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家庭用 光造形(SLA)方式 3D プリンターを買って分かったこと

2019年12月5日

180度3Dカメラ用の治具を数点DMM.makeの3Dプリントサービスで作ってみたのですが、結構お金がかかりました。これならば自分で1台買った方が安いんじゃないかと思い、光造形式3Dプリンターを購入しました。大分慣れてきたので使用感をまとめていきます。

家庭向け3Dプリンターの種類

ここでは家庭用の3Dプリンターのみに焦点を絞って記載いたします。

家庭用3Dプリンターとして現在売られている物は、大きく分けて2種類あります。

  1. 熱溶解積層方式(Fused Deposition Modeling : FDM)
  2. 光造形方式(Stereo Lithography Apparatus : SLA)

熱溶解積層方式(FDM方式)

一般的に家庭用3Dプリンターとしてイメージされているのは、こちらではないでしょうか。熱で溶ける樹脂の糸(フィラメント)をセットして、溶かしながら形に添って積み上げていきます。

一か所一か所、溶かしては積み、溶かしては積みを繰り返すので処理時間がかかります。一方、熱で溶ける樹脂ならば使えるため、材料の選択肢が多いのも特徴です。使用用途毎に特性から材料を選べるのは良いですね。

積層跡が残る等、出来上がりに特徴があります。

光造形方式(SLA方式)

最も最初に作られた3Dプリンターはこちらの形式でした。

どろどろの光硬化樹脂をタンクに入れて、固めたい部分に光を当てて積層していく方式です。

一般的には紫外線硬化樹脂(UVレンジ)が使われています。照射する光はもともとは紫外線レーザーが主流だったようですが、最近の安価なモデルは紫外線液晶モニターを使用している物が多いようです。

紫外線で固まるタイプの材料しか使うことが出来ませんが、液晶モニター系では面で印刷されていくため1度に作るのならば、1つ作るのも2つ作るのも、印刷時間が変わらないと言った特徴があります。

なお、光造形方式は光源毎に下記の3つに分けられることが多いようです。

・SLA(Stereo Lithography Apparatus) 方式:紫外線レーザーを走査させて描写する物
・DLP(Digital Light Processin)方式:紫外線プロジェクターで、面で描写する物
・LCD(Liquid Crystal Display)方式:紫外線液晶モニターで、面で描写する物

一方、どの方式も光源が異なるだけで、「紫外線硬化樹脂に紫外線を当てている」という行為は同じため、まとめてSLA方式と呼ぶこともあるようです。

2つの方式の比較

実際にSLA方式を使ってみて気になったFDM方式との違いを表にしてみます。

FDM方式SLA方式コメント
材料形状糸状のフィラメント
(熱可塑性樹脂)
UV硬化樹脂
(光硬化性樹脂)
SLAは薬品を
取り扱う
材料種類装置の加熱依存だが、
選べる樹脂の種類が豊富
アクリル
ポリウレタン
エポキシ樹脂等
SLAは材料が
限られる
可動方向X軸、Y軸、Z軸Z軸SLAの方が
壊れにくい
加熱機能押出ノズル
ステージの加熱
なしSLAの方が
壊れにくい
後処理なしIPAで洗浄
二次硬化
SLAは薬品を使う
仕上がり積層跡あり
積層方向に割れやすい
反ることがある
積層跡目立たない
割れやすさに方向なし
SLAの方が
綺麗に仕上がる
作業後の
メンテナンス
押出ノズルの洗浄装置の樹脂付着部分の洗浄
UV硬化樹脂の管理・交換
SLAは薬品の
処理が必要

※:IPA:イソプロピルアルコール

上記は、下記のサイトと私個人の経験からまとめました。

購入した3Dプリンター「ELEGOO MARS」

SLA方式の3Dプリンターです。紫外線照射を液晶モニターで行う形式です。線を作るのではなくて、面で印刷するので、一気に物を作るのに適した方式です。

本体自身が安かったのと、Amazonの評価が高かったので購入を決めました。

購入して分かったこと

思ったよりもちゃんとした形状のものが作れる

私自身が、細かい造形まで必要としていない、というのもありますが、思ったよりもきっちりとした形状の物が出力されます。

例えば、下記の記事に書いたクリップ(?)みたいに、ちゃんと出力されるとちょっと感動します。

樹脂代は意外に安くできる?

自分でモデリングする人は、できる限り空白を作ることによって、意外に樹脂自身は節約できそうです。ちょっとした小物でしたら、100円や200円でプリント出来たりします。

ELEGOO MARSについているスライサーアプリ「ChiTuBox」は、UV樹脂の価格を入力しておけば、どれだけの樹脂を使うか換算してくれます。

例えば、下記の記事で書いたフードは143円で出来ています。個人的には思ったよりも安いと感じました。

DMM.makeなんかで頼むのよりは、格段に安いですね。

とはいえ、コストを意識しすぎると、「百均すごい!」で何もできなくなってしまいそうですが。

UV樹脂によって、条件が変わる!

