固まったレジンのクズなどを除去します。

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大塚刷毛(Otsuka Hake)
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キムワイプ

薬品を扱ったことがある人ならば、一度は目にしたことがあるはず。ご存じキムワイプです。水やアルコールに付けても紙クズが出ないため、薬品を使う時には重宝します。

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日本製紙クレシア(NIPPON PAPER CRECIA)
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使い捨て手袋

薬品向けの手袋です。UVレジンやIPAを扱うので、使い捨て手袋必須です。

UVライト

レジン硬化ようにUVライトを購入しました。太陽光で十分硬化出来るようですが、念のために購入。2分タイマーが付いているので意外に便利でした。

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UVライト/ネオコレクション
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防毒マスク

薬品を使うので念のために購入した物の、そこまで匂いも気にならなかったので、使っていません。
もっとも、換気扇はガンガン回しているので、偶然我が家の空気の流れが良いように働いただけかもしれません。

3M 防毒マスク 有機溶剤作業用マスクセット 1200/3301J-55
スリーエム(3M)

薬品が揮発したものを分解・吸着するという意味では、空気清浄機はあった方が良いのかもしれません。

ポリプロピレンの容器

取り敢えずでスーパーで購入しました。が、ちゃんと蓋が出来るものにした方が良かったと後悔しています。出来上がったモデルを洗浄する時に、ちゃんと蓋が出来るものならば、”ちょっと振ってみる”ということが出来るため楽だったのではないでしょうか。

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アスベル
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IPAは、ポリエチレンやポリプロピレンの容器で保存可能です。アクリル系は解けますのでご注意を。フタヤパッキンの材料にも注意が必要です。

金属製バット

薬品の入れ替え時や、出来上がった物を取り外す時に、バット上で作業をすると他に薬品が飛び散らないので安心できます。

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和平フレイズ(WAHEI FREIZ)
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純正アクセサリー

下記の純正アクセサリーは、現状では私は購入していません。もう少し慣れてから購入するかどうか決めていきたいと考えています。

 付属のレジンタンクの予備として、下記の商品は買っておいても良いように思います。色を変える時に、色が混ざりませんし、薬品の入れ替え作業が減り、零したり混ざったりするリスクが減るはずです。

 このプリンターは、レジンタンクのFEPフィルムが劣化すると使えなくなる代物ですので、FEPフィルムだけでも購入しておくべきでしょうか。

 この手の光造形式プリンターはディスプレイが命です。稀にレジンタンクの交換時などにぶつけて割ってしまうこともあるようです。交換品として売っている点は好感が持てます。

テスト作成

光造形式の3Dプリンターの造形手順は下記の通りです。

  1. モデリング:3D CADやモデラーと呼ばれるアプリで3D modelを作ります。
  2. スライス:スライサーと呼ばれるアプリを使って、3D modelを3Dプリンターで印刷できる形式に変換します。支えが必要な部分にサポートを入れたりするのもこの工程です。
  3. 3Dプリント
  4. 洗浄:IPAに付けて、余分なUVレジンを取り除きます。
  5. 2次硬化:太陽光やUVランプに当てて、UVレジンを完全に硬化させます。

今回は作業を抜粋して紹介します。

モデリング

360度3D動画を取るために、VRカメラInsta360 EVOを2台つなげるための台が欲しいと思っていましたので、それを作ってみます。

以前作ったInsta360 EVO用のケースから底の部分だけ抜粋して二つつなげました。

スライス

モデルが完成したら、専用のスライサーアプリを起動します。ELEGOO MARSは「CHITUBOX」というアプリを使います。

一方向に長すぎたため、下の図のようにしか置けませんでした。スライスしてみたところ、約8時間かかると出ました。この3Dプリンターの場合、縦の長さに比例して印刷時間がかかります。今回のモデルは典型的な無駄に時間のかかるモデルですね。

3Dプリント

作成したデータをUSBメモリーに入れて、ELEGOO MARSに読み込ませると印刷スタートです。

取り敢えず物は試しで、そのまま印刷してみました。下は印刷中の写真です。出来ていくさまが見れるのは面白い。

けたたましい「ピー、ピー」という音とともに、造形終了です。やはり8時間かかったようです。

出来上がったものは、プリンターのヘッドの部分からぶら下がっています。

洗浄・2次硬化後

付属のへらで剥がした状態がこちら。意外と綺麗に出来ています。

横から見た状態です。側面も積層跡はありません。が、歪んでいる場所が何か所か。これは、印刷中に覗き込んだ時に台を揺らしてしまった時の物だと考えています。

今回の形状は、サポートが横一列にしかなかったために、横揺れに弱い構造になっていたのでしょう。一つ勉強になりました。

まとめ

光造形方式の3Dプリンターを買ってみました。

特に設定をいじらなくても、造形物の上面以外はとてもきれいに造形できるようです。寸法もそこそこ出ていますし、側面・底面の平坦性は素晴らしいです。

ELEGOO MARSの良いところ

・造形自身は非常に綺麗に出来ます。
・動作音もそこまで大きくありません。動作初期・終了時などになる「ピー」という音の方がよっぽどうるさいです。
・動作中は、蓋をするので薬剤の匂いはほとんどしません。
・PCへの接続が必要ない、USBメモリーから読み込む方式のため、PCで重たい処理をしていても動作不良になることがありません。

光造形方式3Dプリンター全般に言える悪いところ

・意外と時間がかかります。小さい物でも数時間かかるイメージです。
・薬品を取り扱います。これが最大の欠点です。工業用の薬品を取り扱ったことが無い人には、ちょっとハードルが高い気がします。

光造形方式3Dプリンターの購入前の注意事項

・薬品(UVレジン・IPA)を使用します。必ず換気が出来る場所を確保した上で購入しましょう。
・出来上がったものをIPAで洗ったり、乾燥させたりする場所も必要になります。換気の出来ている作業台が欲しいところです。
・プリンターを置く場所は出来るだけ揺れない場所を確保しましょう
・有機溶剤を吸い込む可能性があります。シックハウスのようなアレルギーの原因になる可能性もありますので、特にお子様のいらっしゃる家庭では扱いに注意した方が良いでしょう。

出来るならば「有機溶剤作業主任者」の資格くらい取っておいても良いのかもしれません。

2日間で\13,000程度で安全な作業を教えてもらえます。

それにしても、自分で適当に作ったものがその場で簡単に作れるのは画期的ですね。いろいろ遊べそうです。

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