同じメーカーのUV樹脂を使っても、色が変わるとプリンターの設定条件が変わるようです。

私自身まだ最適値は理解していませんが、樹脂交換毎に条件が変わるというのは、正直面倒です。細かい造形まできっちり作ろうと思うと、室温の管理なども必要になってくるのでしょうが、そこまではちょっと手が出ません。

逆に言うと、ちょっと多めに露光する(オーバー露光)ことによって、細かな造形はつぶれてしまうけれど、物は作れる、状態にすることはできます。手抜きですね。私は面倒くさがりなので、オーバー露光気味にプリントしています。

設置する場所を選ぶ

光造形式のプリンターは置く場所を選びます。

換気扇が近くに必要

UV樹脂や、IPAといった薬品を使う必要があります。両者ともに、匂いもしますし、多量に吸い込むと体にもよくないので、必ず換気扇が必要です。

剛性の高い台に置く必要がある

印刷中に本体が揺れると、レジンタンク内のUVレジンが揺れて、造形中の物も揺れます。

結果、出来上がったものが歪みます。数時間かけて出来上がったものが曲がっていると、結構ショックです。

この面でもしっかりとした台の上に置いた方がいいでしょう。

薬品の取り扱いが必要なので、薬品に耐性のある台の方がベター

UV樹脂はともかく、IPAはプラスチックを溶かします。薬品耐性のある台にした方がいいでしょう。

また、必ず薬品はこぼすもの、と考えて台を選んだ方がいいでしょう。

私の場合は、大きく浅い金属バットを置いて、薬品耐性を確保しています。

直射日光が当たる場所はやめておいた方がいい

UV樹脂は日光で固まります。3Dプリンターの掃除をしている側からUV樹脂が固まらないよう、直射日光が当たるような場所には置かない方が無難でしょう。

本体以外の備品をいっぱい買わないといけない

薬品を取り扱う、この一点で手袋やら容器やら、プリンター以外の備品がいっぱい必要になります。

下記に備品をまとめていますので、ご参考までに。

メンテナンスは?

使う度のメンテナンスとしては、周辺に飛んだUV樹脂やIPAのふき取りのみです。

もちろん使用頻度によりますが、週一回以上の使用でしたら、直射日光の当たらない場所においてあれば、ビルドプラットフォームについた樹脂すら拭く必要はなさそうです。そもそも光造形方式のプリンターの蓋自身がUV光を通さないようになっているはずなので、プリンター内部のふき取りは、そこまで神経質になる必要はありません。

個人的には、薬品を使う割には楽だと思っていますが、FDM方式よりは手間暇がかかるのではないでしょうか。

次に、たまに必要になってくるのが、レジンタンクの底のFEPフィルムの交換です。プリントするごとに、少しずつFEPフィルムに傷がついていくので、交換が必要になってきます。

下記に交換した時の様子を記事にまとめています。ご参考までに。

一先ず経験しているのはこの程度ですが、個人的には、覚悟していた手間よりは楽な印象です。

まとめ

光造形方式の3Dプリンターを買ってしばらく経ちました。

光造形方式3Dプリンター全般に言える良いところ

・意外と細かな造形まで作れる
・動作中の音はそこまで大きくない
・硬化してしまえば、そこそこ強度が出る

光造形方式3Dプリンター全般に言える悪いところ

・意外と時間がかかる。小さい物でも数時間かかるイメージです。
・薬品を取り扱う。これが最大の欠点です。工業用の薬品を取り扱ったことが無い人には、ちょっとハードルが高い気がします。
・UV樹脂の種類によって露光条件が変わる。

光造形方式3Dプリンターの購入前の注意事項

・薬品(UVレジン・IPA)を使用します。必ず換気が出来る場所を確保した上で購入しましょう。
・出来上がったものをIPAで洗ったり、乾燥させたりする場所も必要になります。換気の出来ている作業台が欲しいところです。
・プリンターを置く場所は出来るだけ揺れない場所を確保しましょう
・有機溶剤を吸い込む可能性があります。シックハウスのようなアレルギーの原因になる可能性もありますので、特にお子様のいらっしゃる家庭では扱いに注意した方が良いでしょう。

出来るならば「有機溶剤作業主任者」の資格くらい取っておいても良いのかもしれません。

2日間で\13,000程度で安全な作業を教えてもらえます。

それにしても、自分で適当に作ったものがその場で簡単に作れるのは画期的ですね。

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